第68話 小鳥遊一家に振り回されっぱなし!
あれから数日後、入院中に警察の取り調べが来たり、ゆいや西園寺先輩がお見舞いに来てくれたり、父さんから心配の電話が来て久しぶりに話したりして過ごしていた俺は、無事に退院して帰宅した。
それと、西園寺先輩がお見舞いに来た時に、帰りの飛行機も準備してあるから、帰る日を事前に教えておいてほしい、そして俺が寝ている間もゆいの護衛はちゃんと機能してると言い残して帰っていった。
護衛に帰りの飛行機もだなんて……本当に感謝で頭が上がらない。今度なにかお礼をしないと。
「陽翔、ようこそわが家へ! まあ遠慮せずくつろぐといい!」
「元々俺の家ですから!」
「そうだったか? こっちに来てから数日程住んでたから、つい我が家のような気がしてな!」
実は、こっちにいる間は俺の家に居る事は事前に聞いていたから、住んでいた発言に特に言及する事はない。
「それに、昔から何度も来てるから、勝手知ったる家って感じだよね~」
「その通りだ、愛しい我が娘よ! 賢く育ってくれて、パパは嬉しいぞ!」
倫治おじさんは満面の笑みでソフィアの頭にごつごつした手を乗せると、そのままワシャワシャと撫でた。
あれ、ちょっと痛いけど凄く安心するんだよな。俺もガキの頃に何度もされたから、よく知っている。
「そういや陽翔、お前さん随分と雰囲気変わったな。誰かと中身が入れ替わったか!?」
ぎくっ。
「そんなわけないじゃないですかーあははー」
「そりゃそうだよな! 高校デビューなんて、ガキみたいな事をしたわけじゃねぇよな!」
「ぎくっ」
ぐっ……さっきから全部言い当てられていて、反論の隙が無い……倫治おじさん、恐るべし。
「それにしても、あんな事があったのに怪我が無くて安心したよ~。生きた心地しなかったんだからね?」
「本当にごめんな。ああするしか方法はなくて」
「怒ってるわけじゃないよ。ただ、あんまり無茶しないでね」
俺の手をそっと取りながら、ソフィアは訴えかけるような目で、俺を見つめながら言った。
そうだな、今回のは緊急だったから仕方なかったけど、これからはもっと気を付けないといけないな。
「ソフィアから聞いたが、まさかトラックの下に潜り込むたぁな! 伊達に俺が鍛えただけないな! ダッハッハッ!」
「よく言いますよ全く。倫治おじさんがしたのは、俺を抑え込みで動けなくして、ジタバタするのを楽しんでただけでしょうに」
「そういえばそうだったな? 無駄なのに暴れるお前さんが滑稽で面白くてついな!」
「ひでぇ!?」
ガキの頃の俺に、なんちゅー性格の悪い事をしてるんだこの人は。
「パパ、いじめ、ダメぜったい、ですよ~」
「むぅ……お前さんのせいで、俺がママに怒られたじゃないか!」
「どう考えても自業自得です!」
「ふふっ、ハルとパパはいつも仲良しだねぇ! ね~ママ!」
「そうね、ソフィアちゃん。なかよし、うれしいね」
「うんっ!」
ソフィアはオリヴィアさんに甘えるように、むぎゅーッと抱きついた。それを、オリヴィアは優しく受け止めてあげていた。
美少女親子の仲睦まじい光景は、とても良いものだ。それはいいんだが、二人の胸元にある四個の特大メロンが形を変えまくっていて、視線に困るんですが。
『それでソフィアちゃん、最近陽翔クンとは良い感じなの?』
『ふぇ!? そ、それは……』
『あら、結婚の約束までしてるんだから、てっきりもう何回もしちゃってると思ったんだけど?』
『な、なにを……?』
英語で話し始めてしまったせいで、イマイチ何を言ってるのかわからない中、ソフィアはボンっと顔を一気に真っ赤にさせた。
「~~~~~~~っっっ!?!?」
「おいソフィアどうした!? そんな顔を赤くして! 一体何の話をしたんだ!?」
「は、ハルは聞いちゃ駄目~!」
「陽翔クン、ソフィアちゃん、なかよしだよねって、おはなし」
「あ、ああ……仲は良いと思いますよ。幼馴染ですし」
一番仲が良い友達であり、大切な幼馴染。でも、それだけでは何か引っかかる。この胸の感じるモヤモヤした感じ……なんなんだろう。
って、そんな事よりも、あれはどうなったんだろう?
