第63話 終戦

 両軍の選手はみんな呆れたような表情を浮かべた。

 そして次の瞬間。


 片方のベンチでは歓声を上がり、

 片方のベンチでは選手が崩れ落ちた。


 この対照的な風景コントラストは勝者と敗者の格差を、ありありと映し出していた。

 それぞれの高校の選手が整列する。

 勝った高校も負けた高校も、一様に涙を流していた。


「礼!」

「ありがとうございました!!」


 そんな両校を称えるような拍手は、校歌が流れるまで続いていた―――

          ◇◇◇


 遡ること3分前。

 ―――コスッ―――

 かすったような音とともに、打球がフラフラと上がる。


 健太は思わず天を仰いだ。


 やらかした。

 そう思いながら、健太は、打球を目で追った。

 二塁ランナーも、三塁ランナーも一斉に走り出す。


 そしてその向こうで、相手の高校のショートが後ろ向きに下がっていく。


 グローブを伸ばす。


 そのグローブに、俺の打球はすっぽり収ま―――ることなく、グローブの先っぽにかすってショートの後ろに落ちた。


 そのショートの選手が体制を崩している間に、三塁ランナーの裕太がホームインし、二塁ランナーの先輩も三塁を蹴る。


 カバーに入っていたレフトがそのボールを拾って、急いでホームに投げる。


 二塁ランナーが突っ込んでくる。

 ボールが帰ってくる。


 クロスプレーになって―――

「アウ、、セーフ!セーフ‼」


 ボールはキャッチャーのミットからこぼれていた。


 グラウンドでの光景に隠れて、ひっそりと電光掲示板ではHのランプが光っていた―――


 こうして試合が終わったのだった。


          ◇◇◇

 すずは健太くんの打席を祈るように見つめていた。

 

 そして相手投手が二球目を投げようとした瞬間。

「いけーーーーーっ!」

 急に叫んだのだ。


 それに合わせて健太くんはスイングして。


 その後のことはあっという間だった。


 でも気づいたときには、すずが目に涙を浮かべて喜んでいた。


 ――自分のことのように健太くんのことを喜べるんだもん。きっと報われるよ!


 すずの親友としてそう願いながら、私は微笑んだ。

          ◇◇◇ 

「健太ナイバッチ!」

「ほんとにありがとう!これでまだ部活続けられるわ!」

 城北高校の校歌が流れてからベンチに戻ると、みんなに声をかけられた。


 よかった。


 素直にそう思っていると、BIGBRIDGEが俺のところに歩み寄ってきた。


「ナイバッチだよ森下くん。試合前に言った通り最後まで油断しなかった君の勝ちだよ。」

「ありがとうございます」


やっぱりこの人はすごいな。

 そう思いながら感謝の意を伝えると、BIGBRIDGEは微笑んだ。

 ________________________________________________________________________________________


 スコアボード     

 相手000000010  1

 城北000000002☓  2☓


 サヨナラーー!

 健太ナイバッチー


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