第41話 もう一度ダンジョンへ

「なあ、どうして俺たちはダンジョンなんかを降ってんだ? これじゃいつもと一緒じゃねえか」

「目的はダンジョン最下層なのではないか?」


 ぼやく元金髪ことテッドと、仲間二人を率いたレッドフォードの問い。

 冒険者選抜はユーリ、テッド、レッドフォードとその仲間のアレックス、ルイン。

 そこにソロの上級冒険者二人とルカを交えた、計八人となった。


「まあ、少し確認をね」


 先導する二人に応えたのは、軽鎧に着替えたジュリオ・ジュリードだ。


「でも先導者がいてくれて良かったよ。僕たち三人でこの広いダンジョンを迷わずに進むってのは厳しそうだ」

「どうしてテストの時にダンジョンに行くって言わなかったんだ?」

「それはもちろん、知られてはいけないからだよ」

「知られてはいけない……か。もしや、帝国と関係があったりするのか?」

「ジュリオ、それ以上はまだ」

「いいじゃないか少しくらい」

「あたしも話したいなー」

「ジュリオ、ナディア」

「……レイもこう言ってるし、この辺にしておこうか」

「そ、そうだね、とにかく下層目指してがんばろうっ」


 垣間見える三人の力関係。

 ここでナディアは、冒険者ですらない青年に話を振ることにした。


「ところでルカくんは、今日も全身鎧を持って来てるのかな?」

「もちろん」

「それなんだけどさ、さすがに防御に関しては支援系の魔法やアイテムを使った方が確実じゃないのかな?」


 ルカは戦闘系のスキルを駆使して戦うのだと勘違いしているナディアは、首を傾げる。


「その辺は、直接見た方が早いのではないか?」

「そういうわけなので……よろしくお願いしますルカ先生!」


 すっかり下手に出慣れてきたテッドが、レッドフォードたちと共に動き出す。


「――――骸骨竜」


 現れた骨だけドラゴンの名を、レイが口にした瞬間。


「了解」


 鎧をまとい、ルカは真正面から魔物に突っ込んで行く。

 骸骨竜の頭上に、閃く白光。


「待て! 鎧なんかで防げるものじゃないっ!」


 迫る絶対零度の嵐に、ルカはなす術なく飲み込まれた。

 騎士三人が悲鳴を上げる。


「喰らえ――ッ!!」


 一方ルカをオトリに骸骨竜への接近を果たした二人の冒険者。

 テッドの衝撃の魔剣が、腕を消し飛ばす。


「もらったよ!」


 続くアレックスがダブルアタックでもう片方の腕を飛ばし、骸骨竜は両手をもがれた。


「一点突破!」


 トドメとばかりに突っ込んで来たレッドフォードの巻き起こす爆発が、脚部を消し飛ばす。

 半壊し、なす術もなく倒れ込んでいく骸骨竜。

 しかし。その胸部と頭部はまだ生きていた。


「ちょ、おおおおっ!!」


 身体のほとんどを失いながらもなお、その顎はテッドに喰らいつきに行く。


「駆けろ、十字星!」


 しかしユーリの持つ魔剣『導きの十字星』が、その頭部を串刺しにした。そして。


「――――ブレイズ」


 豪炎と共に、残った骸骨竜の上半身を粉砕する。

 パラパラと舞い落ちてくる火の粉の中、ユーリは小さく息を吐いた。

 超高速の刺突からさらに、剣に魔法を乗せる。

 これがユーリの得意技だ。


「早くルカを助けないと――!」


 慌てて駆け寄るジュリオ。


「大丈夫、ケガはない」


 ルカはそう言ってあえて、鎧をインベントリに収納してみせた。


「無傷……だっていうのか?」


「なんということはない。彼の鎧にはそれだけの防御力があるという事だ」


 ヒュドラが放った八倍の蒼炎からの生還。

 間近で目撃したレッドフォードはもう、驚くこともない。


「うわー、すっごい」

「まったくね……」


 敵の攻撃を一人に集中させて、その隙に魔剣士が一斉に襲い掛かる。

 そんな、異常な防御力を誇るルカだから可能となるとんでもない戦法に、騎士たちはあっけに取られるばかりだった。

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