第171話―サファイア姉妹と使用人ケルンの観光四の巻―
南からはひときわ高く突き出す二つの塔がある。
飛び抜けて、そびえ立つ
そのまま南門をくぐり抜けようとすると思ったがペネお嬢様は反転して俺の方へと接近しようと足を向ける。
「ここでクイズを仕掛けます。
お兄様ここを通過するには
ではその入場料は
なんの脈絡もなくクイズを出された。
いや本来なら入場料を支払ってから通過するから関係のあるのか。
当てずっぽうで浮かんだ答えをそのまま応えるが正解かもしれない。けど出題された内容に海外では高めなのかと考え、今まで観光してきた入場料を概ねに照らし合わせていく。
「お兄さま真剣ですわぁ。そうですわ!グレイスさんの若い頃のお話をお聞きしたいですわ」
「……若い頃ですか」
静かに淡々と呟くような返答。その声調から察しなくともショックを受けているのは確か。
「どうなされたのですか?もしかして体調よろしくないのですか」
「あっ、いえなんでもありません。
暇つぶしにと後ろからグレイスの過去を語り始めた。気になる、けど何時までも待たせるのは目の前で待つペネお嬢様に申し訳立たない。
なので、日本とドイツの入場料は違いを本格的に考えていた止めて答えに入ることにした。
「答えは千、二百円と思います!」
「不正解でござるよ。それでは大聖堂の木戸銭をお答えしますと四ユーロになります。
日本円に変換しますと役580円ほどになりますわね」
ゆったりとおちついたさまの柔和な笑みで告げるペネお嬢様。
後で調べようと考えたけど木戸銭という言葉はおそらく入場料、または少し古風な言い方をするなら見世料だろうか。
「どうやら片付けられたようですね。
この後のサファイアお嬢様らの予定も控えてありますので立ち話はこの辺にして参りましょう」
グレイスさんは背後から淑女然とした声で言った。ペネお嬢様の気まぐれなのは周知とはいえ促されることに疑問だった。
そのあとのスケジュールを急がせるならバーチャルで遊ぶような予定を選ばない。
とはいえ空いている日、それと時間も僅かしかないなら事情も考えられるけど高校生である彼女がサファイアの家名を果たすような雑務は数ほどしかないから卒業するまでは忙しくはない身分と思われる。
(そういえば進学があった。
そんな家柄とはじゃなく、もっと個人的な理由の大学受験生が迫っている。そりゃあ忙しいのは当然か)
「あっ、グレイスさん。文化祭でやってしまった失態をもう少しだけ聞かせてくださいですわ」
「さあ、参りましょう皆さま」
なるほど、そういうことか。
暇つぶしにと昔話を語っているうちに封印されし忌々しい記憶の領域に触れたからと推察。
いわゆる黒歴史を避けるためであり、自然な流れでもっていくため。ただ妹君は好奇心に燃えておりグレイスの追及は苛烈となるのだった。
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