第41話

 ものすごく危険ではあるが、宇宙塵の嵐のなかを、深海宇宙の亀みたいにノロノロ進みつづけるわけにもゆくまい。追手の船は最新鋭だ。このままでは捕まるのも時間の問題だ。マリーの感をすっかり信じて、なにかが起こるのを待ってみるしかない。


 鼓動が高鳴る。動悸が強く打つ。


 怒り狂う宇宙塵の真っ只なかに碇泊するなんて、これが最初で最後にしたい。


 各機能の出力を次々と落としてゆく。


 ぼくの指先がふるえている。


 ふるえを止めるべく左手でもって右手首をおさえるがそれでも細かくふるえてしまう。


 思いきって強く押す。


 ふれるとパネルが消灯する。暗転する。


 操縦室がしだいに暗んでゆく。


 マクシムの全機能がしずかに着実にがまどろんでゆくのが手にとるようにハッキリわかる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る