第163話―冬雅は千年に一人の美少女ある意味で②―
肩を落として立ち去るスカウトマン。
(いやマンだと男性だからスカウトウーマン)
どっちでもよさそうな呼称さておき、何故なのか疑問だ。光明を見たスカウトウーマンさんは千年のモデルを獲得する手応えを感じていたはず、それは隣で何も出来ずにいた俺もそう思った。
勢いでイエスと承諾したら異議を唱えるつもりだった。だがその必要はなく冬雅の態度が反転して丁重に頭を下げて断ったのだ。
「冬雅よかったのかい?せっかくのモデル誘いを断ってしまうなんて」
「はい悔いは一寸さえもありませんので。
むしろモデルになったらイチャイチャする時間とか無いですからねぇ」
また凄い理由を平然と言っているよこの子、でも可愛いくて泣きそうです。
ううっ、感涙ものですよ。
さて一時的な感動はこの辺にしておくとして違和感のある受け答えだった。
それに冬雅はまたもアイドルのようなポーズしていた。
あざとさが露骨に表れているけどドギマギしない人はいないだろうの甘えるような姿勢。
「それはさておき、どうして先まで肯定的な流れなのに急に冷静となって問うてもいいかな」
どこか愛苦しいな態度には逸らそうとする意図を感じて隠そうとするのを俺は問い掛ける。
もし応えようとしないなら諦めるしかないが。
すると冬雅はすべてを見通しですかと告げんばかりに溜め息を零す。そした取り繕うことをやめた冬雅は視線を落とす。
「あの人の言葉で流れそうになったとき……お兄ちゃんは私がいないとダメになると辺りで目が覚めたんです」
「あはは、俺はダメな人間だからね」
定職にはついておらず夢を遮二無二だけ追っている現情を甘んじて受け入れて変えようとしないからダメなんだろう。
けど好きな冬雅に告げられるというのは思いのほかに心にくるものがある。あれ、おかしいや涙腺が熱くなってくるぞ。
「い、いえ決してそういうことじゃないです。ですので落ち込まないでください、お兄ちゃん!
あのよく聞いてくださいねぇ。わたしと一緒にいることでダメになっていくのが怖いって意味なんですよ」
「ああ、そうか。でも冬雅……もし俺がダメになっても冬雅には責任の一切ないから安心してくれ」
きっと効果は薄いだろうと思いながらも言わずにはいられないかな。もしなにかがあれば
他責ではなく自責として受け取ってしまう傾向がある。
「それはそれで距離あって悲しい……いえ、ですから隣にいると少なからずの影響はあります。
近くにいれば
わたしと居ることで、悪い方へ向かわないか不安なんです」
顔を見せないように冬雅は顔を沈めていた。身体は震えながら抱える想いを吐露した。
「冬雅……そんなことないぞ。
キミがいてくれたから俺は今を楽しんでいるし冬雅が隣にいてくれるから何でもやれる。んだ」
「お兄ちゃん……」
やはりと言うべきか顔をおもむろに上げる冬雅のまなじりに水滴か流れていた。
「ゆっくり俺たちのベースで付き合っていこう。
これからもよろしく頼むよ冬雅」
こういうときはハグするのがいいのかもしれないが嫌がられるかもしれない。なら
冬雅が喜ばれることはこれしか無い。
おそるおそるといった迷いはなかった。長くそうした行為で慣れたのだろう。
俺は手を伸ばして冬雅のつややかな長い髪をなでる。優しく乱れないよう気をつけながら。
「はい!こちらこそ改めて宜しくお願いします」
涙で濡れながらの満面な笑顔。
こればかりなれそうには無い。
「まずは定職を見つけないといけないね」
「いえ、その無理する必要はありません!
お兄ちゃんの定職は作家の一本に専念しておいてください。離れたくないです!」
さすがは勇ましい発言なのに最後に呟いた本音に苦笑を誘う。
たしかにスカウトウーマンさんが冬雅の美貌は千年に一人と賞賛したのは同意見だけど、
それはいささか違うと思う。
冬雅が浮かぶ笑顔は闇を照らしてくれるほど太陽のように眩しく長い人類史で唯一の笑顔だ。
――帰宅すると手を洗い録画したアニメの試聴会を楽しむ。やはり今年のプリキュアは両作品といって過言ではないだろう。
作画もよくて必殺技も覚えやすく演出や迫力と可愛さなど一級品レベルだ。これは歴代の中では上位に降臨は確定な作品だ。
デリシャスパーティプリキュア、楽しみにしていた最新話を見終わる。時間が経つのは早いなあと感慨深くなっていると冬雅は立ち上がってこんなことを言った。
「今回の話もほのぼのして良かったですね。戦闘や葛藤はあるのに、ほのぼのは適切じゃないと分かっているけど視聴の後だと
スッキリしてしまいます!」
冬雅は、無邪気そうに見た感想を語っていた。おそらくだけどプリキュアを一緒に見たというのが舞い上がらせる気持ちにとこみ上がたと考える。
「ああ、よく分かるよ。
深刻ままなのに悩みはキレイに解決するから
「うん。今年のプリキュアでお兄ちゃんの
「やはり主人公のキュアプレシャスかな。
ただキュートだけじゃなく周囲を明るくさせる天真爛漫さが魅力的だよね」
五百キロカロリーパンチやパワーで圧倒する強さなど歴代プリキュアではなかなか被らない主人公ではないかと思っている。
「ふーん、なるほど。
ここまで熱弁するなんて、お兄ちゃんプリキュアに変身しようと思います。わたし」
「そうか変身するのか…………
はい?変身するって、それはどういう?」
「えへへ、誤解させましたねぇ。
キュアプレシャスのコスプレでお兄ちゃんの前で披露しようと事です!」
そういうことか。
冬雅は主人公のキュアプレシャスの衣装を着飾ると宣言しての言葉のようだ。
とはいえ鮮やかな桃色の髪はウィッグでも見つけるのは大変ではなかろうか。
あと完成度を高めようとするとテレビで販売に促進しているアイテムグッズを購入をしたら結構な収支になるはずだろう。
たしか今日の買い出しで高品質な生地を買ったばかりで金欠じゃあなかったかな。
「そ、そうなのか。でもあまり無理しなくていいよ。手元が苦しいなら来年とかでも
見せてくれたら」
最悪、ここまで先延ばしすれば約束したコスプレの件が忘れる。そうしたら約束できなかった罪悪感とか湧くこともほとんど無い。
ここまで考えるのは過剰ではないかと自分に指摘したくなる。そうでもしなければ
冬雅は約束できなかったことに落ち込んでしまうだろう。律儀で優しい性格だから。
「いえ問題ありません。
来月ぐらいには、お披露目させますよ!
楽しみに待っていてください」
しかし提案をしても冬雅はそれで快諾しようとはせずに強引に予定日を述べて進んでいくこと多々ある。
アクティブすぎる彼女、言い終えたタイミングを見図るようにピンポーンと居室に鳴り響いた。
誰だろうか?心当たりはないかと聞こうとして振り返って冬雅と顔を合わせる。どうやら冬雅も似たようなことを考えたみたいで
心当たり無さそうだ。
リビングから廊下に出て、そのまま玄関のドアを開けると前に立っていたのは花恋だった。
「こんにちは東洋お兄ちゃん。
さっそくだけ泊まらせて。母さんとケンカして家を出ていったの。
だから私を泊まらせてください。お願い!」
ここへ訪れて駆け込んだ花恋はそう懇願するの
であった。
俺と冬雅は言葉を理解するまで数秒ほど要した。
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