第153話 偏った教育

 盆暗共はどうやら相当偏った教育を受けていたようだ。

 その結果あのような性格となり、尚且つ人と接するにも主に自身よりも下の身分の者を相手にしていた。

 その為自分本位な対応しか出来ない事を俺は発見した。


 親父に言わせればドラ息子達なんだが、俺に言わせれば何かが違う・・・・・

 例えば女を求めてくる伯爵令嬢を見ればよくわかる。

 今まで自分の近くに居たのは、主に使用人と自身より下の身分の連中。

 常に顔色を窺って、壊れ物を扱うが如き対応。

 何か言ってもイエスしか返ってこない。

 そんな中あの破壊女・つまり女精霊使いはどう対応したのか知らんが、あの令嬢の心を掴んだらしい。


 後で報告を受けたが、

『一緒に温泉に入ったのがよかったみたいね。たまたま一緒に湯へつかっていた時に私のスキルの話が出てね。すると驚いた事にあの子も精霊使いだったのよ。でも周囲には誰も理解してくれる人が居なくて、結局腫れもの扱いだったって。そうしているうちにあんなになったって言っていたわ。』


 因みにあんなとは女を愛でる事らしい。

 どう愛でるのかは知らんが。

 女が女を好きになったって事か?そういう世界が存在しているらしいが、俺は知らん。


 で、意外な事に今は精霊を使役する勉強をしているらしい。

 

 そしていつの間にか奴隷落ちした女が集うようになった。ついでに言えば一緒に付いてきた女達のうち、どう見ても開発をするのに相応しくない姿だった面々が集うようになったとか。何やら一緒に学んでいるようだ。

 人も変わるものなんだな。それとも俺の知らない何かがあるのか?


 次に武器を見てニヤニヤしていた令息だ。


 どうやら親は、こいつが子供の頃からミスリル製の立派な武具を与えていたらしい。

 幾ら剣術を鍛えても、腕の良さを武具のせいにされてしまい、そのうち腐っていったそうな。

 そんな時に色々な遊びを覚えたようだ。

 簡単な遊びから危険な遊びまで。

 親って大事だなと思ったぞ。


 だがここで意外な組み合わせが。


 元【夜露死苦】のメンバー、じゃなく元【唯我独尊】のパーティーメンバーと意気投合していたのだ。

 どうやら武器の事で話が盛り上がっているらしい。

 特にノモズラナと言うリーダーだった奴は、こと武器に関して多種にわたり造詣が深かった。

 俺達、正確にはニールスにいのパーティー【雲外蒼天】を敵視していたが、結局理由は不明なんだよな。魔族がらみらしいが、その魔族が死んでいて真実が分からないまま。


 注:この魔族、クーン達は知らないが【身代わり】スキルを使用し生き延びています。

 商人として対象者に接近する事が多い。

 80話・117話参照



 だが武器に関する知識は本物だ。そして街中での遊びも詳しいようで、2人で話をしたり、元【唯我独尊】のメンバーと共に何やらカードのようなものを手に真剣な討論を行っているようだ。




 最後にグルメ令息だが、俺が恐らく関わっていない元貴族の奴隷と馬が合ったようだ。


 因みにグルメ令息の居た領地は塩だけではなく、多種にわたり調味料を取り扱っていたのだとか。


 必然的に美味しい料理が増え、グルメ令息の舌も肥えていったそうな。

 そして出会ってしまった元貴族とグルメ令息。

 貴族の中にはグルメが多いと聞いている。

 何せこの世界、ぜいたく的な意味で出来る事が限られている。


 そんな中、食に関しては色々とあったようで、各領地でこうしたグルメが痛そうな・・・・。違った、居たそうな。

 そんな中、何処産の何がいいとかあの調理の仕方はどうのこうのと意気投合したらしい。

 これで食文化に何かしら発展があればいいのだが。


 俺は思った。何だこいつ等、ただの盆暗じゃなかったじゃねえか!

 結局素行が悪いと腫れものを扱う様に接し、最終的にどう扱っていいか分からず不良債権扱い。


 ふっ。俺はこいつ等を使いこなしてやるぜ!


 注:既にヤーナとフロリーナという実績があります。


 

 そんなクーンを遠巻きに見つつ、感心している人物が数人。


 フロリーナの兄・マンフレットとヤーナの兄・ペペインである。

「正直驚いたね。フロリーナを手懐けたと知って、どういう人物か興味があったのだが、成程。」

「我が妹ヤーナ、あれのツンとした性格をあそこまで御せるとは驚きだったが納得だね。」


「一つスキルのようだが、きっと稀代の人誑しだね。」

「そうなのか?人誑しと言うよりは、人を引き付ける何かがあるような気がするけれどもね。」


 この2人はクーンの謎、つまり核心に迫っていたのだが、そんな事を知る由もなく会話をしていたのだった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る