第170話 転移勇者のなりそこない

 さて、全てをゲロッたおっさんだが、俺が引き受けた方がいいのだろうなあ。

 城では国王達が持て余すだろうし、同じ元日本人として・・・・同じではないが、同郷という意味では・・・・こいつの知識を利用して、魔王とやらに何かをできるのか?

 というより魔王って悪い奴なのか?

 そして魔王を何とかしないといけないのか?

 ついうっかりこのまま魔王に挑む所だったぜ!

 あぶねえあぶねえ!

 魔王が実は平和主義で、今回のちょっかいってこいつの独断だったら、藪をつついて蛇を出す事になるんだよなあ。

 所謂藪蛇ってやつだな!


 これも含めて魔王の策略の可能性があるのだが、おっさんはそこまで信用されていなかった、若しくは骨の髄まで吸い尽くすような利用方法。最終的にはポイ捨てってか。

 もしそうならえげつねえ!そして容赦がねえ!

 そんな奴に無策で突っ込めば、こっちがやばい!

 で、目の前のおっさんは日本人らしいが、だからと言って信用はできん。


 それにこいつを解き放ち、魔王に挑ませるのもリスクが高すぎる。

 まあこいつは隷属化されているから逆らえないとは思うが、相手は魔王と呼ばれる存在。

 所謂ラスボスだ。

 大魔王とかいればラスボスではないが、そんなのは考えないでおこう。

「おいおっさん、あんたはこれからどうしたいんだ?まあ日本に帰りたいとか自由にどっかに行きたいっては無しだ。現実的な話をしたい。」

 おっさんは不思議そうな顔をしてこっちを見ている。

「ああ、俺は勇者になりたい!あの魔王をぎったぎたんのぐっちょぐちょにして俺の子を産ませたい!」


 いや待て最後のおかしい!

「おい、魔王って女か?」

「あ?そうだが知らなかったのか?あの姿に騙されるとは、俺も若かったって事さ。何せ当時の俺は30ぐらいの青年だったからな。」

 30が青年かどうかは微妙だが、まあそれはどうでもいい。

「で、色仕掛けに引っかかったのか?」

「それ以前の問題だ。俺は魔王の目の前に転移させられた。その時俺は身動きができなかったんだ。その隙にあの女はまず魅了を使ってきやがった!俺はレジストできたが、身体が動かん。スゲえ魅惑的な姿だったぞ。で、俺に魅了が効かないとわかると今度は隷属の魔道具を使って拘束されちまったんだよ。」

 何だか聞いた事のあるような話だなあ。

【異世界あるある】だと、異世界召喚物の小説なんかによくある話だ。

 召喚、若しくは転移だな。異世界に到着してすぐには身体が動かなく、若しくはうまい言葉にほだされ騙されて、待ち構えていた召喚を行った奴等や、たまたま出現した先が魔王の所で、あっという間に隷属化されてしまうって奴だ。


 小説投稿サイトで検索したらそこら辺にごろごろあるはずだ。

 主人公と敵対するのがそう言った勇者の成り損ないだとかもよくある話だ。


 しかし、魔王は女で・・・・魅力的なのか?

 スパン!

 あいた!何だ?

「またよからぬ事を考えていたでしょ!」

 エスパーヤーナだ。何故に気が付く?

「そん、そんな事はないよ?俺はヤーナ一筋だし?」

 こう言っておけばチョロインヤーナ女史・・・・・・・・・・


「ま、またそれ!こんな言葉で収まっちゃう私って!」

 その後ヤーナのお怒りが完全に鎮まるまで優しくハグしてやった。

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