第38話―ギャル冬雅の二日目―

しばしば型破りなこと冬雅はする。ギャルの格好はやめるはず。彼女が高校生の頃はキャラやサンタなど枚挙にいとまがないほど

演じてはいた。

それも翌日その翌々日よくよくじつには元に戻る傾向しばしば終わりが迎える。

なのだけど翌日もギャル冬雅でした。


「昨日はトキメキだったけど。

やっぱりそれとこれは別ことで。お兄ちゃんをドキマギさせようと継続しまーす!」


玄関ドアを開けて開口一番(ベランダの逢瀬を除いて)にそう言い放ったのだった。

どうやらギャル冬雅まだ続けるようです。


「さ、左様ですか……」


歓喜するのも嘆くのも違うと感じた俺は、どう反応すればいいか分からず困ったときはよくする苦笑で対応するのであった。

冬雅を招き入れて二時間後に彼女たちがやって来た。玄関に行こうと立ち上がるとギャルになりきって寛いでいた冬雅も立つ。

ふむ、絶対にややこしくなるパターン。けど言って納得するはずがないので諦めた。


「ようやく気まずい沈黙が終わりを迎えましたよ。兄と……隣は峰島冬雅さんの親戚かなにかでしょうか?」


バラエティであっても徹頭徹尾と慌てることなく落ち着いた素振りを見せる現役アイドル猫塚さんは途中から態度が変わった。

甘えるような声音から責めるような声音に。


「変態いい加減にしなよ。また新しい女の子をはべらせているなんて真奈さまに報告させてもらうから」


猫塚の右側に並んで立つのは香音かのん。平常運転の攻撃力、されど二人から向けられる視線は軽蔑とも恨みなどの類が込められており今、現在この状況が怖いです!


「えへへ、わたしだよ。峰島冬雅の親戚じゃなくて本人。完璧なギャルのクオリティに見分けがつかなかったようだねぇ」


腰に手を当てて誇らしげに自慢げな態度をとったギャル冬雅。

で猫塚や香音はドン引きするかと思いきや盛大なため息をこぼした。


「また兄を攻略していたのですね。

でも、今日は私のため時間を過ごしてくださると兄の心は叫んでいます。

ですので不承不承ではありますがアイドルとしてサービスしないとなりません」


ふむ、心の叫びやアイドルのサービスという凄まじいワードを敢えて無視するとしても猫塚さんそんな発言はよくないかと。

せっかく時間を割って来てくれたから存分に遊びたいのは気持ちを汲むけど、その偽りの発言は経験上まともなこと起きないんだよね。別名それをフラグという。…違う。


「お、お兄ちゃんとそんな約束を契っていたなんて……わたしも今から契ります!

ギャル冬雅はアイドルを志すのでサービス精神でイチャイチャします」


なにかあれば地雷となり刺激された冬雅は滅茶苦茶な理屈を宣った。契りって重たくありませんかね。

もう心の中でもツッコミさばき切れないほど情報量が多すぎる。


「まさか私が見破れなかったとは。

変態も同情するよ。本物の変態がまた変態な事しでかすんだから」


元は冬雅と真奈の同級生であった女子大生の香音は寄り添うような声音。にこやかに優しく微笑んで言った。

香音…気持ちは嬉しいが変態が多すぎるよ。


「あはは、そうだね」


応えに窮したら、とりあえず苦笑すればいい。あとは簡単だ。いや簡単じゃないから適切なこと分からないから苦笑しているんですよと俺は心の孤独なノリツッコミをした。


「も、もう周囲には変態だって言われ続けているので慣れていますけど……そんなに変態と罵られたら、いくら鉄よりも硬い強固な精神でも傷つくことはありますよ」


シュンと落ち込むギャル冬雅。

その陽気を塊のような衣装と格好で落ち込むと俺たちまで気分が暗くなってくる。


「ちょっと!?ほら冬雅えらい、えらーい。落ち込まないでよ。女の子は少し変態の方がモテるらしいから」


「本当ですか!?えっへへ、確かに今に考えればそうかも。

お兄ちゃんに好きだと昨日からイチャイチャさせたのも変態だったから、その気にさせること出来たわけですし」


先程まで暗さで覆っていた伏せていた顔。励まされて今は喜色満面と上げて凄まじい言葉を言っていた。

今日は失言デー(そんな言葉は無い)かなにかかなと熟考する。すると香音を近くに覆われる周辺の空気が一気に下がった気がした。

つまり怒っていらっしゃる!?


「へぇー冬雅それ詳しく聞かせて欲しいなあ。昨日なにがあったのか?ロリコン野郎となにをしていたかをね」


香音は口元だけしか微笑んでいない、目は笑わずに吟味するように窺って見るそれは……

その怖い顔はアルカイックスマイル



「あっ、それ自分も気になります!」


興味津々きょうみしんしんとした振る舞いをする猫塚さんであるが完全に笑っているのに楽しんでいないのが見て取れて冬雅は

笑顔を作って後ろに下がっていく。


「え、えぇーと。その、なんと言えばいいのかな。えっへへ」


誤魔化しい笑いをしても攻撃の姿勢は緩めず詰問は続いたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る