「ソフィア! 買ってきたあれは……」
「……実は、割れちゃったの……」
「本当だ……」
ソフィアは部屋の隅から、割れてしまったペアカップを取り出した。
そうだよな、あんなバタバタした中にこんな割れ物が紛れ込んでたら、割れない方がおかしいよな……。
せっかく二人で選んで、これなら喜んでくれるかなってワクワクしてたのに……悲しいな。
「なに、これくらいなら俺の知り合いに頼めばすぐに直してもらえるぜ!」
「本当ですか!?」
「パパ、しんじていい。パパ、おともだち、たくさんだから」
「そうそう!だからこれは俺達がちゃんと受け取る! ありがとな、二人共!」
「ありがとう、ソフィアちゃん、陽翔クン」
よかった、ゴミにならずに済みそうだ。せっかく吟味を重ねて選んだペアカップだから、やっぱり使ってもらいたいし。
****
「かーっ! やっぱりビールは最高だぜ!」
「あんまり飲み過ぎないでくださいよ」
同日の夜、つまみとして出したさきいかを食べ、ビールをガンガン飲んで顔を真っ赤にさせた倫治おじさんに注意をしながら、俺はビールを注いだ。ちなみにソフィアとオリヴィアおばさんは一緒に風呂に入っている。
……ビールって何がうまいのか、俺にはわからないな。未成年だから飲めないっていうのもあるけど、匂いとか変だし……大人になればわかるのだろうか?
「おい陽翔ぉ。俺はずっと気になってたんだけどよぉ」
「なんですか?」
「おめーさん、ソフィアと付き合ってのかぁ? もうヤル事やったのかぁ?」
「んふっ!?」
な、なにを急に言い出すんだこの人は!? 思わずむせちゃったぞ! 酔っぱらいすぎだって!
「何ですか急に!」
「そりゃあ気になんだろぉ。大切な一人娘を野郎のところに置いてるんだぜぇ? まあおめーさんだから、変な事はしないと思ってるけどよぉ……んでどうだ? もうキスくらいしたか? それとも一線超えたか?」
「なにもしてませんよ!」
「んだよ情けねぇ。あんだけすげえおっぱいぶら下げてる女を前になにもしねぇとかねーわー。俺なんてよぉ――」
「あ~涼し~!」
酔っぱらって変な事を言う倫治おじさんに困っていると、救いの手を差し伸べるようにソフィアが風呂から出てきた。
よかった、ソフィアにも倫治おじさんを注意するように――
「って、なんで裸なんだよ!?」
「え? だって暑いんだもん」
「暑くても下着くらい着ろ! 倫治おじさんも何か言ってやってください!」
「あん? 別になぁ……家じゃしょっちゅうだし。それに、大なり小なりあれど、ついてるもんは一緒じゃねえか」
「え、これ俺がおかしいの!?」
この親あってこの子ありと言わんばかりに、全く気にしないでビールを飲む倫治おじさん。ソフィアも倫治おじさんに見られてもなんとも思ってないのか、隠す気配がない。
あーもう、またソフィアの裸見ちゃったよ! 心臓がバクバクしすぎて死にそうだぞ!
「ソフィアちゃん、かみ、かわかさないと」
「あ、うん!」
「ぼはぁ!?」
ソフィアに続いて、オリヴィアおばさんまで裸で出てきたんですが!? 全体的にソフィアをふっくらさせた感じで、特に胸とおしりがより大きくしたような体……これ、人が殺せるレベルだぞ!?
「ママは今日も綺麗だな。どうだ、今夜しっぽりと――」
「もう、パパ。ダメ、こんなところで」
「人の家でなにを言ってるんじゃあんたはぁぁぁぁ!!」
色々と我慢の限界になった俺は、思わず大声で叫んでしまった。
もうこの一家、色々と凄くて体力がいくらあっても足りる気がしません……ゆい~西園寺先輩~た~すけて~!
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