第108話―目安箱―
わたしは壁に取り付けられた壁時計を見る。
短針は十七時と指していた。
「そろそろ頃合いですね。いきますよ葉黄」
「はい。どこまでもついていきます!」
椅子から立ち上がり向かった先は、ある物が設置している廊下。休み時間になっても
目立たたない場所を好まれる者たちさえ知っていても利用としないのは窓がつけいおらず湿っこい雰囲気なのと狭いからです。
そんな地下の通路みたいな廊下を愛くるしい葉黄を連れてきたのは箱を回収するため――。
「こんなこと言うのは不謹慎だと怒られるかもしれないけど、目安箱がなにを入っているのか楽しみでワクワクしています!」
「あはは、それ分かるよ葉黄。
わたしもどんな悩みを記入されているか心が踊っているんだよね」
「ウソッ!?比翼さんもそうなんですねぇ」
軽度な驚きをみせる彼女に笑みを浮かべる程度に、わたしは持ってきたカギで目安箱を開ける。
この目安箱というのは前々から引き継がれているもので我が校での需要は高めである。
直接では言えないことも顔を見れないならと
意見や要望、それらを記入しやすいように隣には用紙が置かれている。
ちなみに一年前ここで不満をわたしは書いたことがある。意見は通らなかったけど今になれば、いい思い出だ。
(目安箱、その歴史は長い。
これを取り入れたのは江戸時代1721年になりますね。
八大将軍である吉宗公の作品はよくサファイア姉にあたるペネロペおねえちゃんに一緒に観ていた。あまりこんなこと口には出来ないけど時代劇って、ところどころ歴史と間違ったりとある。たとえば吉宗公は倹約令などを敷いたことで庶民には嫌われたりされている。
そんな目安箱は
当時の効果はどれほどあったか?諸役人の非行を正して行政をより厳正とはかった。
そして目安、この定義では訴状のことですね。
――なかなかの量があったが全部と回収して用紙をまとめて生徒室に運んだ。
「ほう、今回はスターダストのような数じゃないか比翼書記よ」
「その仰々しいセリフなんとかしてくれませんかね?というか貴重な意見をスターダストなんて表現は無いよ」
「ほう貴様には、このワードセンスの素晴らしさが感じ取れないというのか。哀れ、実にあわれだよ比翼書記よ」
煽るように小馬鹿にしたようにする生徒会長を横目にして、わたしはエイちゃんが淹れてくれた冷たい麦茶を喉を潤す。うーん、この暑さだと癒されるよ。
「運んでくれて感謝しますよ葉黄」
「えへへ、大したことではないです。これも先輩のお願いですし、生徒会のお役目ですから」
うん、後輩は立派だ。わたしも含めてそうだけど変人の集まり場になっている生徒会メンバーで唯一の常識人。
「ゆっくりしていてください。
さて、早速だけどエイちゃんと九条さんにやってもらいたいことあります。目安箱で集まった意見をどれを採用するかの取捨選択と採用できるかの協力してもらいます」
「ワァー頼られた。うん、直々にお願いされたら断る訳にはいかないよね。任せてよヒヨちゃん」
また雑用されることに眉をひそめられると想定したけど、反応は弾けんばかりな笑みで快諾してくれたエイちゃん。
「承知しました。より善きするために微力ではありますが力になりましょう」
うやうやしくと頭を下げる九条玉葉さん。
二人から
「ま、待って待ってッ!
なぜ生徒会長であるのに放置するんだ?んっ、どうして頭を下げて頼まないんだ」
まさか対象にはずされているとは思っていなかったのか驚愕と不満が綯い交ぜられた顔の吉水は訴えかけてきた。
「そ、そうだね。忙しいから生徒会長わざわざ煩わせるわけにはいかないので」
「目が泳いでいるが……そういうことなら。ここはブレイブたちでボーダー的なミッションをやってもらおうか」
あまり納得していない様子であったが追求しても延々と続けるだけの不当な争いに発展なると思ったのか突っかからずに引っ込めてくれた吉水だった。
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