Geistige Manipulation─政府による大規模粛清─

( ᐖ )

«序章»「彼等はまだ崩れ去る世界を知らない」

───それは、政府による若者達への【粛清】だった───




───

─────


「なぁなぁ乃蒼このゲーム知ってる?すっげぇ面白ぇんだよ!」


耳元でそう叫ぶ彼。

相変わらず京壱は煩いなぁと思いながらも

返答をする。


「はいはいはいはい、分かったから。

今流行のあれでしょ!?」


「そうそう!」


今流行のあれ。そう、今大流行している「Infinity」というゲームに京壱はどハマりしているのだ。


「僕はそういうの興味ないって言わなかったっけ?」


「まぁまぁ、そう言わずにさぁ。

社会現象にもなってんだぜ!?」


「らしいね。」


「「らしいね。」って…どんだけ興味無いんだよ…」


「いや、抑々僕ゲーム禁止されてるし

前言わなかったっけ?禁止されてるって」


「あれ、そうだっけ?」


あぁ、やっぱり忘れてる()


「そうだよ…

いやまぁ、解禁されてもやらないと思うけど…」


「なんで!?親に言って解k」


「僕サバイバルゲーム

苦手だって言わなかったっけ」


「あれ、そうだっけ」


「いい加減にしてくれよまじで…」


そう、「Infinity」というゲームは

比較的簡単なサバイバルゲームなのだ。

ただ、実はサバゲーは苦手ではない。

寧ろ得意でやりすぎて禁止になったぐらいだわ。

なんで隠しているかって?後々分かるさ。


「でも、乃蒼スナイパーライフル得意じゃん」


「いやまぁ、そうなんだけども…」


「まぁそこまで言うならもう勧めないけどさ…」


「なんかごめん」


「いやいや、乃蒼が悪い訳じゃないしさw」


と言っても本当は隠してるだけで凄い興味はある。

でもまぁ、禁止されてるしなぁ…と思いやっていない。


因みにスマホゲームである。


「まぁ、また興味が湧いたらというか

解禁されたら一緒にやろうぜ!」


…やっぱりこいつは変わらない。

でもまぁ、そうじゃなきゃ

僕なんかの親友になってくれはしないか。


─授業始めるぞー


先生の声がした。


今日もまたいつもと変わらない日が始まる。


…この時までは、そう思っていた。


まさか、この変わらない平穏な日常が

迚も愛おしく感じると分かるまでは…




───放課後───


「ふーい、やっと終わったぁ…」


「なぁ、乃蒼」


「ふぁい?」


「今から空いてる?」


「空いてるけど…なんで?」


「んー…いやちょっと相談があって」


「…親?」


「さっすが乃蒼!察しがいい!」


そう、京壱の家庭は少し…

良く言うと自由にさせてくれてる、

悪く言うと子供に無関心なのである。

まぁ両親どっちも政治家なら

仕方の無い気もするが…


子供を育てると決心したなら

関心ぐらい持って欲しいものだ。


「それでさ…今日ちょっと家来てくんねぇ?」


「OK。持ち物とかなんかある?」


「OKの速度早くね?即答やん」


「そら親友の相談事ならいつでも乗るよ。

で、持ち物とかは?」


「スマホと財布とあとなんかいるやつ」


「語彙力ぅ…まぁ了解」


「それじゃ、また後で!」


「…おう」


…それにしても

ここまで子供に無関心な親って

何考えてんだか分かんねぇな…


そんな事を思いながら

誰も居ない家に帰る。

もう慣れた。


「…ただいま」


そう言っても誰も何も返してくれないのは

もう身体に、脳に染み付いている。


「菓子要るかな…一応持っていっとこ」


いつも両親は仕事で居ない。

僕が起きる前に仕事に行き

僕が寝た後に帰ってくる。

僕が学校から帰ってくる時には

何故か机の上に晩御飯が置いてある。


「まぁ帰ってきた時に食えばいいや…」


仕事という名目で不倫をしているのは分かってる。

しかも両親どっちもっていうんだから呆れる。


