五章 ソフィア編
第80話 ソフィアに告白
「やっほ〜来たよ〜」
「ソフィア……」
高鳴る心臓を抑えながら海を眺めていると、後ろからソフィアの元気な声が聞こえてきた。
「はふぅ……」
「眠いか?」
「今日もたくさん遊んだからね。でもでも、ハルにデートに誘われたから、飛んできちゃった!」
「そ、そうか」
嬉しそうなソフィアの笑顔に、俺の心臓は大きく跳ねた。
見てわかる通り、ずっと考えに考えた結果、俺が選んだのはソフィアだ。この天真爛漫な笑顔が、俺の心から離れなかったんだ。
「あ~あ、もう明日帰るなんて信じられないな~……途中でトラブルがあったけど、凄く楽しい旅行だった! それに、最後にこうやってハルとデートできたし!」
「それはよかったな」
「うん、よかった! これもハルが頑張って、アタシ達の事を助けてくれたからだね! 本当にありがとう!」
ソフィアはペコリと頭を下げてから、ほんのり赤くなった笑みを俺に向けた。
今回はみんなを助けられたからよかったけど、どれか一つでも欠けていたら、こんな幸せな日常は過ごせなかったんだよな。
「うわぁ~夜の海って、こうやってまじまじと見たの初めてかも!」
俺が感慨に浸っていると、ソフィアが俺の隣を陣取って海を眺めた。はしゃぐのは良いけど、足を滑らせて落ちたりしないでほしい。
「夜の海ってちょっと不気味だけど、これはこれで良いものだね! これをアタシに見せたかったの?」
「まあそれもあるけど……大事な話があってさ。二人きりになりたかったんだ」
「大事な話? なになに気になる~! あ、もしかして愛の告白? な~んちゃって!」
まさか本当に告白なんてされると思って無いのだろう。ソフィアは冗談交じりにケラケラと笑った。
「ソフィアは凄いな。俺の話したい事を言い当てるんだから」
「ふっふ~ん。これくらいアタシには余裕――え、言い当てる?」
「ああ」
今までずっと楽しそうに笑っていたソフィアの顔が、一気に真面目なものに変わった。こういう顔も可愛いなんて信じられない。
「…………」
「……ハル?」
「俺……俺は……!」
ヤバイ、告白なんて人生で初めての経験だから、なんて言えばわからない。それに、極度の緊張で体がフワフワしてる。今にも逃げ出したい。
そんな情けない俺を勇気づけるように、ソフィアは俺の手をギュッと握ってくれた。
「教えて。ハルの話したかった事。アタシ、逃げも隠れもしないし、笑ったりもしないから」
「……ソフィア……」
ああ、やっぱりソフィアは優しいな。俺がソフィアを選んだのは、やっぱり間違いじゃなかった。
「俺……怖かったんだ」
「怖かった?」
「俺はソフィアも、ゆいも、西園寺先輩も大切な人だ。だから、誰かを選んで……傷つけるのが怖かった。でも……倫治おじさんにアドバイスされて、昨日風呂で三人の気持ちを聞いて……このままズルズル行ったら、もっと三人を傷つける。だから答えを出さなきゃって、ずっと考えてたんだ」
「そっか。やっぱりあれ、聞いてたんだ」
「ごめん、言い訳になるけど、あれは事故なんだ」
「ううん、大丈夫」
よかった、素直に話した結果、嘘つきなハルなんて嫌い! なんて言われたら、それこそ本末転倒だ。
「考えて、考え抜いて……ようやく結論が出た。俺が好きなのは、ソフィアだ。いつも困らせられるけど、それでも俺の隣にずっといてくれて……どんな時でもみんなに優しくて……笑顔が素敵なソフィアが好きなんだ」
「っ……!!」
「子供の頃からずっと一緒にいてくれて嬉しかった。一緒に住んでくれて嬉しかった。俺が困ってる時は……いや、誰が困っててもすぐに協力してくれて嬉しかった。そんな優しいソフィアが大好きだ」
ソフィアは誰かが困ってる時、一切嫌な顔をせずに協力してくれた。ゆいの事も、西園寺先輩も。そんなお人好しと言ってもいいくらい優しい人は、そういないだろう。
「改めて言う。ソフィア、好きです。俺と付き合ってください!」
「…………」
帰ってきたのは無言。一体ソフィアが何を考えているのかはわからないが、その僅かな時間が、俺には途方もない時間に感じられた。
そんな事を思っていると……俺の手に暖かくて柔らかいものが、そっと添えられた。
「ありがとう。嬉しいよハル」
「じゃあ……!」
「でも……答えを伝える前に、一つだけ聞かせてほしいの」
「なにをだ?」
顔を上げるとそこには優しい笑みを浮かべたソフィアが……いなかった。ソフィアには全く似合わないくらいの、真剣そのものな顔のソフィアがそこにいたんだ。
そんなソフィアが口にしたものは……。
「あなたは……誰?」
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