第74話―比翼公記(ひよこうき)二巻―
翌日の放課後。また生徒会長に呼ばれてしまった。わざわざ行くことないと無視しようかと考えもしたが生徒会に所属する立場上、行かない訳にはいかなかった。
そして、わたしが入ってくるなり吉水生徒会長は書類に目を落としていた顔を上げて眉をひそめて不満をぶつけてきた。
聞き流そうとしたが限度はある。
「手を合わせて頼まれて断れない。それに必要だと判断したから、進めたんですよ」
まるで弁明みたいだなと思いながら、わたしは手振りで説明してみせた。
「ほう。そうか……必要だと独自に判断したと?比翼書記よ。キミだって立派な生徒会だ。
なのに相談や報告もなしで、その場で決めるというのは何様のつもりなんだ!」
なんとか笑みを作りながら落ち着かうとする吉水生徒会長ではあるが頬が引きつったり声が荒らげたりと顕著に顕わにしていて隠せていない。
「何様も一生徒。
最後の運動会でサプライズ告白をお願いされたんですよ。まだ余裕ありますし問題ないと。
「そんな堂々と言うものなのか。一周まわって清々しいよ。まったく……決めたからには我々も動くことになる。最善を尽くすが、
せめて一言あってもいいじゃないか?」
「はいはい、気をつけますよ」
こんなことで怒られるのは不満を抱いていた。それは態度にも表れて生徒会長の肩を震わせてキッと睨みつけることになった。
「な、なんだね!その傲岸不遜な態度はあぁぁぁあーーーッ!!いいかねぇ、一人の者が好き勝手に動いたら生徒会である我々も付き合わせないとならない。
もう通らせてしまった計画や約束を簡単には破れない。それ以上は振り回さないでもらいたい」
「うっ、反論する余地がない」
癇癪を起こした幼子のように感情的となっているようで問題点を突いていて鋭い。
言葉を失っている姿が滑稽であったのか分からないが愉快そうにしていた。
「はっはは!気持ちいいものだなオレを置いて真の生徒会長とか呼ばれているのに負かされている。どうして負かされているか教えてやろう。
ひとりのためは皆のため、みんなの為は一人のためなのだ。その信条としているからこそオレは優しくて頭がいいのだ」
「コ、コイツは……いつにも増して
だから順序を省いたのです」
「それだとオレがまるで無能みたいで信じていないじゃないか!」
「そうですよ」
「き、貴様ぁぁぁぁーーッ!?」
目を剥き出して憤激する生徒会長。
「やるんですか?」
お互い譲れず意見をぶつけた結果、無言で睨み合うのだった。こんなことしても時間や労力が浪費すること重々に分かりながらも退けない。この吉水だけには退くない。
「少しは頭を冷やしては?吉水さん、それに貴方もだ比翼さん」
生産性のない争いを繰り返しているのを間に入って止めたのは同じ生徒会の一員だった。
一本一本を金糸のように、ていねいに短く整えたブロンドヘアー、メガネ越しから海のように底が深さのある知的な眼差し。
まるでヨーロッパのモデルみたいな少年である
「九条……副会長よ。もしかしなくともオレも頭を冷やせと指摘するのか」
「そうです。
勇敢さが貴方の利点ではありますが、その特性から頭に血がのぼりやすいの傾向あります」
「ぐっ、であるか……」
信長かな?認めたくないながらも認めないとならず頷いて唸った言葉を。であるか、今の織田信長みたいに言ったのなら安易に使わないで欲しいものだ。
ざま見ろと心の中で叫んでみるが、次の標的をこちらにロックオンされた。あ、あれ。
「まぁ、概ねのことは分かります。比翼さんは、とても優秀で頭が切れますが。
その
ですが過信をしているように見えるんです。その抜群の能力に自らもコントロール出来ていないと見えるのです」
なにか否定しようとしたが言葉をなかった。
「……はい。たしかにその通りです」
これで一件落着ですねと微笑みながら九条玉葉は、コーヒーを啜るをコーヒー好きですね。
ゆっくりとした足取りで彼は席に戻り、足を組んで着席する。それも様には、なってはいるのですが気品があふれる存在感と足を組むということになんだかミスマッチな気がする。
ともあれ無駄な争いをしたことら理解しながらも納得しておらず一戦を交えるか考えたが、また繰り返すだけと諦めて席に着きます。
「それは、そうと吉水さん。
いくら比翼さんからお茶会を招待状が来ないからといって機嫌を損ねるのはどうかと思いますよ」
不意にそんなことを九条副会長は言った。
お茶会という話題をしていない。これはなにかの例えとかなんだろうか?
「どんだけ待っても誘ってこないんだよお茶会?…………すまない。
「フフ、比喩表現ではないよ。
言葉通りのお茶会だよ」
「そ、そうか。別にそんなことで目をつけたりとかしているのではなく一人で決めて振り回すなと叱責。
だから別段お茶会は無関係だな」
どう応えるべきかと手探りな状態に困りながら応えた生徒会長。わたしは、その九条玉葉を知っている。明治初期から戦前の昭和にかけて存在された特権的な地位の
何故そんな個人的なプライベート情報をわたしが知っているのかは。
(サファイア家とは、長く親密的な関係を築いているからパーティーで教えられたんですよね)
飛び抜けた富裕層の娘になったといえ、明日の食事もままならない苦しみや思い出は身に染みていて未だにブルジョワな環境は、なれない。
(仲のいい一家と付き合いあるだけで、個人的には親しいわけではないけど九条玉葉は完璧な振る舞いにみえて天然な言動をする)
「どうやら、また場違いなことを言ってしまったみたいだ。はっははは」
「あ、ああ……がはは。あっははは!」
また場違いなことをしたかと無駄に絵になるような笑顔を浮かべると高笑いをする。
その笑いを生徒会長は律儀に付き合う。
ここは進学校なんだから九条玉葉という名にあることに気づくだろう。玉葉という単語は、鎌倉時代の第一次史料の【
いやいや単に苗字が九条だから玉葉にした可能性もある。この資料は、九条かねさだ日誌だ。
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