龍の卵~ドラゴンエッグ~

星乃秋穂(ほしのあきほ)

第1話 龍の卵~ドラゴンエッグ~

  龍の卵   ~ドラゴン エッグ~


少女は電車の座席に座り、うとうとしていた。眠い正直な答えだ。

何度も揺れては止まる電車に左右されながら交互に隣にいる。大人の男性に寄り掛かろうとする。そのたび睡魔から覚めようとしていた。電車のクーラーは随分涼しいのだが、太陽から浴びさせられる熱はその涼しさより勝っている。

けだるい・・・。のどが渇く・・。

7月の中旬。都会の電車は人も多く暑さを増す。少女が起きたのは自宅の近くの東武練馬。車内放送で目がいきなりパッと開いた。あれは何故だろうか。自分に関係ない電車の放送は聞き流すのに目的地の部分だけはしっかり記憶している。あれは電車に毎日乗っている人間だけが分かる感覚なのだろうか。

「イオンでポカリでも買うか。あ、そういえば今日お父さんが帰ってくる日だった」

少女は肩からずれ落ちているスポーツバックをもう一度掛け直し、駅からイオンに向かう。イオンに向かうと父親が主張先から一週間ほど経つので、何か家族で食べられる物を買おうと思った。父親はいつも工芸品やアンティークものは買ってくるのに食べ物は一切買ってこない。答えは簡単、東京では食べ物を買うなら物産展や専門店に行けばいいと言うのだ。コージコーナーを見ていると、突然、後ろから声をかけられた。

「はるか、学校からの帰りかい?」

聞き覚えのある優しい声で振り返った。出張帰りのスーツ姿の父親がいた。

「お父さん。おかえりなさい。」

「僕、シュークリーム買ったからみんなで食べようよ」

帰り際、学校ではどういうことがあったのか。日常のたわいない話をしながら家に向かった。家にたどり着くと母親が待ち望んでいたのか早く家に入ってと言った。

谷村はるか、中学三年生。現在高校受験を控えている。父親、谷村浩史、外資系の会社で務めている。母、谷村由紀子。趣味で書道の先生をしている。家族構成は三人暮らしだ。

エアコンを冷房にしながら、素麺をすすっていると、父親が気難しい顔で今後の暮らしを

語り出した。

「由紀子。はるか、まだ会社から言われていないが来年からイギリスへ転勤になるかもしれない。今、僕が先頭にたって部下を引っ張っていかないといけない時期なんだ」

「そんな、急に言われても困るよ。私、高校受験なんだよ。今そんなこと言われてもお父さんについていけないよ」

「気持ちはわかる。でも今外国に行っておけば語学だって身につけられるんだら」

「はるかの高校はこっちでもいいじゃない。お父さん無理なこといわないでよ」

「・・そうだな。気に止めて欲しいだけだからな」

父親はしぶしぶした顔になったが気をきかせて次の話題に入った。

「そうだ、今回いいお土産を買ってきたんだ」

そういって旅行鞄を持ってきた。父親は嬉しそうに鞄を開け小さな箱を取り出した。

「高かったんだよ。このアンティーク。そーと出してと」

箱から取り出したのは、卵形の置物だった。綺麗な卵を支える土台が金で卵も彩られている。父親は電気を消す準備をする。

「いいか、今電気を消すと面白い事が起きるからな」

そして、電気を消した。

 すると、卵が青く光り始めた。中に小さな龍がグルグルまわるのだ。まるで生きているように動く。神秘的でいつまででも見ていたい気分になる。

「凄い。どんな仕掛けがあるのオルゴールのようにネジもないのに」

「な、不思議だろ。まるで今すぐでもふ化しそうなんだよ。なんでも昔、湖の水を全部自分のものにしようとした龍を封印した。卵らしいだってさ。」

「私、これ自分の部屋に飾っていい?暗くしたら青く光るなんてプラネタリューム

みたい。」

「うーん。どうしようかな。お父さんが飾っておきたかったんだけどな」

「ちょうだい。いままでのお土産の中で一番素敵だよ」

はるかにそういわれるとつい甘くなってしまう。

「いいよ。あげるから大切にするんだぞ」

「わーい」

はるかは嬉しくて自分の部屋の机においた。今夜は寝るのが楽しみと思った。食事の後片付けをし、塾から出された問題集を終わらせ、受験勉強のため十二時に消灯した。真っ暗の中で卵の龍が煌びやかに動いていた。ドックン、ドックン・・・。

