第9話

 同情するつもりはないが、それにつけても公人による凡人の粛清は看過できない。比較的に公人の近くへ位置していたぼくですら、凡人を粛清することでいったい彼らがなにを結実させようとしているのか、まったくもって想像がつかない。かいもく見当つかないのだ。


 銀河史上かつてないほどの高い高い知能をもつ公人のことだから、虐殺すら必要悪とわりきって、ぼくなどには壱万年かけてもとうてい理解できないであろう深遠で高尚な計画を暗黙裏にすすめているのではあるまいかと訝ってもみたくなるが、彼女は嗤う。


「あなたって単純ね」


マリーのくちもとが歪むから、ぼくはおもしろくない。


「単純でわるかったな」


「わるくはないわ」


マリーはそうこたえて冷たく笑う。


「ただ生きることにのみ汲々してるあなたが不憫なの」


「ぼくにはきみが不憫だね。誇りのために死ねるのかい? きみの両親、それを望んでると思うかい?」


 ぼくが訊く。マリーはこたえない。だまって瞼をとじる。

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