第75話 み、見つかったぁ!?

 え、ええ!? いつのまに近づかれてたんだ!? まずい、突然の事すぎて、西園寺先輩の張りのあるおっぱい、少し大きめだけど可愛らしいピンクの突起を……間近で見てしまいました。


 咄嗟に西園寺先輩も手で胸元と下半身を隠したけど、間に合ってない。


「どうしてここに……!?」

「とりあえず話を聞いてください。俺は覗きじゃありません。入ってたら、急に三人が入ってきたんです……!」

「君には二十時から二十一時に済ませるように伝えてくれって、ソフィアさんに言ったぞ!」

「は、はい? 俺、何も聞いてませんよ!?」


 そんな話があったなら、言われた通りの時間に入っていたさ。でも、俺はその話を何も聞いていないぞ!


「ソフィアさん! 磯山君に時間の事をちゃんと伝えたか!?」

「……? あ、すみませんすっかり忘れてました~!」

「…………」


 これではっきりした。これは……ソフィアのドジのせいで発生した事故だ。だからこれは冤罪だ!


「むぅ……ならこれは事故というわけか……」

「そ、そうです……!」

「玲桜奈ちゃん先輩ー? 急にそっちに行ってどうしたんですかー?」

「あ、ああ! なんでもない! 猿が遊んでただけだった!」

「ごぼごぼっ……」


 西園寺先輩は俺を隠すために、強引にお湯に沈めた。さらに、浮かび上がらないように俺の上に座り込んだ。


 い、いきなりにもほどがあるだろ! しかもこの胸の上に乗ってる柔らかいものって、西園寺先輩のおしりだよな!?


