終末の遊び

魚里蹴友

第一部 終末の世界

 遂に戦争が終わりました。世界はほぼ滅んだと言っていいでしょう。分かりやすく言うと、何処を向いても荒野です。ちょっと前まではもっと酷い様子でした。どんな様子だったかは言いませんが、とにかく酷い様子でした。

 世界にはボクだけが残りました。何故そう言えるかというと、だって人間があの核戦争の中で生き残れるはずが無いからです。それではどうしてボクは生きているのか読者は不思議に思うでしょう。

 実はボクは不死なのです。病気も怪我もしません。しても治ります。恐らく、読者の頭の中には多くの疑問が浮かんだでしょう。しかし、何故かという質問は受けません。今回は結果だけを見れば良いのです。そう成った原因は絶対に必要なものではないのです。

 そうして一人だけ生き残ったボクは退屈していました。終末以前の趣味は食事だったのですが、今は食べ物がありません。ずっと腹が減ったままなので、最早、空腹が何かも分からなくなりました。そして、何か食べようという気持ちも消滅しました。

 そのようにしてボクは少しずつ苦しみを得ます。しかも、死ぬことは出来ないのです。




 ボクの生活を紹介しましょう。

 まず、朝が来ます。ボクは起き上がって伸びをし、次に大きな欠伸をします。そして、立って朝日を見ます。オゾンを破壊する兵器も使われたため、最も危険な状態でボクの体に日光が当たります。しかしボクには問題ありません。それから、北半球なので太陽が西に動き、そして地平線に沈みます。その間、ボクは寝っ転がったり立ち上がったりしています。夜は真っ暗で何も見えないので眠ります。

 これだけです。さっきも言った通りすることが無いので紹介しようにも話すことが無いのです。

 この生活で何より辛いことを一つ上げるとすると、良いアイデアを思いついても他に人間が居ない、つまり相手が居ないのでそれが意味を持たないということです。どんなに良い物語や曲も誰にも伝わらないのです。しかし無駄だと分かっていても時間があるので考えてしまい、その度に悲しくなります。ミステリーもラブストーリーも一人で空想するには寂しいもので、バカらしいものです。

 もうこの話は止めます。




 ボクは人間なのでしょうか。不死であるなんて、人間とは言えないのかもしれません。人間か、人間ではないものか、果たしてどちらなのでしょうか。結局、ボクしか居ない世界なのでどちらでも大して意味はありません。しかしそういう世界だというのに、人間でありたいと強く思うのです。

 ボクはいったい何者なのでしょうか。

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