第2話 セシリア皇女はシリウス最大のライバル
ステンドグラスの窓から漏れる光が長身のシリウスを照らしていた。
すらりと伸びた足、整った顔立ちの額の家紋からは黄金の光が放たれ同色の髪をさらに美しく引き立てていた。
だが、その美しさと裏腹に表情には、心配と焦りが現れていた。
「テラは何処へ行ったんだ。僕の保護魔法も受けずに、」
宮殿内であるにもかかわらず額に汗を滲ませ慌てて妹を探す様子は、よく見かけられる光景であり、完璧と称されるシリウスの唯一の弱点といえるものだった。
女神像の彫刻を施した太い柱の向こうから不意に若い女性の声がした。
「ふふふ、相変わらずのシスコンぶりですわね」
その声の主はこの国の第3皇女であるセシリアで、その背後からテラが顔を覗かせ呆たように言った。
「お兄様ったら、心配しすぎです。私もあとひと月もすれば15歳になるのですよ」
「いや、お前はとてつもなく可愛いから危ないんだよ。隙があればいつ誰に攫われてもおかしくはないのだから気をつけなくては」
「もう、お兄様ったら」と、テラが顔を赤くした。
「はあー。本当、ついていけないわ。確かにテラは、とても可愛いのだけどね」
「別にセシリア様についてきて欲しいなどと思ってはおりませんが」
その言葉に反応したのは、セシリア皇女ではなかった。
「お兄様、私の最も大切な信頼すべきセシリア様になんてことを」
「いいのよテラ、シリウス様は私とテラが仲が良いことに嫉妬されてますのよ」と、セシリアは、勝ち誇った顔をした。
「な、な、テラは僕のれっきとした妹なんです。セシリア様とは違います。」
「お兄様、セシリア様に失礼なことを言わないでください。セシリア様は皇女様というお立場であるだけでなく、魔法力の無い私のたった一人の心からの友人でもありますのよ」と、怒ったテラの瞳は潤んでいた。
今にも泣きだしそうなテラにシリウスは、一瞬動揺を見せ言葉を掛けようとしたが、直ぐに口を固く結んだ。
そして、セシリア皇女へ頭を下げ礼の姿勢を取った。
「申し訳ありません。本当はセシリア様には感謝しているのです。それなのに、つい、」
「ふふ、それほど真面目に謝らないでくださいませ。私とシリウス様はテラを愛おしく思うお互いに良きライバルなのですから。」と言うと、セシリアはテラに顔を向け
「さあ、テラも笑って」と微笑んだ。
その聡明な笑顔の美しさについ見惚れながらテラは心の中で呟いた。
やはり、セシリア様はお茶目でありながらも優しさと気高さを兼ね備えた信頼すべき最高のお方だと。
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