第14話
優は自宅のリビングのソファーでお守りをじっと見ながら愚痴を言っていた。
「ねぇ師匠、本当にこれ聞くんですか?今日もまた霊らしきモノ見ましたよ?と言うより何で連絡先を教えてくれなかったんですか?男ならかわいい女の子見たら、連絡先教えてよとか言うもんなんじゃないんですか!?」
優はとてつもない理不尽な事を愚痴っていた。
優は部室から出た後、ぎこちない動きで下駄箱へと行き、待っていた弘子と結に心配をかけてしまった。何でもないと無理矢理押し通したものの、二人は別れる時まで大丈夫かと心配してくれて、大分迷惑をかけてしまった。
そんな事もあり、家のソファーに座って一息つくと、ついつい愚痴を言ってしまったのだ。
「はぁ~・・・。でもちょっかいかけられたりはしてないから、やっぱり効いてるといえば効いてるのかなぁ・・・。はぁ~・・・」
優は天を仰ぎため息をつく。確かに霊は見えはするものの、向こうから呼ばれたり、直接何かをされたりという事は無かった。つまりお守りは効果はあるのだろう。しかし・・・。
「もうちょっとこう・・・、見えなくなるとか出来なかったのかな・・・。これも次あった時に聞いて見よう・・・」
優は心の中の聞く事リストに1つ問題を付け加えた。しかし対処法を覚えれば霊が見えていても問題なくなるのだろうか・・・。
優がうーんうーんと唸りつつ頭を悩ませていると・・・。
『ピロン』
「ん?携帯?」
優の携帯に入っている、気軽に人と連絡が取れるSNSアプリ『コネクト』からの通知だった。コネクトをタップし開くと、優と弘子と結の3人で作ったグループ会話の新着を知らせていた。
優がグループ会話をタップして内容を確認すると、弘子と結から再び心配するようなメッセージが来ていた。優は少し笑顔になり、「大丈夫、何もないから心配しないで」とかわいい動物のスタンプ付きで入力した。
その後も暫く二人とコネクト上でやり取りをし、気が付くと大分時間が経っていた。
「あ、夕ご飯の支度しなきゃ。そろそろご飯やお風呂にするね・・・っと。よし」
優は二人にメッセージを送りやり取りを一先ず終わらせた。色々しながらでもやり取りは出来るのだが、優は昔から何かをしながらやり取りするという事はあまりしてこなかった。弘子と結があっさりと了承した事から、恐らく女の優も同じなのだろう。
優はお風呂の湯を溜めながら、夕ご飯の用意を始めた。
・
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「ふぅ~さっぱり。けど未だに慣れないなぁ・・・ふへっ」
優は自室のベッドに寝ころびながら、お風呂で見ていた自分の体の事を思い出しにやけていた。未だ優には自分が男という意識がある為、どうしても女の裸体を見ると気分が高まってしまうのだ。例えそれが自分のものでも。
「ふへっ・・・へへっ・・・。・・・いかんいかん」
優は、何時までも自分の裸体を思い出してにやけているモノではないと自分に言い聞かせた。もしかするとこれから長い間を共にする体なのである。流石に自分で自分の裸体に興奮するのは変態ナルシスト過ぎると思ったのだ。
「まぁ時間が解決するだろう・・・うん。それはそれとして、コネクトの履歴とか見てみるか」
その内見慣れるだろう、そう優は自分の中で判断してこの事を頭から追いやった。そして少し前に使っていたコネクト、これのやり取りの履歴を見てみる事にした。
「これである程度の人間関係が解ればいいな。っていうか気づくのが遅かったな俺・・・」
駄目だなぁ俺と少し反省をしつつ、コネクトでのやり取りの履歴を見て行く事にした。履歴の中には、父親、阿部、桐谷家の面々、弘子に結、それにクラスメイト達といった者達との様々な履歴が残っていた。
やはり女の身だけあって基本は同性とのやり取りが多く、特に弘子と結、後は静とのやり取りが多かった。静とはまるで母と娘といったやり取りが多く、男だった時より更に関係が深いように見えた。
「まぁ男だった時でも十分世話になっていたんだけどな・・・」
優は静に対し、改めて感謝の念を送るとともにメッセージも送っておいた。すると直ぐに既読が付き、返信が帰って来た。内容は「気にしないでもっと頼りなさい」だの「ちゃんとご飯食べた?」だの、やはり母親っぽい感じだった。
優は嬉しくなりつつ静のメッセージを読み終わると、他の履歴の事に考えを移した。
「今日だけでも感じたけど、三崎さんと中森さん・・・いや弘子と結、この二人とは特に仲がいいみたいだな」
弘子と結とは3人での専用グループを作るほどに仲が良いらしく、やり取りの履歴からもそれが伺われた。男の意識がある優としても、あの二人とならば仲良くやっていけるかなと考える。
「女子ってドロドロしてるイメージあるもんなぁ・・・。その点あの二人なら、今日接した感じからしてそんな事もなさそうだしな。と言ってもウチのクラスだけなら大丈夫そうかな・・・?」
優はクラスメイトとの履歴のやり取りも見て行く。それは個別のやり取りだったり、クラス全体グループのやり取りだったが、感じる雰囲気などは良い物だった。それも恐らくは・・・。
「本当に感謝するよ幼馴染さん」
クラス全体の雰囲気を良くしている要因は恐らく幼馴染である涼真である。彼が入ることにより何故かいい雰囲気になっているのだ。これは優が男であった時からそうだった。優は改めて完璧なる幼馴染の事を思い浮かべる。
「本当に・・・本に出て来る王子様かっての・・・」
ふと優はそこで考えてしまった。もし涼真が本に出て来る主人公役の王子様なら、隣に住む幼馴染の女の俺は・・・。
「ひぇっ!ヒロイン役とか勘弁!ひぃ~・・・サブいぼ出て来るわ・・・」
寝た体勢から起き上がり、ベッドの上で座りながら二の腕をさすると本当にサブいぼが少し出ていた。優がそれを可笑しく思い笑っていると・・・。
『ピロン』
「ん?あ、弘子に結だ。・・・今さっきの妄想の事話してやろ。ただし面白おかしくだがな!」
優は再びメッセージを送って来た二人とメッセージのやり取りを始めた。そして途中で涼真の王子様設定の作り話の事を盛り込むと何故か大うけしてしまい、そこから3人で時間も忘れ楽しく過ごしてしまった。
こうして優の女子生徒としての初日は終わりを迎えた。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。今回は少し短めになってしまいました、すいません。
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『最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~』
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