第146話 多比良八重の独白 今後の課題と解決策
さて、ラスト・ダンスの敗北後、私と勇者は王城のあの日に死に戻り。
そして、『パートナー』でなくなった城さんと、王城で再会。
前回の思いつめたような影は微塵もなく、とてもすっきりした表情だった。
ま、最初の空間魔術、トイレ付きアナザルームを創造して用を足した後だしね。
今までお疲れ様。そして、これからは好きに生きて欲しいと切に願った。
なので、2回目以降、私は旦那である城さんを無視し続けることに決めた。
なぜならば、女をつくらせるため。そのためには、
最初は、城さんに踏ん切りをつけさせるため、離婚も考えた。だけど、異世界でどうやって離婚すればいいか分からないし、離婚するとチート娘がどうなるか分からず、これまでの情報の蓄積が無駄になるおそれがあった。なので、離婚は見送った。
というか、こんな呪われてしまった私でも、末席でいいから、城さんの嫁でいたいと願う自分がいる。私は別に重婚されても構わないし。
・・・
さて、攻略の考察に戻る。
さて、このゲーム。絶対的な攻略対象はエロ鬼イセだ。
イセさえ落とせば、後はマ国が勝手にオマケのように付いてくることが分かっている。
これは比較的簡単だった。だって、最初からお互い好みのタイプだったからだ。
だけど、女はめんどくさい。
イセが完落ちしない時がある。その原因がやっと分かった。
城さんの記憶のメモ、『イセとの最初の邂逅、温泉アナザルームでの勝利』。
どうもここがターニングポイントだ。イセはああ見えてお姫さま。勝負に勝ってしまってはプライドを傷つけてしまい、しこりを残す。ここは負けなければいけない。
私にはあの温泉アナザルームで何が起きているか分からないし、ついて行く立場にもなれない。
当然、勇者の話をするのもまだNGだ。だって、私と城さんの
この問題はすぐに解決した。
数回の実験の結果、スタングレネードをプレゼントしたら、必ずラブラブになることが分かった。
あのイベントの後、城さんは鬼の匂いをぷんぷんさせながら家に帰って来るようになったし。
しかもなんとういうことだろう、イセが毎回ノリノリで移動砦をプレゼントしてくるようになった。
あれはもうメロメロだ。作戦成功だ。
しかも、ゲットした移動砦のおかげで、ラメヒー王国の貴族の娘も沢山釣れた。このままハーレムルートに持ち込めば、ラメヒー王国の支援も受けられることになるだろう。
あの
このスタングレネード作戦採用後、今のところマ国が城さんを暗殺したことはない。
なぜスタングレネードだったのか、城さんの空間魔術バリアは、光を遮ることはできない。なので、スタングレネードが戦場にあれば、事態が変わると考えたのだ。
ここまでで私がやったことは、旦那に冷たくしたり、浮気を疑わせたりして、スタングレネードをあげただけ。ものすごいコスパだ。
だけど、少し反作用が起きる。
どうもイセが城さんに移動砦をプレゼントするため、神聖グィネヴィア帝国をぼこぼこにしたらしい。
結果、神聖グィネヴィア帝国が焦るのだ。
それで起こったのが、今回の日本人拉致計画。ここは新勇者パーティと
だけど、これから起きる神聖グィネヴィア帝国とマ国の局地戦『西部戦線』で、マ国が負けてしまうことが発覚した。
実は、焦った神聖グィネヴィア帝国が国内戦力を集結。ユフイン戦線の戦勝お祭りムードで隙を見せているマ国に総攻撃を仕掛け、マ国の西部戦線を食い破るのだ。
これに関しては、今回手を打った。
王城での10日間の時、イネコさんに頼んで、旦那にナパーム・ランスを伝授してもらったのだ。
ナパーム・ランスとは、かつてパートナー時代の城さんが、対移動砦戦闘で愛用していた攻撃方法。ねっとりとした可燃性物質を移動砦の魔術障壁にぶつけ、その周囲の酸素を奪い尽くし、魔術障壁が切れると同時に貧酸素と灼熱が襲い掛かる鬼畜な攻撃方法だ。
城さんは、さっそく今回の移動砦戦で使用し、戦果を挙げたようだ。
マ国軍の軍師は勤勉で柔軟で優秀だから、きっと今回の戦闘を分析し、自国の作戦に取り入れてくれるだろう。それに期待したい。
