第162話―冬雅は千年に一人の美少女ある意味で―
東の空から射してくる太陽の光が下に注ぐ。
ならびに、右のすぐ近くから射しこむ恋慕の丈が
注がる。
「この日はとても、お出かけ
抜けるような青空は、わたしとアナタ……えへへまだ早かったですねぇ。
わたしとお兄ちゃんを神々や天使、さらに悪魔までも祝福してくれています」
「幸せそうにしているところ申し訳ないけど冬雅ちょっと抑えて。もう今年で二十歳になるんだから」
この日は冬雅と素材が切れて補充しにきていた。立ち並ぶのはファッション系のビル。
それに人が行き交じっている大半は明るめなコーデから渋いといった服装をした道を行く人たち。
もし誘われて頼まれなかったら決して縁のないエリアで場違いがすごかった。
すでに目的の生地を購入して帰路の途中だった。
しかし平穏に帰宅するのは希望的な願望を打ち破っていく。
デートで幸せそうな笑みを浮かべてばらまく冬雅は、この日は徹頭徹尾とポジティブ全開だった。
その多幸感が突如として爆発して常軌を逸するような行為を躊躇いもなく決行する。
「えへへ、おっしゃる通りに一理ありますねぇ。そうです!わたしも十二月で大人になります。
それまでにはキスを済ませて婚約届けや指輪を用意しないとなりません。もちろん年が離れいた分お互いに距離を置くようにしてきました」
ダメだ。冬雅の頭は壊れてしまったようだ。
こうなった冬雅を止めるのは容易ではない。
どうしたものかと思いながら無駄だと分かりながらも釘を刺して牽制を図る。
「ここ公共の場だから言葉を選んでくれ冬雅ぁぁぁーーッ!!そこまで進展するはずがない。
頭を冷静になってくれ」
「そのぶん募ってきた分だけの想いが溢れて解き放たれる日が待ち遠しいです。
えへへ、クリスマスお兄ちゃんと言葉にしにくい関係になっています。えっへへへ」
くっ、まだ大人になるまで恋人のような行為は控えるように先延ばしいた。
我慢して募っていたのが今の発言に至ることになるとは。
道を行く人からは奇異な視線を浴びせられて居心地すこぶる悪い。すぐ冬雅を止めないと。
「ふ、冬雅。突然だけど……あ、愛してるよ」
「ギュッとされて熱い
えっ!!い、いまなんて言いましたかッお兄ちゃん!?もう一度きかせてください」
「だ、だから。愛してると言ったんだ。冬雅を」
あんなヒートアップしている彼女を止めるには余程の事がなければ鎮めれない。
そうして大きなエネルギーを対消滅するための一手が告白しかなかった。
「あぁぁ……わあぁッ。う、嬉しいですけど人が見ていますよ。お兄ちゃん気持ちは天に昇るほど嬉しいですけど。ここは帰ってから愛の告白をたくさんぶつけてください。
ここ公共の場ですよ」
真っ赤な顔で冬雅は指摘するのだった。
それ最初にしたのはキミだからね!とは口走りそうなのを堪える。
うわあー、どうしてこうなった!
まだ朝の時間帯でこんなことを叫ぶなんて、バカップルも引いてしまうほどだ。実際に遠目で見ていたカップルは茫然とした顔で俺と冬雅のやり取りをげんに見ている。
――冬雅の大規模化した爆発を食い止めることに成功してから駅に乗って帰路に向かう。
冬雅は、おとなしくはなったものの顔を合わせると『ふわぁっ!?』と可愛らしい声で目を逸らしてきた。
ちなみにそれだけ羞恥に悶えるとコチラも影響を受けて恥ずかしくなる。
先程の路上でした告白、また黒歴史がまた一ページと刻まれて記されていく。そして冬雅と別れる未来は無さそうだし未来永劫として語られることだろう。イヤだな、
駅に降りて、バスロータリーの方へ出る。
すると冬雅に向かって近寄ってくる人が目にした。さりげなく反対側にいた俺は回って冬雅と怪しい人の壁になるよう間にと回る。
「そ、そこのキミ!モデルか俳優とかに所属していないかい?」
あからさまに見るに怪しい風体ではなく、どちらかといえば目鼻立ちのハッキリとした女性。
歳は三十前後だろうか高そうなサングラスにパンツスーツを華麗に着飾っていた。
「えっ、いえ所属していませんけど」
「これは
まさか貴方のような千年に一人の逸材を見つけたのですから。
ねぇ貴方モデル興味ないかしら」
なるほど警戒していたけどスカウトマンなら安心か。いや、でもモデル事務所とはいえ必ずしもホワイトな企業とは限らない。
もしかするとモデルを酷使する悪質な可能性だってある。さて、どうしたものか。
「いえ結構です」
慎重に対応しようと悩んでいる後ろで冬雅は、キッパリと断った。なんの迷いもない決断だった。
そしてなんの逡巡をみせない冬雅の態度に今度はスカウトマンの女性が驚く番だった。
おそらくモデルにならないかという夢のようなシチュエーションに少なからず優越感に浸って迷いを見せるか、目をキラキラでイエスと快く変事するものだと考えていたのだろう。
いやベテランだから想定外すぎて言葉を失ったとみる。すぐに立ち直った女性は引かずに攻める。
「……そ、そう。けど惜しいわ。
貴方のような原石なら世界、いえ歴史に名を残せるわよ。それでも?」
「はい。モデルの誘いは嬉しいですが、それはわたしが叶えたい目標ではありませんので」
「……で、でも千年に一回に生誕する美少女をみるみる見逃すのは惜しすぎるわ。
ねぇ貴方もそう思わない」
まさか傍観して見守るつもりが声をかけてくるとは。なんとか説得しようと親しいと思われる俺に同意させて攻略する手立てなのだろう。
「えっ、そうですね。でも彼女の意思を尊重したいですし無理強いは出来ません」
「お兄ちゃん……」
ほとばしるほどの光が背中に浴びている錯覚を覚える。まず間違いなく冬雅だろう。感動している、けど断っただけで大したことしていないよ。
するとスカウトマンの目は怪しく細める。
「お兄さんでしたか。
もし我が事務所に入ってくださればランウェイの上で輝きます。そんな華やかな姿を目にした……フフっ、お兄さんは惚れることでしょう」
「「えっ!?」」
えぇーーっ!?急になんてことを言うのですか見知らぬオシャレな女性さんは。
こんな風からめてで説得しよとするはずがない。
ちなみにランウェイというのはファッションモデルなどが見せるため服やアクセサリーを舞台の上で行うデモンストレーションのこと。
「ほれる?」
あれ冬雅さん?
「ええ、そうです。
華やかな貴方を目にしてメロメロになりますわ」
「ほ、ほんとうですかッ!?それは」
あれあれ雲行きが怪しい?
「モチのロン。貴方がいないとダメになるほど。それはもう骨抜きになることですね」
「……そうですか。食い気味に聞きましたが、やっぱりモデルにはなれません」
冬雅は決然とした表情で明言するのであった。
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