第210話―陽光のみぎりブルースカイ2―

ひしめく人達は手に手をペンライトを振る。


「こ、これがペンライトのダンスか」


「お兄様その認識には半分と正解で不正解でこざるよ。いわゆるオタク芸で応援するパフォーマンスとは少し差異があるそうろう


アイドル公演に手にするペンライトを持ったまま俺は東京ドーム内の熱量と歓声とパフォーマンスに圧倒しているとペネお嬢様は指摘する。


「あれアイドル応援だからのオタク芸のパフォーマンスですよね。違いがあるのですか」


「ええ、近年で確立させたサイリウムダンス。芸術的なパフォーマンスとして昇華させたアート!簡単そうにみえて激しい動きでして乱れのない素早さを落とさず魅せないとならない難易度の高いものでござるね」


ライブが始まっているので疑問を応えるペネお嬢様は声を抑える。参加する他の人達に迷惑や邪魔しないよう気配りとして。

薄日うすびを差すような微笑を湛えるペネお嬢様は小さくペンライトを振る。


「そんな世界があったのか。もう一つの芸として確立していたとは知らなかったよ。

身近で見るサイリウムダンスは機敏な動きだから意外と難しいのは素人でもそれは分かる」


「であるか」


短めな言葉だけペネお嬢様は口にする。その意図は話はこれで終わりにしてライブわたくし達も楽しみましょう。俺は慣れないながらもペンライトを見よう見真似で実践する。

稚拙でも周囲は一人の仲間として受け入れてくれる不思議な空間に浸かり一体感となる。

コンサート公演は万雷の歓声、熱狂に包まれていき疎い俺でもこれに感化して楽しんだ。

ライブが終わると俺たちは会場外に出ていた。

多くの方は帰路に就いたとみてベンチには空いており俺は冬雅と並んで座る。


「これがアイドルライブ。とても盛り上がって今日のデートもこれはこれで楽しいものでしたねぇ」


「冬雅からしたらこれもデートに入るのか。今日のような大きな会場はライブを見た事ないから新鮮だった」


「えへへ、ですねぇ新鮮でした。

お兄ちゃん決めました。わたしアイドルになります」


ベンチから立ち上がって冬雅はアイドルになることを宣言した。腕を胸の前に挙げるという典型的あざといポーズをする冬雅を俺は見上げて先に思ったことは。


(この勢い任せ。ここまで行くと冬雅のお家芸でどう回答すればいいのか困るな……)


でも冬雅がアイドルか。もしレビューしてアイドルとしてライブをすると衣装やダンスを想像をする。


「冬雅がアイドルなら確実に成功する」


「ふぇ!?」


何故か驚きの声を上げているが俺はそれに反応を示さなずに想ったことをそのまま述べる。


「年齢的のハードルは二十歳の冬雅がなるけれど決してそれで遅くということはない。

よく間違う人は居るがアイドルは容姿だけ磨けばいいじゃない。

それならモデルになればいい話だからね」


「そ、そうですねぇ……お兄ちゃんは確かアイドルに関心なかったはずだったのに?」


ああ。たしかに関心はないから疎い。

けれどアイドルマスターやラブライブのゲームやアニメは網羅している。さすがにゲームのストーリーだけは最新話を観れておらず何年も観ていないのもあるがそれでもアイドルの定義はそれなりに知っているつもりだ。


「アイドルの定義は人それぞれではあるけれど絶対的なのは。いくつかの理想とされる一つ一つの要素を併せて総合的にあるのがアイドルだろうね」


「う、うん。なるほど」


冬雅が戸惑っていることを自覚はしながらも持論を展開した言葉をとまらない。

偶像として体現するには顔や声だけがいいのは古い考えで浅瀬である。もちろん容姿は大切ではあるがそれはステータスの一つにすぎず他の要素となるダンス、歌声、人柄と複数も磨かないとならず一つだけ特化するものは中にはいる。たとえば歌や容姿が周囲よりも劣っていおり、所謂ブサイクと貶されるアイドルが。それでもファンを大切にして明るくさせることのサービスが卓越で秀でた人もいる。

けれど溢れるアイドル像を独りよがりに語ったことで冬雅は呆然とさせてしまった。


「はは。どうやら引いてしまったか。

ごめん冬雅こんな話を聞かせてしまって」


「ううん、謝らくていいですよ。

熱弁して確信しました」


「冬雅……」


咎めるような言動をみせず柔和な微笑みで冬雅は優しく返事した。そして数分ほども天使のようにどこまでも優しい冬雅に見つめていた事に気づき俺は視線を逸らす。

見惚れていると何も反応とかとらず言わないもので自然と見つめ合う形になる。

これからは心を強く持とう。そして二度と見惚れるような失態はしないと誓おう。


「えへへ、でもアイドルになるのは多くを笑顔させるためじゃないです。

お兄ちゃんだけのアイドルになってイチャイチャするためなのです!えへへ恥ずかしいですねぇ」


「ああ、なるほど急にアイドルなると発言したときは不自然だったけど今のコトバで合点したよ」


頬を抑えながら悶える我が彼女。

ふむ、プライベートでアイドルになるならコスプレして楽しむというものなのだろうと解釈する。これが実行せず言葉だけで終わらず有言実行してやり遂げようとするのだろうなと俺はあえて他人事みたいに捉えるのだった。

そうしなければ自由に想像を羽ばたく先には花畑なシチュエーションで冬雅みたいに悶えるからだ。

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