第38話
しばらくぼくの瞳をじっとのぞいていたが、マリーは思いだしたように遠くのほうを見る。ちからなく頸をふる。
「あなたは優れた操縦士なんだろうけど、やはりなにもわかってないわ。なにも」
ムッとする。まるで褒め殺しだ。ぼくは操縦士としての尊厳をひどく傷つけれた気分になる。
中傷には馴れたけど、マリーのコトバは別格だ。なにも知らない凡人とはわけがちがう。あの公人の銀河政府を敵に回してきた革命家なのだ。
胸がざわめきむしゃくしゃするが、マリーの真摯な横顔をながめるうちに、そう、ぼくにも誇りとよべるモノがあったのだと、いまさらながら多面的なじぶんという存在に気づく。
するとなぜだか嬉しくなってくる。ぼくのそばで、ぼくを見つめる人間がいる。そう思うと、胸に曇るむしゃくしゃをかき消してやりたくなる。靄の先にあるほんとうのぼくを見てほしい。そう強く想えてくる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます