第125話―異世界マナさん9―
あまり酔っては帰りに支障が起きるので俺は早々に二人を帰らせることにした。
あまり泥酔させないよう考慮して催促したのだが真奈は、顔を真っ赤にしてフラフラ。
立派な泥酔に陥ていたのであった。
おかしいアルコール度数が高くないカシオレで酔ってしまうとは計算外だった。
香音のほうは酔ってはいるけど足がふらつくほどではなく正常的にあった。
「ぐへへ、真奈さまの寝顔なんて尊いの」
「香音ちょっと声をもう少しなんとかしてくれ」
もはや笑い方が山賊の小物みたいな笑い方である。俺と香音は左右で酔って眠りについている真奈の肩を回して歩いて運んでいた。
無事に真奈を家に送り届けると母親さんは娘が気持ちよさそうに寝ていることに驚いた。
左右で肩を回して運ぶというのは、なかなか難しく腕力などいるものだった。眠っているかは、とくに体重のかけ方をしないと難儀。
そのあと香音も近くまで送らないとならない。
本人は、結構だと突っぱねるが初めて酔いというもの体験している香音だけにしておくのも不安でしかたない。
どれだけ言われても俺は引かずに送ると引かなかった。さすがに根負けした香音は「なら近くまで。決して家までこないでよ」とそれだけは譲らないと重ねて言った。
そんなのは当然の主張。というより必要が無いと判断したり言わない限り寄らないつもりだった。
冬雅がいるのでそのへんの線引きは大事。
香音が進むであろう帰宅の途を並んで歩く。
ひとけの無い商店街。店がシャッター下ろしていて営業は短くて夜の時間帯だから閑静としているのか店舗が潰れて廃れているのか分からない。
ただ香音がここを通らないと家にたどり着けないことだけ。
「アンタは、ロリコンさん変態は真奈さまと結婚しないの」
「ゴホゴホ。急にどうしたんだい香音
あまりにも衝撃的なことを訊かれて咳き込んでしまった。香音は横に歩きながら呆れた表情をした。
「焦りすぎだから。それと女史って……いつから私って学者か芸術家でもなったのかしらね」
お手上げみたいな動作をした香音。
なんというか鋭い言葉をしておきながら冷静に物事を俯瞰的に見ていることが理由だった。いずれその物事をじっくりと分析能力。どの分野で活躍すると思っているから勝手に思い込んで将来は女史と敬称されるだろうと。
「なんでもないよ。ほら急がないと、ご両親が心配してしまうよ」
「だ・か・らぁぁぁーーっ!私を子供あつかいにするなって言っているよね!!」
未来は不確定ではあるけど香音は成功するだろうと根拠や明確な理由もなく思った。
ここまでいいだろうと香音は言う。どこまで残り距離があるかは分からないが治安は比較的に安全な日本なので強く心配しなくともいいだろう。……いささか心配だけど、そう頭で納得することにした。
途中まで送り届ける手を振って香音を近くまで送り届けて早く家に就こうとして歩き進んで向かう。ここからは何事もなく終わると思ったが、悲しいことに活力にあふれる彼女たちと出会ったことでイベントという展開を生じる出来事の発生率は高くなっている。
「ま、真奈さん。とても気持ちよさそうにしているところ大変に申し上げにくいのですが何故?どうして!……
玄関に寝ているのですかぁぁーーッ!!」
さぁーて寝るぞ!我が家のドアを開ければ玄関で美少女が寝ていた。腕を枕にして。
そんなことは、どうでもいいのですよ。今はこの状況をなんとかせねば未成年を誘拐したことになる。いや、未成年じゃないけど倫理的にアウトになる案件なんですよ!
混乱した心中は誰に対して叫んでいるのか俺は次にどうすればよいのか悩んでいた。
「んっ、フフ。大好きかお兄さんだ。
ワタシを抱っこして」
真奈が目覚めた。しかし発した言葉はあまりにも威力のあるものである。両手を広げて甘えるような声を放つ。
「真奈まず居ること詮索はしない。
今はただ俺が言えることは一つだけ……
頼むから起きたのでしたらご帰宅をお願いします」
土下座しようとしたが玄関で
狭い上に、掃除はしていても心理的にそこを座ろうとは思わない。そうなれば深く頭を下げてお願いするしか選択肢はなかった。
ただ選んだ選択は、適切と呼べない。ただ切実にお願いしようと行動であった。
「フフ、お兄さん急に頭を下げないで。
どうしたんですか唐突でビックリしましたよ。
ワタシが帰る場所といったら、お兄さんの家に決まっているじゃないですか」
「……」
ど、どうしよう。真奈がここを帰る場所とさも当たり前な口調で答えました。
俺は不快な汗を拭いながら説得を試みたが、ことごとく失敗。仕方なく俺は真奈のご両親を呼んで送り届けるようにお願いする。
だが返ってきた返事は『真奈をお願い』であった。いったい何をお願いされたんだろうと俺は真奈の母親さんの言葉を理解するのが拒絶して現実逃避するしかなかったのであった。
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