その光を窓の外から望遠鏡で眺めている少年がいた。

「やっかいな品物、よくオークションに出したものだな。管理していた奴、相当馬鹿だ、今回、犠牲者何人出るか分からないぞ」

「仰せのとおり。早くあの卵が孵化する前に手に入れなければならないですね」

少年は一人でビルの屋上にいる。まるで独り言を喋っているように見えるが実は違っていた。

「おい、俺が一人でいる時は喋んな。」

「そう言われましても、つい言葉に出てしまいます」

「お前あの光も見えないくせに分かってんのか」

「そういうなら、腰につけている剣を抜いてください。カイ様」

「お前も厄介な剣だな。俺が助けてなければ折られていたかもしれないからな」

そういうと少年は剣を抜いた。すると二十代後半くらいの執事の青年が現れた。背も高く整った顔。女なら一目ぼれするほどカッコいい。

「お前、夏にその姿はキツイなあ。今度、学会にお金を振り込んでもらうから夏服、買いに行くぞ」

その少年は高杉カイ。中学三年生、アンティーク専門の悪霊払い。そして、剣はもともと悪霊が取りついていたものだった。カイの力で堪忍され今では下部である。名前はややこしい名前だったので、今はツルギと呼んでいる。

「ツルギ手配は整っているか。ちゃんと明日から学校行くからな」

「わかっています。ちゃんと心得ているのでご安心を」

「うむ。」

カイは剣を元のさやに戻し、借りているマンションに戻った。

翌日、はるかはいつもどおり学校に向かった。自分の机に座ると前の席の小野沙織から

転校生が来ると聞かされた。なんでこんな時期に転校生が来るんだろうと思った。その

噂で両親が離婚したんじゃないかとか、病にかかり病院で学校に来れなかったんじゃないかと言われた。

 カイはそんなことは全然頭に浮かばなかった。どうしたら相手に警戒されないように龍の卵を取り戻せるかを考えていた。

 女の子に何って言って仲良くなれるんだろう。男ならゲームとか漫画とか野球とか何かしら話せられるのになあ。困ったぞ・・。

「高杉君。そんなに眉間にしわを寄せなくても平気ですよ。うちのクラスは穏やかだからね。」

「はあ・・・・。」

担任の先生に励ましの言葉を言われたが、当人は上の空だった。教室に入ると急にざわめきがあった。みんなの視線はカイにくぎ付けだった。

「はい、みんなおはようございます。今日からこの教室で勉強する転校生を紹介します」

先生は黒板に高杉カイと書き込んだ。

「じゃ、高杉君、自己紹介よろしくね」

「えーと。高杉カイです。」

何を言えばいいのかわからず棒立ちだった。先生は後ろの席に座るようにしじをしてくれた。おかげで、はるかの隣になれた。

「よろしくね。私、谷村はるか。教科書一緒にみせてあげる。」

「やさしいんだな」

「え?なんで普通だよ。ところでカイ君の目少し青いんだね」

「ああ、祖母が外人でクオーターなんだ。あんまり嬉しくないしちょっと茶髪だからよく不良に間違われる」

「そう?でもカッコいいけどな」

好印象だったのでカイは少し笑った。これなら早く仲良くなれるかもしれない。でもどのように龍の卵の事を言えばいいのか困った。ツルギが心配しなくても友人になれる秘策があると言っていたがいったい何だろう?それはお弁当の時間に分かった。

「さーて。今日のお弁当は何かな。ツルギの作る料理はいつもおいしいからな」

開けた瞬間。自分でも驚いた。

「え、妖怪ウオッチ」

そこに作られたものは最近はやりのアニメ妖怪ウオッチのジバニャンやウィスパーだった。自分はインターネットでみていたがまさかツルギが知っているとは思いもよらなかった。周りの生徒が驚いた声で集まってきた。

