血神 ──神への叛逆──

きむち

第1話 混血

神は光の生命体[ヒト]とその裏に当たる闇の生命体[悪魔]を世界に創造した。


彼ら2つの種族は太極図、闇を表す黒、光を表す白の[陰陽魚]が決して交わらないように和解をしない。しかし、その黒い闇、白い光にも必ず小さきながらも輝く、闇の中の小さなシロがあり、光の中の小さなクロが生まれ、存在する。


それは魔と人も同じである。全ての生命は表面の裏側、つまり、それぞれの影で邂逅を果たすのだ。


それが生けるものの運命とも言えよう。



###



神歴しんれき2800年。神が人と悪魔を創造してから初めて、人の女と悪魔の間に子供が誕生した。

人間の女、つまり母親の名前はセリエ=ハクノ。悪魔の父の名はヨル=ハレイン。


子の名はヨルエ=マーリン。ヨルエというのは母のセリエと父のヨルをもじっている。


人間界では悪魔との和親、それに値する全ての行為は禁止されている。それは魔界、正式名称[パンデモニウム]でも同じことである。発覚した場合、2人は即刻殺されるだろう。


しかし、1人の人間と1の悪魔は恋に落ちた。いや、堕ちた。彼らは禁忌を果たした。それでもお互いを思う気持ちはそのようなものでは割けない。


そのような規則ルールを作ったのは神である。

彼ら神はわざと人間と悪魔が邂逅し、対立する同士以上の関係になることをわかっていてその2つの生命体を創造した。

そのルールもまた人間と悪魔の関係をわかっていてこそ作ったのだ。


家族は人間界の郊外、人気がない場所に建てられた家に住んでいる。


「ハク、ご飯ができたわ、食べましょう。マーリンも連れてきてくれないかしら」


栗色の瞳と髪をし、透き通るような白い肌をした人間が悪魔にそう声をかけた。


「ああ、わかった。今行くよ」


それにまた白い肌をした、しかし、顔や腕の至るところには紋様があり、紫色の髪をし、水色の目をした1堕の悪魔が返事をした。


そして彼は床で遊んでいた1人の人間そっくりの赤ん坊を抱き上げ、料理が並んだテーブルまで運ぶ。


その赤ん坊の髪の毛は闇のように暗く艶のある綺麗な髪をし、右目は黒く、普通の目をしていた。けれど、左目は違った。紫色の透き通るような目の奥には小さな赤色の魔法陣があり、それは今も煌々と光っている。

それは普通の人間とも悪魔とも違うだ。


赤ん坊と母と悪魔はイスに座り


「さあ、いただきましょう」


食事を始めた。



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はや、そこから5年の時がたった。マーリンは7歳になった。

母である人、父である悪魔に愛され、愛し、幸せな時間を過ごした。これこそ幸せな家庭の姿である。


この世界は人間界、魔界と、半分で別れている。それらの両方が使


彼らは魔法の腕を磨き、それぞれの人生を歩む。そのまま魔法が直結する職業などもあれば、極わずかに関係するものもある。


そのまま職に就き、働くものもいれば、冒険、旅に出るものもいる。各々が夢を持っている。


そして、人間が初めて魔法を習う場所が魔術学校である。そこへの入学は義務付けられており、必ず7歳から入学しなければならない。


そして、この春、サクラと呼ばれる花が舞い散る季節にマーリンも入学することになった。


すこし大きい学校の制服を着て、バックを持ちながらマーリンは緊張と喜びが混じった感情で玄関に立つ。


「行ってきます!!パパ!ママ!」


「まって、マーリン!」


ハクノとハレインが居間から玄関に出てくる。


そうして2人はマーリンのことを温かく抱きしめた。


「行ってらっしゃい、マーリン」「かんばれよ!」


それらの全てが温かかった。


「うん!行ってきます!!パパ、ママ!大好き!!!」


左目は眼帯で隠している。こう見ればただの普通の人の子供だ。


玄関のドアを開け、郊外から王都の学校まで駆け出す。



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入学式が始まった。校長の話から、魔法の話、そしてクラスの紹介をして記念すべき1日目の学校生活が終了した。


隣に座っていた子に話しかけて友達にもなった。とても嬉しかった。


早く家に帰ってパパとママに伝えなきゃ!



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家にもう少しでつく。そんなとき、砂を噛むような奇妙な気持ちを覚えた。


何故か心臓の鼓動が早まる。

口の中が粘着物を放り込んだように気持ちが悪い。


とくん。とくん。


ドクンドクンドクン。


走り出す。家に向かって。


バクンバクンバクンバクン


心臓の音がうるさかった。


ドアをこじ開け、靴を雑に脱ぎ、玄関からいつも父と母がいる居間に走る。

バクッバクッバクッバクッ


うるさい。うるさい。

うるさいうるさいうるさい


そして、赤色の液体が見えた。

手が見えた。

腕が見えた。

足が見えた。

体が見えた。

頭が見えた。

肉が見えた。

骨が見えた。

脳髄が見えた。



父と母の死体が見えた。

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