第118話―異世界マナさん2―

あまりにも願望が満ちたセリフだった。

訪れた真奈のあまりにも短兵急たんぺいきゅう(ひどく急なさまの意)な話に対処に困りながらも持ち前の対応力によって返事した。

ところが真奈は、感情を優先的にして論理的な思考法を持ち合わせてないことは無かった。こうみえて彼女は感情と論理性を上手く使い用している。


「風にあてながら髪をといてるくれると悪役令嬢になったみたいでワタシの心は行けないことしている。

それもドキドキが止まないのも好きな人に世話をしてもらうのも背徳心で危険ですねぇ」


さわやかな声と笑みで場違いなことを口にするは真奈。今なにをしているのかは真奈の髪を木櫛きぐしでとかしていたからだ。


「なにを仰っているのですかな真奈さんは。

ご注文とおりに髪をとかす。ただそれだけしているではないですか?

あと背徳心なんて似合わないにも程があるよ」


「なかなか独特な趣味なのは自覚はありますよ。でも、童心に帰って甘えたい。

とくにお兄さんに世話をしてもらって面倒をみてらうのも満たされるんですよねぇ」


――木櫛で大事な髪を一本一本を丁寧に通していてキレイにした後はマッサージ。

もちろんこれには拒否をしたが真奈は肩をほぐすだけなら問題ないですよ。と、無闇に触れることを懸念していることを読んだかのような言葉。お兄さんなら、どこも触ってもワタシは気にしませんよと満面の笑みで言った。

なぜ、恥ずかしげもなく危ないセリフを口走るんだと俺は嘆息した。

言葉の内容、花のような笑顔がまったく一致しないものだった。

拒絶をしたが粘り強く真奈は、お願いをされて結局いつものように根負けしてしまった。

唸りながらも承諾した俺は、真奈の気持ちよさそうに漏れた声を気にしないようにした。髪質をダメージを受けすぎないよう短めに終わった最初とは違いマッサージは真奈が満足するまで続けた。

ちなみに素人が下手にやるよりもプロやマッサージ機などでしたほうが効果は違うのでそちらの方を推奨する。と、ほとんどマッサージという技能を知らない俺が真奈にあとでそんなことを言っても先程していたことで説得力は皆無。

そして次に真奈だけの執事は終わらない。


「よーし!それじゃあ今度はお兄さん!次はワタシと一緒にセガサターンのガーディアンヒーローズしませんか」


「ガーディアンヒーローズ?

すまないが俺が生まれた時にはセガサターンが流行していたけど、ゲームができる適年の前だから。したこともなく持っていないのとガーディアンヒーローズも無いんだ」


「ふふっ、そんな事もあろうかと事前に注文しておきました」


目が離せないほど眩しく笑顔を放つ美少女さんの言葉を俺は理解するのに時間を要した。唖然となっていることに表情や雰囲気で感じているはずの真奈は顔を赤らめる。

ずっと見詰めているからなのかな。真奈はポニーテールの先をいじりはじめる。


「ち、注文を?えっ待ってくれ。待って欲しい、待って待って!つまり俺の家にセガサターンやソフトが届くということ理解でいいかな」


「はい!すぐに届きますので楽しみにしてください。フフっ、お兄さんとゲームするの久しぶりですねぇ」


「な、なぜ真奈の家ではなく俺の家に?

相談もなかったのだけど」


「絶対に気を遣われて断れるから独断で敢行しました。大丈夫です!金銭のことならワタシが全額もちろん払います。

これはお礼だと思って受け取ってください」


「そういわれてもなぁ……」


もう付き合えないと明確に告げた相手から施しをされるのは、どうしても心苦しいものがある。本来なら年上で社会人……ニートではあるけど俺が施してあげないとならない側なのにと悔やむ。

自分の甲斐性のなさに情けなく感じながら返答に困っていると呼びすずの軽やかな音がリビングを奏でた。


「どうやら届いたみたいですねぇ。急ぎ便にしましたので早いくて便利ですねぇ。

フフっ、そこでおとなしく待っていてねぇ!お兄さん。ゲーム楽しみだな」


指示された通り、しばらく待っていると真奈は箱を抱えて入ってきた。開封すれば彼女の言ったとおりの物が入っていた。

テレビに接続して、真奈と対戦ゲームを興じるのであった。およそ一時間ほど遊んでいらば年下の美少女から無償で一方的なプレゼントに、心にわだかまる迷いや疑いとうものが薄れて消える。その迷いが晴れたという定義の豁然かつぜん、とした悟りに支配されていく。そのことに気づいたのはゲームをやめた時であった。

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