「がほっ……」

「少し我慢しろ……!」

「ぶはぁ! ぜぇ……ぜぇ……」


 息を吸う余裕もなかったせいで、すぐに息が苦しくなった俺は、西園寺先輩のおしりプレスから脱出して立ち上がってしまった。


「あの……ど、どうしたんですか……? え、陽翔さん!?」

「ハル? あれ、どうしてここに?」

「しまっ!? これは違うんだ!」


 勢いよく立ち上がってしまったせいで、ソフィアとゆいにも見つかってしまった。しかも、俺は当然裸なわけで……立ち上がれば、当然見られてしまうのは自明の理。


「きっ……きゃあああああ!?!??!」

「ぶへぇ!?」

「き、貴様ぁぁぁぁぁぁ!!」

「ごはぁ!?」


 悲鳴と共に、風呂桶を投げつけるゆい。それは見事に俺の顔面にクリーンヒットした。そこに追撃をするように、西園寺先輩の拳が俺の鼻っ面を襲った。


 そ、そりゃそうなるよな……今のは俺が悪いわ……がくり。



 ****



 すぐに目を覚ました俺は、三人と一緒にリビングに集まるや否や、その場で即土下座をした。


「本当に申し訳なかった!」

「い、いえ……! ゆいこそ、物を投げちゃうなんて……ごめんなさい……!」

「えっと~……元々はアタシのミスだし……ごめん!」

「私こそ申し訳なかった。つい気が動転して……」


 みんながみんな謝り合い、収拾がつかなくなってきた。すると、何故かその光景がだんだん面白くなってしまって……次第にみんな笑いだしてしまった。


「ふっ、ふふっ……なんだかおかしいな」

「そうですね……えへへ」

「とにかく今回はみんなごめんなさいって事で! この話はおしまいにしてごはん食べよう! 西園寺家の人が、バーベキューセットを用意してくれてたみたいだよ!」

「みんな……ありがとな」


 寛大な心で許してくれた三人に感謝を述べながら、俺は三人と一緒に別荘のバルコニーに出ると、バーベキューセットを準備した。


 まあ準備と言っても、食材は事前に用意してくれてたみたいだし、機材は西園寺先輩がほとんど一人でセットしてくれたんだけどさ。


「ダラ~……」

「もうゆいちゃん、またよだれ垂れてるよ! ほらこっち向いて~!」

「慌てなくても、たくさんあるからいっぱい食べるといい。ほら、焼けたぞ」

「い、いただきますっ! あむっ……ん~~~~!!!!」


 西園寺先輩から肉を受け取ったゆいは、口いっぱいに頬張る。すると、満面の笑みが広がった。目尻に涙を溜めてるあたり、よほどおいしくて感動したんだろうな。


「ソフィアは野菜だよな」

「ありがとうハル! さっすがアタシの好みをわかってる~!」

「伊達に幼馴染やってないからな」

「えへへ~ハル愛してる~!」

「お、おう」


 いつもなら、ドキドキしながらもうまく流せるのに、さっきあんな話を聞いた後だから、動揺を隠せない。


「そういえば気になっていたんだが、磯山君はずっとあの場にいたんだよな?」

「そうですね」

「な……なら、我々の話は聞いていたのか?」

「え、き……聞いてたんですか……!?」

「話……? すみません、疲れでウトウトしてたので、何か話してるのはわかったんですけど、内容までは……」

「……そうか。ならいい」


 さすがに全部聞いてましたなんて言えない俺は、咄嗟に嘘をついてしまった。あんまりこういう嘘はつきたくないんだけど、背に腹は代えられない。


「よ、よかった……聞かれてたら恥ずかしくて死んじゃうところでした……もぐもぐ」

「そんなに聞かれたらマズい話だったのか?」

「そ、そそ、そんにゃ事ないれふよ!?」


 動揺しすぎだろゆい……可愛すぎるだろ。そんなに露骨に動揺したら、絶対にマズい話だってバレちゃうと思うぞ。俺には既にバレてるんだが。


「なんにせよ、直接伝えなかった私も悪い。とはいえ、明日からは気を付けてくれ」

「了解です」


 西園寺先輩に頷きながら、俺は三人に適当に肉や野菜を焼いて皿に乗せ続ける。時折、俺もちゃんと食べろって怒られたけど、正直三人がおいしそうに食べるのを見る方が有意義だ。


 そんな幸福感を感じながら焼き続ける事、約一時間。大量にあった肉や野菜は、ほとんどその姿を消していた。大体がゆいの腹の中だけどな。


「……クルーザーでも思ったが、ゆいさんはそんなに食べて大丈夫なのか……? さすがに心配になるぞ」

「え、あ……ごめんなさい……ご迷惑ですか……?」

「いや、そんな事はない。純粋にあとで腹を壊さないか心配でな。実際に来る時に倒れているし」

「ご心配してくれて、ありがとうございます……! さっきは船酔いが重なっちゃっただけですので……大丈夫です!」

「そうか、それならよかった――む?」


 唐突に西園寺先輩は空を見上げる。すると、急にぽつぽつと雨が降って来て……みるみるうちに土砂降りとなった。


 降るのが急すぎて、びしょ濡れになってしまった……これってもしかして、台風の影響か?


「ひゃ~! 急に降ってきたねぇ!」

「台風のせいでしょうか……? 近くに来てるとは言ってましたけど……」

「だろうな。恐らく進路が変わって直撃したのだろう」


 それぞれが台風に対しての話をしているのは良いんだけど、みんな漏れなくびしょ濡れだから、服が体にぴっちりくっついて……体のラインが出てて、正直ヤバイ。下着も透けてるし……。


「……!? み、見ないでください……!」

「い、磯山君……また君という男は……!」

「誤解です! 見たくて見てるわけじゃないです!」

「ハルってば~見たければいくらでも見せてあげるよ?」

「お前は煽るような事を言うな! わざとか!? とにかく俺は着替えてくる! みんなも早く着替えないと風邪引くぞ!」


 明らかにまた怒られそうな雰囲気になってきたのを察知した俺は、逃げるように自分の部屋に向かって走り出した。


 なんか思ったんだけど……この旅行、いろいろとエッチな事が起こり過ぎでは? ギャルゲーだと、旅行とかではそういうのは割と多いイメージだけど……勘弁してくれー!

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