第24話

 装備の補強はかんたんだが、修理にはしばらく時間がかかるという。たしかにゴン爺の話すとおり、マクシムはぼくの恋人だった。しかも初恋だ。やさしくて強くて、ぼくは彼女にいくたびたすけられ励まされたことかわからない。


 ぼくは来る日も来る日も淫蕩な光のこぼれる原色の宿場街から第9港湾をたずね、傷ついたマクシムの船体をそっとなでては話しかけた。ぼくが心を開けるのは、やはり彼女だけだった。長い長い旅のちくいちを想いだしては語りあった。


 ある惑星ではプラズマの垂れなびく蒼い清冽なオーロラをつぶさに観測したことがあった。お世辞にも知的とはよべない明るい緑色のちいさな奇妙な生命体を目撃したこともあった。またある星雲では、航路の算定を誤って超新星爆発に危うく巻きこまれそうになったこともあったし、暗黒星のシュヴァルツシルト圏内へ危うく突入しそうになったこともあった。あげれば枚挙にいとまがない。思いだすたび冷や汗がふきだす。操縦士がおしなべて短命なわけだ。ぼくだって生きているのが不思議なくらいだ。見えざる意思のみちびきに翻弄されて、イタズラに生かされつづけてきたようにも思えてくる。

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