第122話―異世界マナさん6―
小鳥が街路樹のこずえ鳴き声とセミの騒音に負けず劣らずに香音も声を出していた。
叫び声、それから激しく葛藤をする唸り声。小言で何かを唱えるかのようなことをあって異様な気配が彼女から放っているように錯覚を覚えた。
あまりにも物々しい気配によるものなのか通行人は避けていく。ここは公共の場だった。
そう公共の場なのだから周囲に不要に迷惑になり恐怖をばら撒くことになる。そんな配慮にかけたことを注意するべきなのは同行者と年長者が止めないとならないといけないだろう。
まだうちに秘められたし魔物と戦っている香音を声掛け。
「あ、あの香音さま……民が恐怖されています。どうか、その荒々しく噴かれる火の憤激をお沈みをなさってください」
おそるおそる声掛けした声の低さや平身低頭は目上の人に使われるビジネスなどのお声がけ。
心が平であり起伏の少なく掛けるつもりだったが我ながらカッコ悪いもの。
「……仕方ないわね。
こんな人の道から踏み外されたことは許されるべきではないけどトリプルデートしてあげるわよ」
「へっ?あの周りはトリプルデート。た、たしかにそうなるのだろうけど……」
「よし、だったら決まりだね。
ほら置いて行くわよ変態お兄さん。
真奈さまは是非この私と並んで歩いてほしいです。デヘ、デヘヘ」
「フフ。はしゃいで笑うのもいいけど、そんなに浮かれていると転んでしまうよ香音」
ちょっと前まで不気味の香音が嬉しそうに笑う様変わりすぎる反応を真奈は動じることなく微笑んで頷く。
女神のようだと常々だと思っていたが真奈の寛容さには驚くばかりだ。いや、これは寛容さというには違和感がある。
――それなりにデートしてきた経験はあると自負はしていたが、それはまやかしであった。
ほとんどのスケジュールがデートで埋まってしまっている俺は、エスコートしようとしたが上手くいかず彼女たちに勧められるままに行った。
けっきょくはこうなるのかと天に仰ぎたくなるのを抑えながら案内できるほど成長したと自信があったが如何せんそうならなかった。
他から影響を受けたり教えて貰うばかりの受動的な姿勢だからこそ。これからは受動的に学んで俺のベースで受動的に学んでいかないとならないだろう。
そう反省しながら小物屋、
そして時間を忘れたことを店内に出て気づくことになる。空は、すでに薄く赤くと染まっている。
「もう、こんな時間になるなんて早いなぁ。
それだけお兄さんと香音の三人で遊ぶのは楽しくて幸福だからなんだろうねぇ」
ゆっくりと真奈は、振り返る。手を後ろにと組んだままというアイドルのようなことを。
「は、はい。
年の離れたとはいえ真奈と香音とのデートは楽しいものだった。デートという定義は好意を持つ相手とする愛情を深めるものという定義ではなく絆を深める。
すこし言い換えすれば恋慕を深めることデートではあるが、そこから転じて周囲からそうみえるけど友情を深めただけということも使われたりする。
「二人が楽しんでくれたら良かったけど。
どうも、途中からほとんどが俺が好みそうな甘味処やアニメの映画ばっかりだったような気がするけど」
「お、お兄さんの考えすぎだよ」
そういう真奈は目を逸らしていた。
「まったく自意識過剰がここまで悪化すると手の施しようがないわね。んなわけないじゃない」
なにを
ここは知らぬ態度でおくかと決めると香音は首を傾げて問おうと口を開ける。
「変に勘が鋭い変態!あんたにしては、めずらしく言葉を間違えているわよ。
あまみどころ?かんみどころ!最後の言葉をはずしたら甘味になるでしょう」
どうやら疑問を聞こうとしたのではなく、間違いを修正しようと指摘であった。
でも確かにそれもあるけど。
「フフ、残念だけど間違いではないけど。
お兄さんが正しいんだよ香音」
「ま、真奈さまッ!?それは一体どういう……」
真奈は優しげな笑みを浮かべながら細い人差し指を立てて疑問を解決しようとする。
「本来なら、あまみどころ正解。
でも先まで指摘した二字熟語の〖かんみ〗は香音の言う通りなんだけど漢字が続けると訓読みか音読みのどちらかになるの基本的にはねぇ。
上が音で下が
左目をウインクをして説明を終える真奈。
うん、とても愛くるしい仕草だね。これは!
「そうなのですか。真奈さまの御前で失態を晒すなんて
「けど、あまりにも広まっていることから辞書でも採用されていて両方とも呼ぶ。なので間違いないと矛盾な言葉を使ったのはそういうことなの」
なるほど初耳、それは知らなかったなぁ。
真奈の驚異的な程の知識量に感服しながらも畏怖をさらに改める。
香音は、目を星のように輝かせて真奈さまと信仰の叫びを上げる。
とまあ、そんな見慣れた光景に俺と真奈は反応に困りながら苦笑をこぼした。
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