「ん?なんか手紙置いてある…」


嫌な予感しかしない


「何々…「父さんは暫く出張で出掛ける。その間の生活費置いておくから〜〜〜」…

んでこっちが…「母さんは暫く実家に帰ります。その間のご飯は冷蔵庫の中に〜〜〜」…」


もう読む気は失せた。

到頭来たか、この時が。


「ははっ…子供を置いてまで性欲を解消したいのか…

はははっ、あはははっ」


もう慣れた。

どうせ僕なんかに関心なんて持ってない。


ずっとそう思っていたものが全て崩れた。


「…もう、良いや」


もう疲れた。

親の都合で振り回される人生に。


…家、出るか…


不意に電話が掛かってきた


「はいもしもs」


『遅い!いつまで待たせんだ!』


「ごめんごめん」


ふと、京壱の所に泊まらせてもらうのはどうだろうかという考えが頭に過った。


「…なぁ、京壱」


『なんだ?』


「今日、お前の家泊まってもいいか?」


『おうおう、良いけど…なんかあった?』


「会った時に話すよ」


『了解。…なる早で来いよ』


「へーい」


…ブチッ


やっぱり、京壱は優しい。

僕には勿体ないぐらいの人だ。


「さーてと、準備して行きますかぁ…」


リュックの中に必要最低限の生活必需品を入れ、

最後にスマホと財布を入れる。


「これで良し、よっしじゃあ出るか…」


僕の家から京壱の家まで約10分


「…コンビニ行って菓子でも買うかね…」


京壱は僕が自転車に乗れないのは知ってるし、

まぁ心配されることも無いだろう。




ふと、声がした。




───なぁ、そこの君


「…?…気の所為か…疲れてんのかな…」


───ちゃうちゃう、気の所為ちゃうて!


「うわぁ!?」


───あ、吃驚させてしもた?すまんすまん


「ちょっ…え!?

どっから声してんの!?てか誰!?」


───元気のええ子やなぁ…探しても私は居らんぞ、君の脳内に直接話し掛けとるからな


「いや、誰?」


───急に冷めますやん。んー…今は「天の声」、とでも名乗っておきましょか。


「は、はぁ…?…んで、僕に何か用ですか?」


───あ、そうそう。確か君「Infinity」っちゅうゲーム、入れてはりませんでしょ?


「えぇ、まぁ…」


なんでこの人がその事を知ってるんだろ…

というか普通にめちゃめちゃ怪しい…


───それで、そのゲームをちょっと入れて欲しいなぁ、って…


いや、怪しい以外の何でもないだろこれ

抑々誰だよお前、天の声って何?

なんで「Infinity」を入れて欲しいんだろ…


「…なんでですか?」


───んー…いやちょっと…大人の事情ってものがありまして()


「は、はぁ…でも僕からしたら入れる理由ないんで…」


───頼む!そこを何とか…!


「えぇ…」


いやもうなんか

怪しい通り越して逆に潔く思えてきたな

えぇ…どうしよ…

なんか怖いけど入れるだけならまぁ…


「…分かりましたよ…」


───おぉ、入れてくれるんで!物分りが良くて助かりますわぁ!


「入れるだけならまぁ…」


───ここまで入れてない人全員に入れてと頼んだのにほぼ断られてしもうてな…


「いやまぁそうでしょうね、怪しすぎますし」


───なぬ!?


「取り敢えず、入れたんで消えてもらっていいですか?頭に響いて痛いんですけど…」


───あぁ、分かった。おおきになぁ…


何だったんだろ…

あ、やべ京壱から鬼電されてる


「急がなきゃ…」


そう思いながら全力で京壱の家まで走った。






─────やっと全員に入れて貰えたのか


───はい、大変お待たせ致しました


─────まぁいい。徐々始めるとしようか、「粛清」を


───えぇ、そうしましょう____






序章─完

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