第73話―比翼公記(ひよこうき)―

ウンザリするような晴れやかな空。

見慣れた道と人、通学路をキラキラさせていた目は二年の年月どんよりとした風景。

ままならず憤っているとかではなく、ただ後ろ向きな考えを与えるのだ。


「そうしたら彼氏が手を握ってきたの」


「きゃぁぁーーっ!?大胆」


まったく見知らぬ女子生徒はなにが楽しいのか騒ぎながら仲良さそうに話をしている。


(フッ、こんなので大胆なんて言ってしまうんなんて笑いもの。

この程度で騒ぐなら高校生だった冬雅お姉ちゃんのエピソードをさぞ聞いた日には夜も眠れないことになるに違いない)


その仲良さげな女の子たちの会話を聞きながら一人さびしく通学。うんざりさせるのは、この疎外感と恋バナもそうですが本当に嫌気が差しているのは………。


(毎日、まいにち同じ道を歩いていくこと)


スクールライフは悪くありませんし気に入っていますよ。だが、それでも家と学校の往復するのが退屈すぎること。

スマホを弄りながら通学しようと脳内にひそんでいる悪魔がそう囁いてくるが衝突事故による起因なる恐れがあるので出来るはずない。

なので、通学は歩くだけになる。


(当初は風景でも楽しめたものですが、それも飽きてくる。見てきた散々の風景は退屈しこぎにもならない)


でも、もう少しで学校にたどり着ける。

熱中症でマスクをはずすべきと緩和するべきと推して叫ぶものはいて賛成するのですが、なかなか浸透していない。

マスクの集団の背を続くようにして門をくぐりうとすると見慣れた顔を発見しました。

げぇ!?そんな悲鳴や叫びそうになりながらも堪えて門を超えて右側にいる男性に近づく。


「なんだ?朝から何やら不満そうにしているではないか比翼書記よ」


「生徒会長が直々じきじきにゲートの前でみんなのために挨拶するなんて感激。

そんなこと置いて、おはようございます。

あと肩書きで呼ばないでくださいよ。

まるで権威をかざしているようで恥ずかしいんですから」


ややトゲがあるかなと言って反省する。

わたしと同い年である生徒会長は七三分けとしたマッシュヘアーと誰とも親しみに接してくれる男子。

生徒会長の名前は吉水管抄よしみずかんしょうと呼ぶ。


「はっはは!まったく相変わらず権威とは奇妙なことを言う。

こんなのは当然の義務で当たり前のことだ。

生徒会長といってもオレも彼ら彼女とは変わらない。一人の人間にすぎないからな。

おはようなのだ!元気がないぞ」


門をくぐっていく孤独そうな高校生が横切ろうとするの目にした吉水生徒会長は、その高い声でフランクに挨拶をする。

その孤独そうな高校生はビクッと驚きながら軽く驚きをみせながらも会釈して後者の中へと去っていく。


「比翼書記キミには伝えないとならないことがあるのだ。おはよう!

なにを言おうとしているか賢明なキミなら分かるはずだが調和の場を乱す訳にはいかぬから、後で話をする旨なのだ。おう、おはよう!

放課後はティータイムや帰宅などせずに生徒会へと赴いてもらうぞ。おはよう!

これは生徒会長の命令だ。おはよう」


校門をくぐりぬけていく生徒に挨拶を忘れずに掛けながら器用に一方的なことを言うのであった。

調和の場を乱す訳にはいかないというのは、わたしはよく生徒会長とは論争するからだ。

とはいえ、命令権を行使されたから従うしかないとはいかない。

そもそも生徒会は、そのほとんどが組織を実験的に学んでいくものなので立場上のヒエラルキーは存在しないといっていい。

で、あるからして生徒会長とはいっても上司と部下ではなく同僚にしか感じでいない。


「断ります」


「ははっ、おはよう……断るか。

その都度、反発してくるのは比翼書記のねじ曲がった性格から予想していた。

なら来なくていい。キミ抜きでも生徒会は平常に循環してゆける」


不敵な笑みを浮かべて腰に手を当てる吉水生徒会長。どうせ押してダメなら引いてみろと逆転の発想なんだろう。

命令を拒むなら、もう来なくていいと突き放すような言動してみせて訪れようとしている。


「そうさせてもらいます」


「おはよう!そこ、ながらスマホは禁止だぞ。

フッ、それで結構だよ比翼書記。他の生徒会メンバーはキミが来ること期待している。

その期待を裏切るのか?いや、キミはそんな事しない。するはずがない。

待っているぞ。キミの到着するのを」


なにかとケンカ発展していくというのに、

吉水生徒会長は来ることを疑わない眼差しを、そんな瞳を向けて力強く言うのだった。


「………来ませんからね」


我ながらツンデレみたいなことを捨て台詞として教室に向かおうと歩くのだった。

皆に期待していると言われても、そんなの真に受けるはずがない。皆という曖昧なことも。

皆という定義には一同全員ではない。全員ではなく多くの人である大衆、多数を指すようになった。

そして期待しているといっても皆というのは生徒会のメンバーのことだろうが

来たとしても大きな損害はあるはずがないし空気のような存在として認識されているに違いない。

わたしは生徒会には顔なんか出さずに帰ろう。

―――わたしは生徒会に来てしまった。


「キミなら来てくれることと信じていたよ比翼書記。みんなも歓迎してくれている」


わたしが来たことに執務机で書類を片付けていた生徒会長は、まるで長く引きこもっていた人が決心して外に出て来てくれたような歓喜をしていた。

ようするに、大げさ。


「それで肝心の皆は?わたしと昌榮しょうえいの二人しか居ないんだけど?

まさか貴方の辞書では一人というのを皆と載っているのですか。

だとしたら早急に修正するべきじゃないですか」


「ははっは、なにをいう。

いるではないか?あともう一人の存在が。

オレがいる」


自分を親指を向けて白い歯をみせる。

それをなんの恥ずかしいさも戸惑いもなく振る舞えることに呆れを通りこして感心さえ抱いてしまう。


「ちょっと黙ってくれませんか。

素晴らしいラノベのタイトルをそんなドヤ顔で決めて使うのを」


「なにをそんなに怒っているのか理解に苦しむが。まあ、ようするにだ。オレも含めて三人で、宝山ほうざん会計と二人で待っていたのだ。そして忘れてはいけないのは、ここにはいない後の二人もキミを信じていた」


真顔で、よくそんなことを言えるものだ。


「ポジティブすぎる、とんでも理論を。

それで昌榮、わたしはなにをすればいい」


「そうだね。まずは書類の作成をお願い。

詳細は机に置いているからね。相当か量だと思うけどヒヨちゃんなら出来るよ」


「任せてよ」


「オレを無視するだけ、やる気になってくれたか。よーし!フルスロットルで終わらせるぞ」


吉水生徒会長が、なにかを騒いでいるようでしたが忙しくなりそうなので聞かなかったことにしました。

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