第4話

 幸いぼくは2等宇宙船舶操縦士のライセンスをもっている。身寄りがないがために幼少時に余剰凡人処理施設に収容されて処分の順番を待っているときに行われる適性検査にみごと通過して強制的に訓練所へ徴集された。すんでのところで処理をまぬがれたわけだ。


 中央ステーションの軍事局でもって宇宙船舶操縦士として養成されて、現在はこの手形でもって星間を壱光年単位で航行している。


 高速度で走行すると質量が増大して筋肉繊維にちぎれるような激痛がはしる。骨格におびただしい負担がかかる。相対論の効果によって時間のながれだって極端にゆるやかになるために老化もひどく遅れるのだが、なにせぼくはまだじゅうにぶんに若いから重い労働をことさら渋ってみる理由なんてない。天涯の孤児であるぼくには護るべき家族があるわけでなし、一〇年ぶりに故郷である銀河辺境のステーションへもどったら息子も娘もじぶんより遥かに老けていた、なんていう同業者がよく出くわす驚愕の現象をいまのところまのあたりせずにすんでいるのだ。

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