「すごいキャラ弁上手。カイ君のお母さん料理上手なんだね」

「いやこれは・・・・」

ツルギの事を部下、いや違う、執事・・。兄貴・・。

「そう、うちのお母さんキャラ弁上手なんだ。いつも驚かすこと多いんだ。」

「携帯で写メとっていい?」

「ああ・・いいよ」

いつの間にかみんなの輪に入れるようになっていた。机の下で思わす。ガッツポーズをした。やるじゃねえかツルギ。お前を見直したぜ。

結局、カイは何事無く自宅に帰った。ニコニコしながらツルギは迎えてくれた。

「どうでしたか?。私が作ったお弁当、美味しかったですか」

「ちょっと、頭を下げろ」

「はい」

ツルギが頭を下げるとカイは強く頭を撫でた。まるで投げたボールを拾ってきた犬のように、ツルギはきょとんとした。

「弁当のおかげでクラスに馴染めた。褒めてやる」

「ありがとうございます」

「そういえば。明日土曜日だからお前の服買ってやる。ATMでお金おろしてきたから安心しろ。ついでにファッション雑誌買ってきてやったぞ」

テーブルに雑誌を置くとカイは自分の部屋に行き学生服から普段着に着替えた。

居間に戻るとツルギに早速どうしてキャラ弁を作ったのか聞いてみた。

「ああ・・。それはカイ様がインターネットを見ながら楽しそうに踊っていたからです。」

「え、俺踊ってた?」

「とても楽しそうに」

誰も見ていないと思って踊っていたのがばれたのでカイの顔がみるみる赤くなった。

うかつに踊れないじゃないか。こんちくしょう。

「妖怪ウオッチ私も好きになりました。日本のアニメはいいです」

「今度も違うキャラ弁作ってくれ」

「はい。喜んでカイ様」

これで学校行く楽しみが増えてよかったと内心カイは思った。

一方その頃、はるかはいつもどおり高校受験のため遅くまで勉強をしていた。

勉強しながら心を癒すためラジオを流していた。テレビが見れなくとも耳から入ってくるDJの声はとても心地いい。ゲストの掛け合いがとてもよかった。いつもこの番組にハガキを出したいと思うのだがそんな勇気がなかった。勉強がひと段落しお風呂に入ってパジャマに着替え電気を消しベットに入る。しばらくするとお土産のアンティ―クが青い光をだす。うとうとしていたが深い眠りについた。はるかは不思議な夢を見る。

真っ暗な暗闇の中自分は膝を抱え何かを待っていた。しばらくすると青い光が遠くからやってくる。ああ・・これはあの卵の龍だと思った。

大きな龍がはるかの前で立ち止まる。はるかは立ち上がり龍を見上げる。

『そなたが卵の持ち主か』

「はい。そうです」

『そなたと契約がしたい。そなたの願いを叶えてやる代わり、そなたの身体で龍を孵化

させてもらいたいのだ』

「え、あの卵から龍が生まれるの?」

はるかは不思議な気持ちになった。あのアンティークはただの置物なのに龍が生まれてくるなんて信じられない。鶏の卵くらいな大きさしかないものなのに何故うまれてくるのだろう。面白そう好奇心がわく。

「いいわ。そうね、今お父さんが外国に行きたいことを止めて欲しいの家族三人で東京で暮らしたいわ」

『そんな簡単な願いならすぐに叶えてやる。そのかわり契約を結んでもらうからな』

目の前にいる龍はだんだん小さくなりはるかの胸に入り込んだ。そのまま身体に吸収されまた深い眠りにつく。次の日、はるかは土日は目覚まし時計をかけないようにしている。両親もゆっくり休みたいので朝の九時ごろ集まって朝食をとる。普段着に着替え台所に

向かうと母親がポテトサラダを作り終わりトーストを焼いていた。

「おはよう、はるか昨日はよく眠れた」

「うん。おはようお母さん」

母親の作るポテトサラダはマヨネーズが少なくあっさりしている。母親はこのサラダが大好きなのだ。だから必ず、土日のどちらかに作る。いつも朝食は和食だが。たまの休みならパンでもいいのだ。お父さんも普段着に着替えてもうすでに朝食を半分食べていた。紅茶をマグカップに入れお湯を注いでいた。はるかも飲むかと聞かれて頷いた。はるかは自分の席に座ると焼きたてのパンの上にチーズとハムを乗せ大きく頬張った。

