第26話
次に到着した町は、さらに王宮から離れたところだ。
かなり王宮から離れたけれど、それでもまだ、殿下を捜している兵はちらほらと見かける。
しかし、今のところ変装を怪しまれたことはほとんどない。
この前はトラブルに巻き込まれて、しかたなく殿下が男の部分をさらけ出したけれど、あんなことは滅多にないはずである。
たぶん、今回はトラブルなんてないはず……。
*
(※ナタリー視点)
トラブルだらけだわ……。
なんで次々に私を悩ませるトラブルが、目の前に現れるのよ。
もう、うんざり!
どうなっても知らない!
全員、クビよ!
そう思っていたけれど、ぎりぎりのところで踏み止まった。
やはり、クビにするというのはまずい。
彼らがここまでするということは、本当に現場の人数が足りていないのだろう。
そこでさらに人員を減らしても、特になるようなことは何もない。
私は、大きくため息をついた。
「わかったわ。クビにした人たちは、元に戻してあげる」
私の言葉を聞いて、従業員たちは喜びの声をあげた。
「さあ、仕事に戻って。少しでも売り上げを伸ばすのよ」
あぁ、これでまた、支払う給料が増えてしまう。
売り上げが少なくなってきているのに、これでは利益が増えることも、しばらくは見込めそうにない。
「ただいま……」
私は家に帰ってきた。
今日は疲れた。
まさかボイコットをされそうになるなんて思わなかった。
とりあえずは何とかなったけれど、すべての問題が解決したわけではない。
むしろ、問題はまだ山積みだ。
もともとお姉さまが経営していたお店は、だんだんと売り上げが少なくなってきているけれど、まだ何とかなりそうだ。
問題は、二号店の方である。
新しい設備にお金がかかったうえに、土地代や建設費用なども、かなりのお金を支払った。
もちろん、すぐにペイできると思ってのことだったのだけれど、これがうまくいかなかった。
立地が悪いこともあり、ほとんど客が来ない。
今では、売り上げより土地代や人件費のなどの方が高いくらいだ。
何とかしなければならない。
「ナタリー、帰ってきたか」
「ただいま、お父様」
「実は今日、私たち、ある場所に行ってきたんだ。どこだと思う?」
「え……、どこなの? あ、もしかして、新しくできた美術館?」
「いや、ナタリーが新しく経営し始めたお店に行ってきたんだ」
「え……」
私は言葉が続かなかった。
そんな……、まさかお父様たちが、私の経営しているお店に行くなんて思っていなかった。
私が経営しているのは、大衆料理店だ。
お父様たちはそんなところへは行かないと思って、油断していた。
新しく経営し始めた方ということは、二号店の方だ。
まずい……、二号店は、ほとんど客がいない。
一日を通しても、十人いればいい方だ。
そんな寂れた店の様子を、お父様たちに見られてしまったなんて……。
もしかして、店の経営がうまくいっていないことを、見破られてしまったの?
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