第12話 シャトンは知っている
結局、エレインの身支度には二日を要した。
庵で迎える三回目の夜。パチパチと
その足元に柔らかなものがするんと身をすり寄せた。
「おう、シャトン。どうだ、あいつの様子は」
フランが腰かけている椅子の下をぐるっとくぐってから、猫は暖炉の前でごろんと足を投げ出して横になった。
「あの娘ならもう寝たよ。良い寝顔だ。デニーさんに感謝しなきゃいけないね」
「そうか」
「あのさ、三代目」
「なんだ?」
「あの子は何だい?」
フランは目をぱちくりさせた。『何者か』ではなく、『何か』という問いに驚く。
「他の人間とは、何かが違うんだよ。どう違うかって聞かれると困るんだけどねえ」
シャトンは首もたげ、フランの方を向いて一生懸命言葉を探している。彼女の
「
そう言うと、再びシャトンはくるんと体を丸めた。
彼女は間違っていない。三代目はその感覚の鋭さに舌を巻いた。
しばし、二人は黙って炎の動きを見つめていた。
炎は一時たりとも同じ形ではいない。暖炉の中で踊りながら燃え続ける。
パチンと乾いた音がして、火の粉が散った。
「なあ、シャトン」
「なんだい」
「ちょっと昔話に付き合ってくれるか」
赤毛の隠者は、弟子にも話したことのない身の上話を、この世界で一人ぼっちの生き物に語ることに決めた。
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