第16話―警察マナヅメ〜戦うマナ女子〜―

偶然にも香音と田中くんを会った。

このまま参拝する流れとなったが香音は決して認めないだろうが真奈を尾行した可能性は高いような気がした。

さて鳥居をくぐり抜けて境内けいだいへ足を踏み込む。手水舎ちょうずやで手を清めてから真奈が手を握ってきた。

いつも握っているとはいえ握られる瞬間だけは慣れそうにない。

年甲斐もなくドキドキして止まない。

そして俺たちは神がまつられる建物へと近づく。


「夢を見ているみたい…お正月にお兄さんと手を繋いで境内を歩くの」


繋がっている手をブランコのように前後にと揺らすように動かす真奈の欣喜雀躍きんきじゃくやくが顕著にして伝わる。


「それは良かった。でも去年も参拝していたじゃないか」


「ううん。去年との距離感とか細かい変化はあるよ。ワタシここまでお兄さんを大好きだって素直になれなかったもの」


「真奈…」


浄化されていくよう心に暖かく優しい感情が広がっていく。


「ゴホン、コホンコホンッ!」


自分の存在を忘れないでもらおうと言わんばかりな咳払いをする香音。

夢心地から現実にと戻る。残念な気持ちはあったが、このまま続けていたら真奈に変な期待をさせてしまう軽率な選択するところだった。俺はあくまで好意を持っている真奈を

諦めるまで大人の対応しないとならない。

そう距離間をしっかりと保って近すぎずに見守るように。


「あの羽柴さん。聖女いつに増して太陽が燦々さんさんに笑顔を振りまくの初めて見ました。聖女とイチャイチャしているの不快で極まりないのですが、山脇さんの前ではあんな幸せそうな顔するの……悲しい」


後ろに歩いていた田中兼三郎くんは隣に歩いていた香音に声を落として言う。されど聞こえているんだよね。出来ればもう少し落としてほしいものだ。


「そんなの見れば分かるわよ。

でも、あの中に割り込めない雰囲気だし。おとなしく眺めるしかない」


「クッ!こんな…見ているしかないなんて」


恐らく二人からねたみと怒りの眼差しを向けられているのだろう。そう意識すると視線が刺されるといった錯覚を感じる。

話をしていたら見えてくるのは拝殿はいでん。ひしめく列がどこまでも続いているようで、そこに並ぶのは辟易する。

目的がここなので並ばない選択肢はなく並ぶことにした。しかし長い時間をここで浪費する苦痛は無かった。真奈たちと話をしていたら時間が経過、あっという間に自分たちにと回る。拝殿の入口となる階段にと上がる。

建物の上には大きな縄を結んだ注連縄しめなわがある。これには正月には神を迎える神聖なエリアを示されるもの。神様がここへ入る玄関での神聖な飾り道具と扱われる。

手順とおりに手を叩き合わせるて目を瞑る。


「「「「………」」」」


まつわれる神にお願いするのは。


(真奈が幸せでありますように)


辛いことが待っているだろう未来。冬雅と付き合うことになれば真奈は、どれだけ悲痛になるのか想像するだけでも恐ろしい。

なのでせめて真奈には幸せを願わずにはいられない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る