血神 ──神への叛逆──
きむち
第1話 混血
神は光の生命体[ヒト]とその裏に当たる闇の生命体[悪魔]を世界に創造した。
彼ら2つの種族は太極図、闇を表す黒、光を表す白の[陰陽魚]が決して交わらないように和解をしない。しかし、その黒い闇、白い光にも必ず小さきながらも輝く、闇の中の小さな
それは魔と人も同じである。全ての生命は表面の裏側、つまり、それぞれの影で邂逅を果たすのだ。
それが生けるものの運命とも言えよう。
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人間の女、つまり母親の名前はセリエ=ハクノ。悪魔の父の名はヨル=ハレイン。
子の名はヨルエ=マーリン。ヨルエというのは母のセリエと父のヨルを
人間界では悪魔との和親、それに値する全ての行為は禁止されている。それは魔界、正式名称[パンデモニウム]でも同じことである。発覚した場合、2人は即刻殺されるだろう。
しかし、1人の人間と1
そのような
彼ら神はわざと人間と悪魔が邂逅し、対立する同士以上の関係になることをわかっていてその2つの生命体を創造した。
そのルールもまた人間と悪魔の関係をわかっていてこそ作ったのだ。
家族は人間界の郊外、人気がない場所に建てられた家に住んでいる。
「ハク、ご飯ができたわ、食べましょう。マーリンも連れてきてくれないかしら」
栗色の瞳と髪をし、透き通るような白い肌をした人間が悪魔にそう声をかけた。
「ああ、わかった。今行くよ」
それにまた白い肌をした、しかし、顔や腕の至るところには紋様があり、紫色の髪をし、水色の目をした1堕の悪魔が返事をした。
そして彼は床で遊んでいた1人の人間そっくりの赤ん坊を抱き上げ、料理が並んだテーブルまで運ぶ。
その赤ん坊の髪の毛は闇のように暗く艶のある綺麗な髪をし、右目は黒く、普通の目をしていた。けれど、左目は違った。紫色の透き通るような目の奥には小さな赤色の魔法陣があり、それは今も煌々と光っている。
それは普通の人間とも悪魔とも違う明らかな異常点だ。
赤ん坊と母と悪魔はイスに座り
「さあ、いただきましょう」
食事を始めた。
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はや、そこから5年の時がたった。マーリンは7歳になった。
母である人、父である悪魔に愛され、愛し、幸せな時間を過ごした。これこそ幸せな家庭の姿である。
この世界は人間界、魔界と、半分で別れている。それらの両方が
彼らは魔法の腕を磨き、それぞれの人生を歩む。そのまま魔法が直結する職業などもあれば、極わずかに関係するものもある。
そのまま職に就き、働くものもいれば、冒険、旅に出るものもいる。各々が夢を持っている。
そして、人間が初めて魔法を習う場所が魔術学校である。そこへの入学は義務付けられており、必ず7歳から入学しなければならない。
そして、この春、サクラと呼ばれる花が舞い散る季節にマーリンも入学することになった。
すこし大きい学校の制服を着て、バックを持ちながらマーリンは緊張と喜びが混じった感情で玄関に立つ。
「行ってきます!!パパ!ママ!」
「まって、マーリン!」
ハクノとハレインが居間から玄関に出てくる。
そうして2人はマーリンのことを温かく抱きしめた。
「行ってらっしゃい、マーリン」「かんばれよ!」
それらの全てが温かかった。
「うん!行ってきます!!パパ、ママ!大好き!!!」
左目は眼帯で隠している。こう見ればただの普通の人の子供だ。
玄関のドアを開け、郊外から王都の学校まで駆け出す。
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入学式が始まった。校長の話から、魔法の話、そしてクラスの紹介をして記念すべき1日目の学校生活が終了した。
隣に座っていた子に話しかけて友達にもなった。とても嬉しかった。
早く家に帰ってパパとママに伝えなきゃ!
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家にもう少しでつく。そんなとき、砂を噛むような奇妙な気持ちを覚えた。
何故か心臓の鼓動が早まる。
口の中が粘着物を放り込んだように気持ちが悪い。
とくん。とくん。
ドクンドクンドクン。
走り出す。家に向かって。
バクンバクンバクンバクン
心臓の音がうるさかった。
ドアをこじ開け、靴を雑に脱ぎ、玄関からいつも父と母がいる居間に走る。
バクッバクッバクッバクッ
うるさい。うるさい。
うるさいうるさいうるさい
そして、赤色の液体が見えた。
手が見えた。
腕が見えた。
足が見えた。
体が見えた。
頭が見えた。
肉が見えた。
骨が見えた。
脳髄が見えた。
父と母の死体が見えた。
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