銀河革命

@fssf

第1話

銀河帝国首都星系惑星モスコー

この美しい星はかつては銀河帝国の首都星として栄華を極めていたが、

その面影は今や無く、モスコーは大勢の人々の血で埋め尽くされていた……

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銀河帝国暦917年それは銀河帝国成立以来史上最悪の飢饉から始まった。

昨年、帝国内にて大規模な増税が行われ、その損失の補填の為様々な物が値上がりし、更に帝国内にて天災が発生し農産物の記録的な不作となった。更に最悪な事に貴族と富豪が値上がりを見越してありとあらゆるものを買い占めた。

その結果、帝国全土において大規模な食糧不足に陥り人民は明日の食料を求め彷徨った。しかし、食料は貴族と一部の富豪によって独占されており、人民たちは普段の数十倍以上にも値上がりした食料を買うか、何とか食べられる物を探し出すか、そのまま餓死をするかの三択を迫られ、日に日に追い詰められていった。


銀河帝国暦917年3月1日食糧危機改善の兆しが全く見えない中、

1人の若者がモスコーの中心広場で「パンを寄越せ!」と叫びながらデモを始めた。参加者はあっという間に膨れ上がり、ほんの少しの間に数千人以上が集まった。

デモ隊に参加した人々は皇帝に、人民の窮乏を訴えるための請願をする事をその場で決定すると、デモ隊は皇帝の住まう宮殿、春宮殿に向かって行進を開始した。

デモ隊は春宮殿に近づくにつれて数を増やしていき、最終的には10万人以上が参加したと言われている。


この報を受けた帝国宰相は軍隊の動員による鎮圧を決断、皇帝ニコイ22世に提言し承諾されたことにより帝国軍を出動させた。

出動した帝国軍はデモ隊に対し解散を指示するもデモ隊は拒否。

これを受け帝国軍はデモ隊に発砲した。これが引き金となってデモ行進は暴動に発展し、最終的に数万人以上の人民が犠牲となった。この虐殺劇は日曜日に起こった事から「血の日曜日事件」と呼ばれるようになり、銀河帝国皇帝ニコイ22世への幻想は完全に打ち砕かれ帝国全土に反帝国運動が広がるきっかけとなったのである。


血の日曜日事件の事件現場から数キロ離れたとあるビアホール。普段は人民の憩いの場として愛されているここでは現在、多数の労働者たちが集まっていた。


「このままでは俺達平民は皆餓死してしまう!」「このまま餓死するくらいなら武器を持って戦おう!」「バカを言うな!帝国に逆らうのか!?」「勝てるわけないぞ!」「俺は死にたくない!」「だがこのままだと飢え死にだぞ!」


労働者たちが怒号を上げながら話し合っていると、1人の男が壇上に上がった。


「同志達よ!静まれぇ!」


男が大声を張り上げると、労働者達の怒号はピタリと止んだ。

すると男は話を始めた。


「同志達よ、聞いてくれ!今、この帝国全土で大飢饉が広がり、我々人民は飢えに苦しんでいる。既に多くの人民が餓死し、更に辺境では疫病が広がっているという。

だが、銀河帝国皇帝ニコイ22世はこの国難に何も関心を示さず、国政を担っている宰相は臣民救済に予算を回す余裕などないという。しかし!帝国の臣民たる我ら人民を救済しない政府に、いや皇帝に存在価値などあるだろうか!」


男は労働者たちに語り掛ける。


「そうだ!」「その通り!」「俺達に救済を!」


「その通り!同志諸君、我々人民を救済しない皇帝ニコイ22世に価値などありはしないのだ!人民は人民自らが動かなければ救済の道はない!何故なら帝国は、我等を都合の良い奴隷としか見てないことが、今回の大飢饉で判明したからだ!血の日曜日を思い出せ!パンを寄越せという我等の願いに対し、奴らは虐殺で応じたのだ!」


「俺の母ちゃんは彼奴らに殺されたんだ!」「奴等に報いを!」


男は続ける。


「我々は帝国の奴隷ではない!我々は帝国の臣民ではない!我々は皆、人民であり、人民の上に何者も存在しないのだ!故に、我々人民は、帝国の傲慢な貴族共と皇帝ニコイ22世から権力を取り返さなくてはならない!」


「「「その通り!」」」


「同志諸君!そこで、私は今ここに、真の人民の代表者たちによる評議会、ソヴィエトの結成を提案する!」


「「「異議なし!!!」」」


銀河帝国暦917年3月8日、この会議によってモスコーの労働者代表者組織、

【銀河ソビエト】が結成された。そしてソビエトの代表である議長には、提案者である男が選出された。

その男の名はレニンといった。そしてレニン議長の指導の下、銀河ソビエトは瞬く間に勢力を拡大していくことになる。

この出来事が後に帝国全土を揺るがすことになるとは誰も思わないだろう。たった一人を除いて……

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