現在はここまで。これからは未来に進む。
これからもう少しすると、日本人帰還事業が始まる。
それまで、私を含む新しい勇者パーティは、冒険者が死なないように見張ったり加勢したり、送られてくる刺客を潰したりする予定。
私は城さんや娘のように、あまり強くない。でも、事態が最悪な方向に行かないよう、介入することはできる。それが私の使命。
新しい勇者パーティで、誰も死なせずに
残る課題その1は、これから日本に帰る同胞たちをどう守り抜くか。
その解決策は、最初の『パラレル・ゲート』がつながった後に直ぐに動くこと。
これには
課題その2は、
この解決策は、今のところ、有効打はない。
暗殺したい誘惑に駆られるが、罪を犯していない彼女を殺害するわけにもいかない。
城さんがロリに目覚めてくれるのがベストなんだけど。どうやったらいいのか思いつかない。とりあえず、私から旦那を襲うようにアドバイスしてみようかなぁ。あのロリ、どうも私に遠慮しているところがあるし。
今のところ、こちらは保留だ。
課題その3は、ラスボスの倒し方。
これは、未だに謎だ。勇者の神秘だけで倒せないと分かったのも比較的最近だから。
なので、これから攻略を考えていく必要がある。
考えとしては、『大破壊』前の記録を知る人物に協力要請することを想定している。
候補はエンパイアのエンペラーだろう。だが、この国とは、今まであまり仲良くなったことは無いので情報が少ない。しかも、あそこにはエンパイアの勇者がいる。
エンパイアの勇者と城さんは、混ぜたら危険というアドバイスをもらっているので、要注意だ。
課題その4は、ゲームのクリア後だ。
おそらく、ラスボスを倒した瞬間に『時空化』は解除され、死に戻りは起きない。
その後、城さんが暗殺されたら目も当てられない。
また、召喚者600人以外の情勢がむちゃくちゃなことになっていても後味が悪い。例えば『ゲート』を欲した外国が日本に侵攻するとか、核戦争が起きるとか、ラメヒー王国が壊滅するとか。
ここは、可能な限り世界情勢を変えず、また、城さんに力を付けさせない努力が必要だろう。そいえば、あの暗殺者も女だ。一番のベストは彼女も落とすことだけど・・・そこまでは無理か。アレの頭の中は謎だし。
とりあえずの方針はいくつか考えていて、ラスボスを倒すのは勇者と私とその協力者のみで行いたい。
無理して城さんが強くなったらいけないから。
そして、私たちの正体を、いつ明かすのか。これはある種の切り札だ。
特に城さんに対して。
あまり早過ぎたら女関係で失敗するし、遅すぎてもラスボス戦の準備が間に合わないかもしれない。タイミングが重要だ。
今の予定としては相当最後の方だろう。たとえば、イセと城さんが結婚してしまった後とか。他の女とも既成事実さえ作ってしまえば、城さんのことだから捨てることはしないだろう。
もちろん、一度に全員に公表する必要はない。少しずつ、勇者パーティの理解者を増やしていこうと考える。
これらすべてを私がコントロールできるわけではない。
大部分は、チート野郎である城さんと、その周りの女性たちがキーになるだろう。
これが、今後の攻略方針。
それにしても、この『勇者召喚』、確かに、果てることのない未来の可能性を、ずっとあきらめずに挑み選択し続けたら、いつかは勝利することができるのだろう。
だが、それは、精神力が無限であれば、という前提である。
ただ、どうも、勇者を辞める若しくはチェンジすることができるシステムもあったぽいが、あの
まあ、今それを悔やんでもしょうがない。
頬をつねってやったし、少しは溜飲が下りた。
今回は、うまくいきますように~。
早くしないと~勇者の精神が崩壊してしまうぞ~。
でも、なぜか今回は、クリアできそうな気がするなぁ。
◇◇◇
<<糸目の女性>>
あの古城戦でみた大魔術・・・
あれはラメヒー王国にも似たようなものはあるけど、タイプが違う。
おそらくエンパイアやマ国の技術が用いられている。
一体何者なのかしら。
大魔術、神秘。
