第一章
プロローグ
時刻は二十三時三十分。
締め切りは明日の放課後、部活の時間。タイムリミットまで、あと十六時間(授業時間含め)。
今までにテキストに打ち込んだ総文字数、0文字。
プロット――――そもそも書いてない。
アイデアメモ――――どこかに失くした。
頭の中にある構想――――なんてそんなのない。
モチベーション――――0。
やりかけのゲーム――――めちゃくちゃやりたい。
「ふむふむ、なるほど……」
現状を整理して、これらの要因から導き出される答え。
――――超☆ヤバい。
「なーんて言ってる場合じゃなくねぇ?」
真っ白なディスプレイの前で頭を抱える。
あれー、おかしいな。土曜日曜とフリーな時間が二日間もあったはずなんだけどなぁ、不思議なもので、いつの間にやらあと少しで月曜日。
もしかして、俺は、時を越える能力『
フッ、馬鹿馬鹿しい。現実逃避してもなんの意味もないことはわかっているさ。
どうするんだよ、あーやだなぁ、絶対「もがみんが書かないと練習ができないよぉ」ってねちねち言ってくるんだろうなぁ。
「のう、後輩よ。あれからどれほど進んでおるのか?」
背後から声が聞こえてくる。わざとらしいほどに偉そうな女の子の声だ。
その声に俺は溜息で反応する。そして思う。
ああ、まただ。
そんな俺の態度もお構いなしに、声の主は勝手にPCの画面をのぞき込んでくる。
「なんじゃあ、ひとっつも文字が見当たらんではないか。全く、せっかく儂が遊ぶのを我慢しておとなしくしているというのに、情けないのう」
うっせぇ。さっきからマンガめくる音とばかでかい笑い声が聞こえてたっての。
「ならば、儂と今から
「俺の脚本づくりを手助けしてくれるはずじゃなかったの! ねえ信長さん!?」
わざわざゲームのパッケージまで持ってきた信長に思わずツッコミをいれてしまった。
信長は俺の事をふん、と鼻で笑うと、白けた視線を送る。
「じゃが、このまま足掻いていようと、どうせ書けないのはお主が一番わかっておるのではないか?」
「ぐぅっ!」
一つ訂正、俺は一特殊な能力を使えるのかもしれない。
俺が書いている脚本のキャラクター、織田信長が、美少女として目の前に現れて好き勝手しだす、という人に言ったら馬鹿にされるのを通り越して本気で心配されるような、そんな悪夢のような能力が。
ちらりとPCの時計を見て考えを巡らす。さっきから数分だけ進んでいる。
「じゃあ、スマホゲーのスタミナ消費してから、ちょっとだけな。ちょっとだけ」
「うむ、では早速準備じゃ」
この後、一度もPCを立ち上げることなく寝落ちしたのは言うまでもない。
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