第46話 セシリア皇女からの手紙
テラは、セシリアと別れた後、直ぐに邸へ戻り渡された手紙を開いた。魔法の便箋からは、文字が浮き出るとともにセシリアの凛とした声が響いた。
親愛なるテラへ
テラ、あなた自身は気付いていないのかもしれないけれど、あなたには特別な力がある。私達が持つ一般的な魔法力でない特別なもの。
それは、すべての生命にエネルギーを分け与えることが出来る力ではないかしら。
何故かというと、シンリからテラが戻った後に私の元を訪ねてくれたことがあったわよね。その時には父の変化に伴い既に庭園は色を失いかけていた。
でも、あなたと庭園を歩いたあと。花も木も元気を取り戻していたの。驚いたけど、私の中にはやはりという思いがしていたわ。
テラに初めて会った頃から、テラには特別な何かがあるように感じていたもの。
庭園は、その後再び災厄を報せるように無残な有り様になってしまったのだけど。
父である皇帝は、推測なのだけどテラの持つ力に嫉妬しているの。そして、恐れている。
だから、あなたを排除しようとしている。
兄のデレク皇太子に対しても信じられないみたい。すべての面において優れている兄が、あなたと手を結び自分の皇帝という地位を奪うのではないかと。
恐れや猜疑心に心奪われた父は、最早や以前の厳格だけど心の底は優しい父ではないわ。まるで別人のよう。娘であっても父が恐ろしい。
今の父は何をするか分からない。
だから、お願いよテラ。今は自分の安全だけを考えて。屋敷で静かに暮らしていて。せめて兄が都に戻るまではね。
そして、この問題はあなただけのものではなく、キリア伯爵家全体のことだと心に刻んでいて欲しい。
父はあなたを排除するため、キリア伯爵家そのものを消し去ろうとしているのかもしれない。
あなたのご家族は、あなたを思うからこそ伯爵家の危機をあなたには内緒にしていることでしょう。
それなのに、私の一存で知らせてよいのか。迷ったわ。
でも、やはりテラ、あなたも知っておくべきだと思ったの。
きっと、知っておいた方が安全でいられる気がするから。
あなた自身を守ることが伯爵家を守ることにつながる。
今は会えないけど、再会できる日が訪れることを心の底から願っているわ。
追伸
今日は私に会いに来てくれたのに追い返す形になってごめんなさい。
皇帝の網に引っかかってはいけないから返信はいらないわ。
テラの心の友であるセシリアより愛をこめて。
「セシリア様……」
堪えきれず嗚咽しながらもテラは、覚悟を決めた。
家族に自身の秘密を打ち明けようと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます