第49話―かつての彼女はニヒル・アドミナリ5―
ここまで話すと喉が乾く。
これで三杯目となるコーヒーをひといきに
して喫茶店で冬雅との昔話を聞いた
「…まるで別人じゃん。マジそんな恋愛を近所でしていたのか!?なんかパパ活の臭いヤバいよ、そのとき私が中学生だし。
東洋お兄ちゃんそんなこと考えていたの引くよ」
この話を真奈にもしたことがあり、そのときは素敵なエピソードトークと褒めてくれたが花恋の言葉は辛辣ながら率直。
もし俺じゃなかった人物であるなら弱味を突かれて被害に巻き込まれていたかもしれない。
「そんなニヒル・アドミナリのわたしは、お兄ちゃんのおかげで明るくなったのです。
嫌な顔をせず話を聞いてくれるし見守ってけれて弁当も用意してくれたりと幸せでした。
かてて加えて渇望していた愛情も」
両手を頬を挟むようにして冬雅は言う。とはいえ語り口は独白みたいだったが。
「ふーん。それで東洋お兄ちゃんニヒル・アドミナリって、なんですか?」
ニヒル・アドミナリか…俺もよく知らないんだよなぁ。ときどき冬雅は普段あまり聞きなれないカタカナ語を使う傾向がある。
ニヒリストのような意味かな?素直に存じないと答えればいいのだが欠片ほどのプライドがそうさせなかった。
そんな小さな見栄を気にして知らないと言えずに、わずかな間が生じると冬雅は弾けんばかりな笑みを浮かべて言う。
「ニヒル・アドミラリというのはラテン語。
なにごとも動じず驚かないことを指します」
なかなか言えずにいる俺に冬雅が助け舟を出してくれた。我ながら器が小さないなあと自己嫌悪を抱きながらも彼女のラテン語に関する知識量に関して心から感服していた。
「へぇー、そうなんですか。さすが恋愛には権謀術数の冬雅さんですね」
「え、えーと?恋愛の権謀術数ですか……
どうして恋愛の権謀術数なのだろうかと俺は疑問を持った。
「すべて恋愛に直結させようとイメージ強いからですね。以前そのニヒル…なんとやらで東洋お兄ちゃんに、いやらしいことしていたから」
「えぇッ、そんな事していないよ。ですよねぇ!お兄ちゃん」
していないと答えようとしたが脳裏によぎったのは以前に冬雅が後ろからハグを仕掛けたり水着で定期的に入浴しようと発言したことを思い出した。
果たしてこれは違うといるのだろうか?
「……」
「お、お兄ちゃん!?どうして目を逸らしているのですか?これ、またアレですよねぇ。
わたし変態と叩かれるパターンですよねぇ!」
そうした流れに察した冬雅は泣きだしそうな声音をして悲鳴のように叫んだ。ちなむに鳴き声をしているが涙目にも目頭も変化はない。
ふむ、冬雅よ落ち着こう。
ここは喫茶店であり大声で叫んだりするような場ではないのだから。
「あー、うん、冬雅さん落ち着いてください。なにも叩こうとまでしていないです。
ですけど男女の距離感とか必要なのですよ。
とくに恋人になってからといっても」
そこで強い口調でいた花恋であったが言いすぎたことに反省して
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