寒い季節のお友達

 小学3年生の翔馬しょうまはカイロをニギニギしながら登下校していた。学校まで片道歩いて30分の寒空にはカイロが必要不可欠だ。基本的には冬でも温暖な地域に翔馬は住んでいたが、その日は珍しく雪が降った。翔馬は人生で初めて見る雪にテンションは大上がり。


 しかも校長先生が『勉強よりも雪で遊んだ方が良い』ということを先生たちに伝え、午前中は授業が無くなった。翔馬は友達と共に雪が降り積もった校庭を駆け回った。初めての雪合戦、初めての雪だるまによって手が霜焼けするまで遊んだ。歪で大きな雪だるまは先生も含めて作った傑作。教室から見える位置に置かれて皆を見守っていた。


 真っ赤になった手にカイロの温もりが心地良い。そして翔馬が冬の間、いつもカイロを持っていたことを友達は知っていた。皆も手が真っ赤で、カイロで手を暖めていた翔馬の下に駆け寄る。一つのカイロを皆で握り合った。今日もまだ寒い季節、でも何か心が暖かかった。

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