第173話―サファイア姉妹と使用人ケルンの観光六の巻―

南から聖堂内の螺旋階段を昇る。

そこを足で上ろうとするのは体力がいるだろうし五百を超える数ほどもあるのは何気に根気も必要とされる。

上部にたどり着いた特別な達成感の余韻に浸れるのは醍醐味だろう。

サファイア姉妹と使用人二名の乗る道具はハイスピードで起動しながら振動感のなく上がっていく。

昇降盤しょうこうばんの上で立っても座っても墜落する心配はないほど安定性だった。柵がないため何も無いところ転ぶか押されない限りは落下することは無さそうだ。


「落ちたら大怪我しないか、そのように考えられている顔をしていますね山脇東洋」


正座して雑談しているお嬢様を背後で見守りながら並んで立っているグレイスさんが囁く程度の声でそう言った。


「……はい。そこまで心配しなくとも呆れて思われますが万が一の可能性。

どうしても過保護的な考えになります」


「いえ過保護ではありません。

この速さで落ちるのは危険なのは確か、たた我々チームが落下したことの対策を怠たりしません」


「グレイスさんの仰る通りですね」


何らかのクッションとか仕掛けられているのだろう。壁や床とかに、とはいえ安全を備えても想定外は起きるものと抜けられず擦過傷さっかしょうはあるんじゃあと懸念はある。


「まだ疑いますか。

それでは論より証拠をお店しましょう」


付随ふずいする位置から前にと進んでグレイスさんは昇降盤から飛び降りた、、、、、


「えっ……ええぇぇーーーッ!?」


華麗に着地するグレイスさんの腰の辺りで猛速度で駆け抜けていた昇降盤がぶつかる。

時速の約50キロもある物体からの衝突。いや、そんな生易しいものではなく激突の速度。


「たとえば私が前にと落ちたとして、止まることなく進行する昇降盤にぶつかってとしても、このように衝撃は皆無となっています。

せいぜい触れた程しかありませんので」


両手を広げて淡々と説明していくグレイスさん。そんな肝魂きもだまがありすぎる行動。ためらいなく実行を目の当たりにしたサファイア姉妹たちは会話をやめて口を開けて呆然と見ていた。


「……………あっ。立証するため敢えて落下したのですか。よくわかりました。

でしたら落下の危険はありませんね。うん」


理知的で落ち着いた所作と、見えない思慮のある。おとなしめな方とはイメージしていたけど時には思い切ったことを迷いなく実行すら女性でもあるみたいだ。

グレイスさんの勇ましさ、意外な一面を見てしまい人は見かけによらないのだなとつくづくと感じるのであった。

――通過していく途中で緩やかに速度を落として盤は停止する。サファイア姉妹が先に降りてから使用人である俺たちも降りる。

そこにあるのは巨大な鐘だった。


「古い鐘がありますね。

かつて鐘を鳴らして奏でていたのかと思うと見ていて想像が膨らんでいきますね」


「フフ、そうでござるね。お兄様ご存知ですか。

今でも現役で鐘が鳴らして民の心を高揚感とリラックスさせる呪術があるのであーる!」


はしゃぐ勢いで説明してくれるペネお嬢様。


「心を洗われる音なんでしょうね。きっと」


「では、鳴らしてみせん」


「えっ、特別な行事とかじゃないと鳴らないのではありませんかペネお嬢様ッ!?」


俺は恐るおそると尋ねたら、伸ばした人差し指を左右に振りながら違うと応える。


「ここは仮想世界、なんでもありですので今でも鳴らせます。さあ!ホラガイを鳴らせぇぇ」


バーチャルなので都合のいい自由で好きなタイミングで鳴らすことはそれは出来るか。

そしてペネお嬢様は指をパチンと鳴らして高々と下知げちをくだす。

そしてペネお嬢様の指示が飛ぶとケルンの鐘は自動でゆるかなに動き出し、鳴り響かせるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る