「お父さん」

「ん?何だ」

「昨日不思議な夢を見たの。なんとね龍がでてきて願い事を叶えてくれる夢を見たんだ」

「ほーう。で、はるかはどんな夢を叶えてもらったんだ」

「お父さんが転勤しないで、ずーと東京で家族で暮らせるように頼んだんだ」

「そっかお父さんが出張すると寂しいのか」

「うん。お父さん仕事ばかりなんだもん」

「はるか、今日予定はあるのかい?」

「うーんとね。もうそろそろTシャツとCDが欲しいなーと思ってるんだ。この間、YUIの音楽が流れてていいなと思っているんだ」

「あれ?この前は西野カナの歌が欲しいといってなかった」

「西野カナは恋愛なの。でも今いい人いなくってみんな受験勉強で精一杯なんだよ。だから応援メッセージのあるyuiのagainがいい。ベストアルバムが聞きたいの」

 どうやら今日はイオンにいって洋服とCDが目的らしい。はるかに母親が一緒に診てあげようかと問いかけたら洋服ぐらい自分の好きなものを買いたいと言い張った。

どうやら今年頃の娘は難しいらしい。午前中の十時ごろ行こうと決めた。

はるかはイオンにつくと早速、洋服を見に行った。すると昨日来た転校生と親しげに話している外人がいるではないか。思わず手を振って相手の所まで挨拶に行った。

「おはよう。カイ君」

「え、ああ、おはよう。谷村さん」

カイは驚きと、戸惑っている表情を見せた。すると隣のツルギがニコニコしながら挨拶をした。

「おはようございます。中学校の友人ですか」

「えーと。机が隣なんです。私、谷村はるかといいます。日本語上手ですね」

カイはツルギを隠すようにして後ろ向きになり小声で『絶対。カイ様って言うな。俺の事もカイと呼べいいな』と念を押した。

「今日は洋服買いにきたんだ。谷村さんも何か買物」

「ええ、カイ君。お兄さんと洋服買いに来たんだね。」

「そうそうウチの兄貴センス悪くて、今日は俺が見立ててやろうと思って」

「ああ、だから夏なのになんか背広というか執事というか・・・。でもカッコいいよお兄さん」

「仕事がメイド喫茶の逆で執事喫茶の店員しているんだ。外に連れ出すのに恥ずかしいだろ。」

「じゃあ、私が手伝ってあげるよ。一緒に夏服探してあげるわ」

なんだかしらんが今回のターゲットの谷村はるかと一緒に洋服を選ぶことになってしまった。はるかは帽子から靴まで全部そろえてくれた。まさかこんなに買い物するとは思ってもみなかった。お礼にフードコートあるところでアイスを奢ってあげることにした。はるかの欲しがっていたCDも探してあげた。

「ありがとうございます。はるかさんのおかげでこんなに良いものが手に入りました。これからもカイの事宜しくお願いします」

「いいえ。でもお兄さん。スーツ姿もカッコいいけど。買った洋服もいいよ」

ツルギは買ったばかりの洋服と靴に着替えて嬉しそうな顔をしている。ただでさえ外人

なのにこれだけ整った姿の男性がいるとやたら目立ってしまう。それがカイには気に食わなかった。ぼんやり、はるかをみていたが腕に何か生き物が描かれていた。

「あれ、谷村さん。腕見せてくれない」

「何かついている」

はるかの目には何一つ映らないが、カイとツルギの目には腕に絡んだ小さい龍が動き回っているもう憑りつかれている。カイとツルギはお互い顔を見合わせた。

「いや、なんでもないよ。ごめん急に腕見せて言って」

「別に気にしてないよ」

「今日はどうもありがとう。よかったら電話番号教えてくれない。たまには連絡取りたいからさ」

「うん。いいよ」

そういうと、お互い連絡先を交換した。はるかと別れてしばらく二人とも立ち止まっていた。どうすれば龍を封印できるのか。もう人間に憑りついているとすれば。これからはるかに何かしら変化が出てくるだろう。

「どうするツルギ。俺、あんないい子を不幸にさせたくない。俺、ちょっと谷村さんにときめきをかんじているんだよ」

「ええ私も感じます。初対面であの優しい気配りほかではいません。胸がきゅんきゅんします」

「俺たち同士だな」

「ええ・・・」

男同士なにか通じるものがあるらしい。可愛い女の子を守ってあげたいというのは昔からあるものだ。ひとまず、二人はイオンから自宅に帰った。自宅に戻ると早速エアコンをつける二十五度に設定し、冷蔵庫から麦茶を取りだすと、コップに注ぐそれを一気に飲み干した。

