第27話

「遅いぞサラ、昔はもっと速かったじゃないか」

「私の方が重い荷物持ってるんだからしょうがないでしょうが」


 俺達は持久力を鍛えるため走って林道を進んでいた。長距離の訓練はあまり積んでいなかったので、すぐに苦しくなってしまう。サラには偉っそうな事を言ったが、俺も限界が近かった。


「そろそろ休もうか、サラ」

「賛成!」


 俺達は良さそうな休憩スポットを探した。歩き回っていると、川のせせらぎが聞こえてきた。川の方へ歩いてみると、1人の男が釣りをしていた。


「この辺ってよく釣れるんですか?」


 俺はその男に話しかけてみた。


「ああ、よく釣れるよー。新鮮な魚が食べ放題さ!」

「それはいいですね!あの、もし良かったら俺達にも釣りざおをかしてもらえませんか?」

「いいよ、好きなものを使いなさい」

「ありがとうございます」


 俺達は釣りざおをかりて、釣りを始めた。釣りなんて久しぶりだな。なんだかワクワクしちゃうぜ!大物を釣ってやる!

 俺達はしばらく魚がひっかかるのを待ってみた。しかし、なかなか釣れない。この待ち時間が退屈なんだよなぁ。すぐにひっかかってくれればいいのに…この暇な時間をどう有効活用しようか考えているとサラの方のさおに反応があった。


「あっ、きたよ!えいっ!」


 サラはさおを引き上げた。見事に魚がくらいついている。


「やったぁ!これで今日の昼ごはんゲットだ」


 サラは嬉しそうに魚をさばきはじめた。

 よーし、俺も頑張るぞー!

 しかし、なかなかこない。餌が悪いのかと思いかえてみたが、やはりダメだった。俺って釣りの才能ないのかなぁ。はー。思わずため息をついたその時!

 ついに何かがひっかかったようだ。これはでかい!必ずくると思っていたぜ!やっぱり俺ってなんでもできちゃう無敵の天才ヒーローなんだなぁ!

 俺は一気に釣り上げた。どれだけでかい魚なのかワクワクしながら見てみると、ただのゴミだった。

 くそー!なんで俺だけー!

 この後も何度もチャレンジしてみたが、結局俺は1匹も釣れなかった。


「それじゃあ、俺達行きますね」

「ああ、気を付けてな」

「釣りざおかしてくれてありがとね、おじさん」


 サラはおじぎをした。

 林道をテクテク歩いていくと、すぐに「デラパーシス」という町に着いた。この町では今日クイズ大会が開催されるらしく、みんなどんな問題が出題されるか予想していた。面白そうなので俺達もその大会に出場する事にした。いったいどんな問題が出されるのか楽しみだ。


「それでは、第23回デラパーシスクイズ大会を始めたいと思いまーす!さっそく第1問。ロマリス王国の第12代の王は誰でしょう?」


 俺は手をあげた。


「はい、アロルさん」

「グテバロスです」

「正解です。それでは第2問。キシナー寺院が建てられたのはいつでしょう?」


 俺はまたしても1番はやく挙手した。


「アロルさん、答えてください」

「756年です」

「大正解」


 やったぜ!この調子でぶっちぎってやる!

 珍しくこの後も好調で、10問終わった段階で俺は1番の成績だった。

 よし、よし、今度こそきてる。ここからは消化試合のようなものだ。もう俺の優勝は確実だろう。


「では、11問目。ギシリス島はどこの国の領土ですか?」


 俺は手をあげた。しかし俺とほぼ同時に手をあげる者がいた。


「それでは、カリスさん。答えて下さい」


 え?俺の方がはやくなかったか?


「バリモスです」

「正解です」


 くそー、俺もわかってたのにー…


「第12問目。神獣グロモラを退治したのは誰ですか?」


 俺が手をあげると同時にまたしてもカリスが手をあげた。


「カリスさん、どうぞ」


 またカリスかよ!絶対俺の方がはやかったと思ったのに…この審判目が悪いんじゃないのか?


「ヒルドーです」

「当たりです」


 この調子で、この後の問題を全てカリスが答え、全問正解した。俺は逆転され、カリスが優勝となった。

 カリスの野郎、力を隠していたのか?ふざけた奴だぜ、せっかく途中まで俺が1番だったのに!

 大会は終わり、俺達は帰り支度をしていた。すると、何の用か知らんがカリスがやってきた。


「お前、自分の事天才だと思ってるみたいだけど、ただのバカだと思うぜ」

「なんだと!?」


 コイツ、優勝したからって図に乗りやがって…


「今、『コイツ、優勝したからって図に乗りやがって』って思っただろ?」

「お前、俺の考えが読めるのか?」

「お前だけじゃない。誰の考えでも読めるのさ!」


 魔法でズルしてクイズ大会で優勝しやがったんだな。


「アロルとかいったな…お前、戦いには自信あるみたいだけど、俺にはかなわないぜ」

「ほう、それなら試してみるか?」


 俺は軽くジャブを放った。カリスは頭をずらして、攻撃をかわした。次に、前蹴りをくらわそうとしたが、カリスは後ろへ飛び、難を逃れた。やるじゃないか…俺は必殺の上段後ろ回し蹴りをかました。しかし、カリスは腰をかがめて、よけてしまった。

 1発も当たらない…考えを読まれるというのは予想以上に厄介だな…


「今度は俺からいくぜ」


 カリスは右ストレートを打ってきた。意外と速い!俺はギリギリでかわすとカリスは足刀を打ち込んできた。俺は右によけて、パンチしようとしたが、俺より速く右フックを出し、左頬にくらってしまった。

 なかなかやるじゃないか…今度は俺の魔法をみせてやるぜ!


「メサオ!」


 炎は勢いよく、カリスの方へ向かっていった。しかし、この攻撃もよけられてしまった。

 くそっ!もう1回!


「メサオ!」


 しかし、カリスには当たらない。カリスはパンチを連打してきた。全部は防御しきれず、2発くらった。

 や、やられる…………そうだ!


「サラ!同時攻撃だ!」

「わかった!」

「メサオ!」

「ガトリングシャワー!」

「え?え?同時は卑怯だぞー」


 カリスは俺達の同時攻撃をまともにくらった。


「ひー、熱い!痛い!誰かなんとかしてー」

「コイツそんなに悪い奴じゃないんだし、私が火を消してあげるわ」


 そう言うとサラは水魔法で火を消してやった。


「こんな勝ち方でよかったの?アロル」

「勝てればいいのさ」


 正直言うと自分を少し嫌いになった戦いだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る