魔力そのものを具現化させて戦う方法で、燃費は悪いが威力は大きい。
主に、巨大モンスター戦に使用される魔術だ。
大量の魔力を消費するため、個人の使い手はあまりいない。
スタンピードや戦争で、多数の魔力補充要員がいる時に使用される時があるくらいだ。
私は伯爵令嬢として、エンパイアに留学経験がある。
その後も王宮魔導師次席として、勇者召喚プロジェクトの一環でエンパイアの勇者召喚の儀の研究も行った。
その中で、神秘の研究の記録を見たことがある。
あれは何だったか・・・大破壊の際に訪れた絶望。
最強のモンスターを倒すための研究。確かそんなテーマの古文書があったはずだ。
術式などの細かい内容は忘れちゃった。だけど、神秘の使い方が独特だったのは覚えている。
それにしても、あの大魔術、何であんなことをしなくちゃいけないんだろう。
まあ、どうでもいいことか。
それより、ダーリンよね。あの人の謎だ。
記憶を失う前の私が知った秘密。
それは多分、彼の魔術特性。最初は優れた反重力魔術士だと思ったけど、それは違う。彼は空間魔術士だ。おそらく相当凄腕の。しかも、常時複数の術を展開している。
彼は、本気で訓練すればラメヒー王国、いや、マ国やエンパイアの最高戦力さえもしのぐ魔術師に育つかもしれない。
でも、もう彼の研究とか、謎に迫るのはいいや。
だって、私はもう、彼のもの。ずっと傍らで彼の魔術を見ることができる。
こんな幸せはない。彼の謎はすぐに知りたいけど、楽しみに取っておこう。
私だけの楽しみ。素敵・・・
それにしても、息子のシロウはかわいいなぁ。顔は奥様に似ているけど。
あの奥様ちょっと怖いのよねぇ。いつもにらまれるし、この間はいきなり後ろから頬っぺたつねられたし。
私に恨みでもあるのかしら・・・
◇◇◇
<<マガツヒ魔道王国 作戦会議室>>
「将軍、ラメヒー王国での日本人拉致事件。その速報が入ってまいりました」
「グ国の奴らが企んでいた日本人大量拉致計画か。それにしてもすごいな。ジマー家の百鬼隊が参戦したとはいえ、ほぼ被害無しで敵の特殊部隊を壊滅させるとは」
「聖女の確保。今回はこれが大きいです。聖女の頭の中は機密情報だらけですからな。今、早速情報を抜き出しております。死体より、生きている方が情報の量と質が桁違いですから」
「ふん。今まで散々我らの国民を殺害してきた奴らだ。同情はせぬ。だが、確保されたときには四肢が曲がり、内臓がぐちゃぐちゃだったようだな。よく生きていたものだ。そこは流石聖女、と言ったところか」
「聖女を倒した日本人がむちゃくちゃな魔力を叩き込んだようですな。無理にレジストしようとして体に反動が来たようです。内蔵もしかり。消化器系が直腸から喉に至るまでズタズタにされておりました。優秀な医療班が何とか回復させたようですね。重要な情報源ですので。それから、また移動砦の鹵獲に成功しておりますな。得意なようですな鹵獲が」
「移動砦が鹵獲出来れば、相手の戦力を削ぐとともに、こちらの戦力もあがる。今回はユフインの時のように圧倒的な力で押さえつけたわけではないようだな。戦略を分析させよう。同じ事が出来れば、我らもそれを取り入れればよい」
「そうですな。それ次第で、西部戦線の作戦も変わって来ます故」
「うむ。では、分析は任せたぞ。軍師よ」
◇◇◇
<<ロリドワーフ>>
「はあ、タビラ・・・どうすればいいんじゃ。早く、体が成長しないかのぅ。あいつの好みは、手足が長くておっぱい大きめじゃ。
◇◇◇
<<多比良とイセ>>
「はあはあ・・・どうだ? もう一度変わってやろうか?」
「遠慮せずともよいのに。では、5分ずつ交代だな・・・何? 5分も持たないだと? しょうがないやつじゃ。ではお主は1分な」
・・・
「ほら、次はわたしが足をこうして・・・」
「次は横からどうだ? ん?」
・・・
「お前は、わたしが絶対に守ってやる。だから、お前は、このままでいておくれ・・・」
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