「ぷはーやっぱ夏は麦茶だな。ツルギもどうだ」

「私も頂きますね」

そういうとコップに入れ美味しそうに飲んでいた。カイはうちわを手にしながらリモコンを取るとテレビの電源を入れた。NHKのニュースが流れてくる。

「で、どうする。もう谷村さんに憑りついてるんだよ。人間に憑りつくと成長して龍が甦るからどうなるのかな?」

「おじい様やお父様から何か聞いていないのですか?」

「ただ単純に龍の卵が甦る前に取り替えてきなさいとしか聞いてないんだ」

そういうとカイは自分の部屋に行ってしまった。どうせいつもどおりパソコンを開けインターネットをするのかと思ったら部屋を涼しくして寝てしまっていた。どうやら気疲れしてしまったらしい。ツルギは思い出したように今日の献立を考えよと料理本を読みだした。 平凡の土日が過ぎて行った。変化をしたのは月曜日からだった。

それは、はるかの願いがかなった日だった。月曜日いつもどおり学校から帰り夕食の準備を母親と手伝っていると父親が帰ってきた。

「お父さん。おかえり」

「ただいま。はるか」

いつもより元気がなかった。少し疲れている様子にも見える。                     

「今日、海外にいく計画がなくなったんだ。その代りインターネットの通販に移動になった」

「え!ホント」

「ネット通販の方がリスクが低いって言われたんだ。店舗もいらないし欲しいものさえ注文するからね」

お父さんは大きくため息をついた。海外で店を作るのが夢だったのに今は店に行かなくても商品を手にいられる世界なのだから仕方ない。はるかは夢に出てきた龍を思い出した。家族で東京で暮らしたいと願ったことが叶ったのだ。お父さんは残念がっていたが自分には良い方向に進んだ。お父さんはあまり喋らず夕食をとるとシャワーを浴びすぐに寝てしまった。

はるかはいい気分でシャワーを浴びる。さすがに食事の時は父親の顔を見ながら無言で食べていたが気分は最高だった。自分の部屋に戻るとベッドの上にジャンプした。

「やったー。願いが叶った。うれしいこれからもこの家で暮らせる」

そうだあの龍の卵にお礼を言わないといけない。

慌てて龍の卵を飾っている場所をみると卵が割れて粉々になっていた。どうして粉々になっているのだろう。願いが叶ったから割れてしまったのだろうか。考える前に急激な眠気に襲われた。もう立ってられないそのまま寝てしまった。深い眠りにつくと龍が現れた。

「ありがとう。私の夢を叶えてくれて、あなたがお父さんを足止めしてくれたの」

『よくわかったな。そなたの夢を叶えるかわりに、私を甦らせてくれ』

「卵が割れたせいはアナタが私の中に入ったせいよね」

『そうだ。封印されていたからな』

「封印・・。」

そういうと龍は大きく翼を広げ飛んで行ってしまった。翌日から身体に変化がではじめた。朝から喉が渇く。はじめはエアコンのせいかとおもったがどうやら違うらしい。自分じゃ止められないくらい。二リットルの水を飲んでも喉が渇く。変だ・・・。これも龍と契約のせいなのか。怖くて龍の卵が割れたことを父親には言えなかった。新聞で壊れた龍の卵を包みビニール袋に入れベットの下に隠した。いつか粗大ごみの時、朝早く捨ててしまえばいい。

学校には休まなかった。休めば龍の卵の事がばれてしまうんじゃないかと思った。それに学校ならいくら水を飲んでも叱れない。学校にいきいつもの授業がはじまる。一時間ごとにある休憩時間に水を飲むチャイムが鳴るまで飲み尽くす。トイレにはいかなくても平気だった。その変化はカイにもわかった。体中に龍が絡みついている。復活の時が近づいているのだ。水を必要以上飲むのもそのせいだ。

たぶん今日の夜だ。水がたくさんあるところで生まれるのだろう。

はるかは家に帰ってからも水を飲み続けた。箱で買っている6本入りの二リットル水をのみまだ足りない。いくら水を飲んでも太らないが喉の渇きはとまらないより増している。

わたしはこのまま干からびてしまうのだろうか。

そのときだった。身体の中から声が聞こえてきた。

『もうすぐ、復活の時が来る。』

「え・・・。やっぱり私の中にいるの」

『風呂場に行き水を溜めろ、身体につかれば少しは楽になるだろう』

慌てて風呂場に行く。急いで水をためる。水がたまったら急いで浸かった。何とか喉の渇きを押さえらえた。やっと冷静になれた。ここから一番近いプールにいけばいい。そうすれば龍は出て行ってくれるのだろうか。母親がパートから帰ってくると驚きの声をあげた。

