第38話

 しばらくぼくの瞳をじっとのぞいていたが、マリーは思いだしたように遠くのほうを見る。ちからなく頸をふる。


「あなたは優れた操縦士なんだろうけど、やはりなにもわかってないわ。なにも」


 ムッとする。まるで褒め殺しだ。ぼくは操縦士としての尊厳をひどく傷つけれた気分になる。


 中傷には馴れたけど、マリーのコトバは別格だ。なにも知らない凡人とはわけがちがう。あの公人の銀河政府を敵に回してきた革命家なのだ。


 胸がざわめきむしゃくしゃするが、マリーの真摯な横顔をながめるうちに、そう、ぼくにも誇りとよべるモノがあったのだと、いまさらながら多面的なじぶんという存在に気づく。


 するとなぜだか嬉しくなってくる。ぼくのそばで、ぼくを見つめる人間がいる。そう思うと、胸に曇るむしゃくしゃをかき消してやりたくなる。靄の先にあるほんとうのぼくを見てほしい。そう強く想えてくる。

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