怪盗ベジタブル

「今日こそ逮捕する、怪盗ベジタブル!」


「フハハハハハ!私を止めるものなどいない!来るがいい、警察共!」


 怪盗ベジタブル。本名、野菜 愛。全国各地で野菜を盗むという行為を行い、全国指名手配中の男だ。警察も必死に跡を追っているが、中々捕まえることができなかった。目撃情報が少ないというわけでもない。証拠を残さないというわけでもないのに捕まえることができていなかった。


 怪盗ベジタブルは日本全国各地の野菜を手に取ってSNSにアップする。という行為を繰り返していた。この畑で取れた野菜がどれほど美味しいのか、どんな風にこだわっているのかを情熱を持ってまとめ上げて掲載する。調理法も多く提案し、レシピ自体も人気があった。怪盗ベジタブルが記事を発信すると、瞬く間にそこで取れた野菜は売り切れるほどだ。


 しかし、警察としてはいくら人気があっても、野菜を盗んでいるために容疑をかけざるを得なかった。ただ追いかけるだけでは捕まえることができない。そこで、日本全国の農家の中で怪盗ベジタブルが狙いそうな場所を絞り、見事に捕まえることに成功した。



 怪盗ベジタブルが野菜を盗むことになったきっかけは、お金が無くて初めて盗んでしまった野菜があまりにも美味しかったためだった。もっと野菜を知らせたいということで、全国各地の野菜を盗んでいたのだ。


 裁判では情状酌量や、本人も反省をしているという点から刑期は比較的短いものだった。そして、彼は今―


「フハハハハハ!おはよう諸君、怪盗ベジタブルだ。今日は青木さんと共にきゅうりの育て方について学ぼうではないか!」


かつて自らの犯行現場での農家さん達と共に、人気動画投稿者として活動していた。必死に作り上げたものを盗んだことは事実。しかし、彼のおかげで野菜の消費量が上がったのも事実だった。そして動画の最後にはいつも同じ言葉を使っている。


「野菜は美味しい!だが、いくら魅力的でも盗んではいけないぞ!怪盗ベジタブルとの約束だ!」


 今日も怪盗ベジタブルは売り切れという名で、町中の野菜を盗んでいる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る