第42話
「降参です。私には、わかりませんでした。エミリーさん、どうやったか教えていただけませんか?」
「ええ、いいわよ。それじゃあ、エルシー、ほかの紙を見て」
「ほかの紙ですか……」
私は伏せてあるほかの紙をひっくり返してみた。
すると……。
「えぇ!? 全部、星のマークが書かれているじゃないですか! これって、ズルですよ!」
「ズルじゃないわ。あなたが勝手に、前提を勘違いしただけよ。だから、星のマークを選んだことを、あなたは不思議に思ったの」
「ええ、まあ、確かに、星のマークが書かれた紙は、一枚しかないと思っていましたけれど……」
「クッキーの件についても、同じことが言えるわ。私たちは何か、間違った観察をして、前提を間違えている。だから、不思議に感じるのよ。まあ、最初に言ったようにクッキーの件には、このやり方は適応できないけれどね」
「あぁ……、私たちを含め、ほかの人たちのクッキーからは、毒が検出されていないからですね?」
「ええ、そうよ。でも、誤った観察をして、前提を勘違いしているのは確かよ」
「それで……、どう勘違いしているんですか? 正しい前提とは、いったいどんなものなんですか?」
「さあ、どんなものかは、わからないわね。それを考えるのが、憲兵の仕事だと私は理解しているわ」
「確かに、ごもっともですね……」
*
(※ナタリー視点)
翌週になり、また今夜、お父様たちがお店に来ることになった。
私はいつものように、サクラにお金を渡し、店で待機していた。
本店から応援の人員も呼んでいるので、準備万端である。
「おかしいわね……」
来ると言っていた時間になっても、お父様たちは店に現れなかった。
また何か、用事ができたのかしら?
そんなことを考えていたけれど、私はあることに気付いた。
あ、このままだと、まずいわ……。
サクラを呼んでいるけれど、当然ながら、彼らもずっといるわけではない。
食べ終われば、お店を出て行く。
一時間くらいか、どんなに長くても二時間くらいで帰ってしまう。
しかし、二時間たってもまだ、お店の営業時間は一時間程ある。
つまり、その時間帯に来られたら、非常にまずい。
お客さんが誰もいない状態になるので、お父様たちに、お店が寂れていると思われてしまう。
もちろん、サクラたちに長居してもらうわけにはいかない。
いつまでも居座るなんてお店に迷惑だし、そもそも、ほかの従業員にも怪しまれてしまう。
そして、サクラを呼んでから、二時間が経過した。
いつもなら、サクラを呼んでから、すぐ後にお父様たちが来ていたから、何の問題もなかった。
お店が賑やかな様子を、見せることができた。
でも、今来られるとまずい。
お客様が誰もいない。
こんなところを見られたら、お店の経営状況が悪いことがバレてしまう。
私は、お父様たちが来ないことを祈っていた……。
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