第164話 また見えちまった

 俺は小屋のドアを開けられなかった。何でだよ!それを見たヤーナが、


「ちょっと何やってるのよ!かわりなさいよ。」

 俺はヤーナの迫力に驚き、ドアを開けようとしていた手を止め、譲ってしまった。


「どうするんだよ!押しても引いても、ドアノブを回す事すら出来なかったんだぞ!」


「何でそうするのよ!いいから見ていなさい。」


 ヤーナは暫くドアを触ったり、ドアノブを掴んだりしていた。無理だって!俺はそう思ったんだ。


「分かったわ。これはドアじゃないわね。」

 うわ!トリックかよ!


「で、何処にドアがあるんだ?」

 俺はヤーナに聞いてみた。だが意外な答えが返ってきた。

「あっちに行きましょ。あそこから入れるはずよ。」

 最初からそうしてくれよ!そう思ったが、俺があのトリックアートに引っかかったせいか?

 で・・・・ヤーナは窓らしき場所の前に立った。

「よいしょっと!」

 掛け声とともにヤーナが窓に手を掛ける。するとどうだろう、窓が呆気なく開いた。

「入るわよ。」

 ヤーナは窓によじ登り、小屋の中へ入っていく。

 俺はそんなヤーナのお尻を思わず見てしまった。そう、ヤーナはスカートなんだよ。さっきも見えただろ?当然ながら高い場所によじ登れば見えるよな?

 うん、いいお尻だ。 俺もヤーナに続き窓から小屋の中へ入る。


《小屋の中》


 こう言っては何だが、俺もヤーナも呆然としていた。

 小屋の中には何もなかったからだ。

「なあヤーナ、確かこの中に魔族の精神体が入り込んだんだよな?」

「え、ええ、間違いないわ。それより変ね。」

「何が変なんだよ。」

「だって外から見たよりも部屋の中が小さく感じるわ。」

 ・・・・そんな事を言われたらそんな気がしてきた。

 またトリックか?俺は謎解きにここへ来たんじゃない!

 俺はそんな事を思いつつ、壁に背を預け、もたれかか・・・・ろうとしたが見事にひっくり返った。


ってえええ!!!」

 ひっくり返った拍子に背中を強打しちまった!

「あら、クーンのくせによくわかったわね。」

 わかるも何も、俺はひっくり返ったんだが。ヤーナが手を差し伸べてくれたので、その手を握る。

 小さな手。そして綺麗だ。あかん!さっきからスカートの中というか、色々見てしまった。ヤーナをかなり意識してしまっているようだ。

 そのままヤーナの助けで起き上がる。


「こんな仕掛けがあったのね。さあ入りましょ。」

 因みに壁の一部が反転する仕掛けだったようだ。中に入ると、そこは小さな部屋だった。

【遅かったな。こうして拘束している。】

 ジンが居た。で、何やらジンがモヤモヤを捕獲しているようだ。

 で、すぐ近くの床には布団がひいてあり、小太りのおっさんが寝ていた。

 分かってはいたが、おっさんかよ!せめて痩せていてくれよ!

 欲を言えばだなあ、綺麗な顔をしたモデルみたいな女がよかったんだが。

 スパン!痛い!

 振り返るとヤーナが俺の頭を叩いているのが分かった。

「何すんだよ!」

「今変な事考えていたでしょ!」

 俺なんか考えていたか?

「いや。小太りのおっさんとか誰得なんだと思っただけだ。」

「ふーん。これが綺麗な顔をした女性だったらとか思った訳じゃないのよね?」

 何で分かった!だがここはまた誤魔化さねば!

「お、俺にはヤーナという彼女がいるからな。」

「な、何よそれ!それを今言っちゃう!?」

 なんだか意識しちまうじゃねえか!

【どうでもいいがこの先どうするか決めてくれぬか?】

 そうだった。ジンがおっさんの精神体を拘束している間にどうにかしないと。








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