「はるか。あなたこんなに水飲んだの!お腹大丈夫じゃないでしょう。トイレにいるの」

はるかはひたすら隠れようとお風呂の電気を消す。すると母親が気がついたようでお風呂場にやってきた。

「お母さんを心配させないで、はるかの部屋行ったら龍の卵が壊れていたの知ってたのよ。お父さんに一緒に謝ってあげるから。」

「違うのお母さん。私、喉が渇いているからお風呂に入っているの」

どうしよう・・どうしよう・・。頭が混乱してくる。どうすればいい。

「あのアンティークの龍の卵、あれとても不吉な品物だったんでしょう。お母さんわかるのアナタが寝ている時。青い光があなたを包んでた。お父さんに言っても聞いてもらえなかったわ」

「お母さん。今日、龍が生まれるの。それまで待って龍が生まれたら契約が切れるから」

「どういうこと」

「龍にお願いしたの家族で暮らせるように頼んだの。お父さんにずっと側にいてもらいたかったから海外に行きたくないって、三人で暮したいって頼んだの。そうしたら昨日お父さんの仕事が変わったから。大丈夫暗くなったらプールに行く」

「お母さんはどうすればいいのよ。心配なのお願いアナタに何かあったら困るの」

お風呂場の近くで泣いていた。わあわあ泣き叫んでいた。前からおみやげに買ってくる品物にあまり賛成していなかったのだ。もしも変な霊が憑りついていたらどうするのと言って言っていたのだ。しばらくして電話が鳴り出した。母親はゆっくり立ち上がり電話まで行った。しばらくして感謝の声が聞こえてきた。誰だろう、パっと思いついたのは、カイ君だった。アイスを食べたとき私の腕を見て違和感を感じ取ってくれたのは彼だったから、それに謎だらけで一番あやしかった。

「はるか。夜の九時になったらお母さんがプールに連れて行ってあげる。安心して今はそのままお風呂にいなさい。その方が安全なんだから、水着は用意してあげるから」

そういうと母親は早速準備をし始める。時が経ち母親に言われてお風呂から上がった。すぐに水着に着替えて洋服を羽織った。また喉が渇きだす。すると用意していたのだろう。大量の水が車に積まれていた。水を飲みながら車に乗る。

「お母さんが助けてあげるからな安心しなさい」

しばらくして市民プールについた。すでに許可を取っていたらしくて直ぐにプールに付かれた。体中の血液がドックドック音がした。もう封印からときはなれるのだ。ものすごい吐き気がした。その途端口から一気に赤ちゃんくらいの龍を吐き出した。みるみるするうちに大きい龍になった。はるかはそのまま気を失った。

「へー。これが龍か。本気になって戦わないとヤバいな。」

声の主は高杉カイだった。大きな剣を手にしている。大きな雄叫びをあげる龍をめがけて剣を持って走る。カイは龍の足を刺した。

「早く逃げろ。ここは俺の出番なんだ」

龍も牙をむきだしカイを食べようとする。カイは大きな口に剣を突き刺し大きく回転する。舌を切り刺した。全身の神経が研ぎ澄まさせられる。まだ龍はしなない。こんなんで龍が封印されたとは思ってはいない。一気に龍の上に立ち首から剣で切り裂いた。胴体と首が離れた。しばらくするとだんだん龍が小さくなった。また、はるかに憑りつこうとしたのだ。素早く剣をふり小さい龍も切り落とした。

「終わった・・・。」

そういった途端、カイはぶっ倒れた。カイの持っている剣が急激に変化しツルギが慌てて抱きかかえた。

「・・・よかったですね。カイ様」

はるかが目を覚ましたのは三日後だった。病院のベットに寝ていた。お母さんが誰かと話している。しかも、とても楽しそうにいったい誰だろう。ほのかに開いた窓から風が入る。髪の毛が微かに揺れる。

「谷村さん気がついた。」

この声知っている。あの時のかわいい面白い弁当を見せてくれた子だ。

ちょっとずるしてまだ寝てよう。

季節はもうすぐ夏休みに入る頃だった。



                                  おわり

                                                               




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龍の卵~ドラゴンエッグ~ 星乃秋穂(ほしのあきほ) @HAUHAUTOUKYOU

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