俺は何よりも愛する妹を優先するために、様々な事態を想定してソッコーで家へ帰る
仲仁へび(旧:離久)
第1話
俺は騎士だ。
国で一番の騎士として、有名だ。
そんな俺には血のつながらない妹がいる。
めちゃくちゃかわいい妹が。
強面な俺とはうってちがって、すごく可愛いんだぞ。
美人だし、愛嬌がある。
美点はそれだけじゃない。
俺の事をいつも慕ってくれるし、怪我をしたら心配してくれる。
ご飯はうまいし、お風呂はちょうどいい時間にわかしてくれるし、掃除は完璧。
もう妹さえいれば、彼女なんていらない。
そう思えるくらい、完璧。
だから俺は、国を離れて騎士として任務に励んでいる時間が辛い!
そんな事をしているくらいなら、家にいて妹と過ごしたいのだ(お給料をもらわねばならないから、しないけど)。
任務中に我慢しきれなくて、妹の写真の入ったペンダントをなんど眺め出した事か。
その日も、その任務についてから300回目のペンダントを眺めた所だった。
やってきた部下が、任務の終了を告げてきた。
「例の盗賊はすべて捕縛しました」
「そうか、よくやった。これで任務は終了だな」
「はい、あとは報告にまとめるだけです」
「うむ! それなら俺がいなくてもできるな!」
「はぁ、まあ。そうですけど」
ご苦労!
任務が終わった後、やる事は一つだ。
速攻で故郷にいる妹の元へ帰る!
そのために、一年前には竜を手なずけた。
それからは、大きく時間を短縮できるようになったから便利になったよな。
俺は、はなれた所にいる竜の元へ駆け足だ。
「じゃ、あとはよろしく」「あっ、待ってください隊長!」
部下が何か言っているけど、聞かん。
俺は竜に指示を出して、上空を切り裂くように故郷へまっしぐらした。
その過程で、たまに出会ったはぐれ竜が攻撃してくる事があるけど、こんな時の為に自動迎撃装置を作っておいてよかった。
知り合いの開発班に頼み込んだ買いがあったな。
小さい鉄球を周辺にばらまくぞ。
するとそいつらは、自分で浮かんで自動的に敵を攻撃し始めた。
ドーン。
ドォォーン。
まっかな炎の花が空中にいくつも咲いた。
よし、今のうちに通り抜けよう。
けれど、なんでか知らないけれど、そういう時に色々な邪魔が入るんだよな。
くっ、俺は早く家に帰って妹を溺愛したいだけなのに!
数年前に倒したはずの魔導士が空に浮かんで待ち構えていた。
進路場に立ちふさがるように。
奴は、きっと俺を睨みつける。
「ようやく見つけたぞ! 我が一族のかた、ぴぎゃ!」
けど、話が長くなりそうだし、面倒くさそうだったので、竜に防御力向上の魔法をかけて、そのまま跳ね飛ばした。
こういう事もあろうかと思って、支援魔法を習得しておいてよかった。
部下を助けるだけじゃなく、俺の帰国のスピードも早めてくれる優れモノだ。
備えあれば憂いなし、だな!
しかし、浮かれてばかりではいられない。
今度はどこかの国の上空を勝手に飛んでしまったようだ。
その国の飛竜部隊がやってきて、こちらを捕縛しようとしてくる。
さすがに問答無用で撃破するわけにはいかないから、困ったな。
外交問題を起こしては、職を首になってしまう。
ん?
すでに起こってる?
細かい事は気にしない。
俺は有名な騎士だから、大抵のことは謝ればなんとかなるのだ。
でも、今は妹に早く会いたいから、後にさせてもらおう。
だから俺は、こういう時のためにゲットした秘宝の力を使った。
遺跡調査の任務で手に入れた秘宝だ。
俺は懐から、怪しい色を放っている水晶をとりだした。
水晶はぴかっと光る。
すると、俺達の姿が透明になって周りから見えなくなった。
これで、飛竜部隊が戸惑っているうちに逃走できるようになった。
良かった。戦闘になったら時間を使ってしまうからな。
さあ、いよいよ故郷が目の前にやってきたぞ。
順調に進めばあと数分で我が家の扉を叩けるはずだ。
玄関から顔をのぞかせた妹に「お兄ちゃん、おかえり!」って言ってもらえるはずだ。
この時間だと、夕食を作っているはずだから、俺が送った花柄エプロンをつけているはずだ。
えへへへ、かわいいな。
俺の妹は想像の中でもかわいい。
もちろん現実の妹が一番かわいいけど。
おっと、妄想している場合じゃない。
故郷の国には、やましい心をもった上空からの侵入者を叩き落とす、凶悪なトラップが生息していたんだった。
それは我が国の頭上を覆う様に生えている、一本の巨大樹だ。
それが意思を持って、枝葉を動かし、こちらを叩き落とそうとしてくる。
その動きは、コバエ百匹を同時に相手にするかのように素早かった。
毎回思うけど、なんでそんなに必死なんだよ。
俺はただ妹に会いたいだけなのに。
俺は、繰り出される巨大樹の攻撃を全て避ける。
避ける。避ける。
しかし、次第によけきれなくなったので、奥の手だ。
ちょっと疲れるけど、しゃーない。
回避行動の最中で、もうずっと昔に習得した魔眼の力を発動。
未来視スキルを使いながら、巨大樹が攻撃できない高度まで突き進んでいった。
ふぅ、ここまでくればもう大丈夫だな。
俺は、風圧でご近所さんに迷惑をかけないように、ゆっくりと竜に降りるよう指示。
さて、久しぶりの我が家からは夕食の匂いが漂っているな。
この匂いは、カレーか。
妹のカレーは美味しいんだよな。
もちろん他の料理もおいしいけど、カレーは特においしいんだ。
早めに帰ってこれて良かった。
俺はルンルン気分で、家のドアをあけた。
「ただいま! 愛する妹よ!」
「ちょ、隊長。またはぐれ竜を撃墜して、そのままいったの!? 部下に任せすぎでしょ。これ、はやく解体しないと腐食して大変なのに」
「ぐおおおお! おのれ、また私を愚弄していったな。あの時も私をひいていきおって」
「一体どこのどいつだ、我が国の上空に侵入したヤツは! かたっぱしから他の国の連中を問い詰めてやる!」
「…………!!(木の枝のムチをぶるぶるさせながら)きいいいいい! 私という者がありながら、無視して他の女の所にいくなんて!」
俺は何よりも愛する妹を優先するために、様々な事態を想定してソッコーで家へ帰る 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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