第38話
「じゃあ、もう一度、一枚取ってみて」
私が紙を透かした疑惑が持ち上がったので、もう一度紙を戻し、シャッフルした。
ちなみにさっきは透かそうと思っただけで、まだ透かしていなかった。
まだ未遂だったのである。
「それじゃあ、選びますよ……」
私は紙に手を伸ばした。
そして、殿下の顔を伺ってみた。
「私の表情から判断するのは、ダメよ」
「わかってますよ……」
うーん、バレたか……。
「それに、シャッフルしたから私にも、どれがどれか、もうわからないわ。私の表情から判断するのは無理よ」
「あ、確かにそうですね……」
うーん、馬鹿か、私は……。
とりあえず、勘で選ぼう。
私は、横に並んだ十枚の紙を眺めた。
こういう時、なんとなく端っこは取りたくない気持ちになる。
あと、真ん中もなんとなく避けたい。
「よし、これにします!」
私は紙を一枚選んだ。
「え!? どうしてなの!? すごいですね!」
私が選んだ紙には、星のマークが書かれていた。
*
(※ナタリー視点)
本当に、困ったわ……。
どうしたらいいの?
ただでさえ、赤字を何とかしなければいけない状態なのに、お父様たちが毎週お店に来るなんて……。
その度に、大勢のサクラを雇って、お店が繁盛しているように見せかけないといけない。
当然、かなりの出費が必要だ。
今は赤字を何とかしたいのに、どうしてこんなに問題ばかり起きるの?
……いや、ちょっと待って。
私は、早とちりしていた。
まだ、お父様たちに確かめていないことがあった。
その返答次第では、まだ何とかなるかもしれない。
「ねえ、お父様、お店に来るのは、お昼? それとも、夜? 私としては、夜の方が断然おすすめよ」
お昼なら、サクラを用意する必要はない。
お願いだから、昼だと言って。
はたして、お父様の返答は……。
「そうだな……。お昼に行きたい──」
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