第3話
公人たちは、ぼくたちを蔑称して凡人とよぶ。たしかにみずから進化と称する脳みそ10㎏も詰まった公人たちの知能にくらべれば、ぼくたちなんてみみずの脳みそにも等しい。
ここで言う知能とは電子デバイス、脳神経系に移植されるあとづけ知識の集積回路だ。その情報量たるやマイクロチップ数百兆枚ぶんにも及ぶ。広大無辺の宇宙における森羅万象のあまねくを知るという信じがたい頭脳なのだ。
たしかに知識量は豊富だ。圧倒的だ。しかしあまりに豊富であるゆえに、必要な情報を瞬時には引きだせない。時間が要る。膨大な情報を伝達するためのパイプ、肝心の脳内神経繊維の太さはぼくたち凡人とほとんどおなじなのだ。
つまり脳の容積が大きいぶん、神経回路も長くなる。しかしいっぺんに伝達可能な情報量は変わらない。とうぜんのごとく思考の伝達速度は遅れる。ぼくたち凡人の知性がまさる所以だ。機転をきかせて行動する。それがぼくたち凡人の授かる個性なのだ。宇宙船舶の操縦には知能ではなくて知性が要る。つまり臨機応変に対応できる柔軟性が要るわけだ。
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