第157話―花恋と浅草寺に遊びに行く―

とある日の夜の事だった。

この日も二階の自室でパソコンを立ち上げ執筆していた。デスクの抽斗ひきだしからスマホの着信音が鳴っていることに気づいた。

微かに聞こえた音量、引き出してスマホの画面を見ると広岡花恋ひろおか・かなと表示されていた。


「もしもし花恋」


『あっ、東洋お兄ちゃん。休みってヒマ?』


「そうだね……まだ埋まっていないけど後々に埋まると想定して暇じゃないかな」


『はにゃ?つまり断れたの。

腑に落ちないんだけど東洋お兄ちゃん。それに、なんでそんな抽象的な説明なわけ』


「それは……休みの日になると冬雅たちから連絡して予定の無い休みの日が無いから。

どうして歯切れの悪い説明なってしまうんだ」


『納得!それ超なっとく。

もしかして私と、あ、あ、遊ぶのは厳しそう?』


どうやら花恋が夜更けにラインで掛けてきたのは遊び誘うためなのかと腑に落ちる。

若干の上擦った声をあえて触れずに進む。


「そういうことなら遊びに行くか」


『や、やったあぁぁーーッ。

んじゃあデートコースだけど、どうしようか?どこへ行こうかな。あっはは』


すこぶる喜んでいられる花恋さま。

なんとなくだけど花恋は勇気を振り絞って出掛けることを誘われたので断りにくい雰囲気。花恋は気分転換になるなら相手として不足していると感じていた。

年が離れすぎていて共通の話題が自信がなかったのもあるけど、申し出を快諾したのはたまに花恋と出掛けるべきかと考えに至ったからだった。


(約三年ほどもコロナが続いていたから花恋さぞかし出かけたいのだなと思ったけど、違った。

まさかのデート、まさかまさかの花恋の口からデートコースという単語が出るとは……

本人は自覚しているのか……しらない。読めない)


『東洋お兄ちゃん期待していてよね。

私で頭がいっぱいにして忘れない一日にするから』


「あ、ああ……………楽しみにしています」


舞い上がってブレーキが壊れたのだろうか。今の花恋は好意を隠すことをせず真っ直ぐと告げる。それに他にも訝しげる点はある……

どうして花恋や冬雅たちは、一応は社会に出ている俺をリードしようとするのッ!?

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