第93話 以一当千

 以一当千いいつとうせん

【一を以て千に当つ】

 一人が千人に匹敵する価値がある・・・・


 誰が最初に言ったのかは覚えていないが、自然と決まっていた。


 一騎当千でない所がいい。


 何故かこれに決まった。まあ何の事はない、クランの名前の事なんだが。


 因みに一部のメンバーの強い意見で一騎当千にしたかったらしいが、既にそう言うクランが存在しているらしく断念したとかしなかったとか。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


「皆様お久しぶりですね!本日は大勢でお越しのようですが、クランの手続きでしょうか?あ!ここではなんですから、奥へどうぞ!」


 今俺達はクラン設立のため、全員で冒険者ギルドにやってきた。

 別に俺とニールスにいだけでもいいらしいのだが、折角だからと全員で。

 ノールチェさん曰く、

「あの受付嬢が我がリーダーにいらんちょっかいを出させない為にも、全員で行く必要があるのだ!」


 何だか強く語っている。

「私達のリーダー・ニールスさんってモテますからね!」


 ええと誰だっけ、ヒーラーさんだよな・・・・

『ヘンリエッテさんだよ。』

 ナイスだヤーナ。名前を忘れられていると知ったらきっと悲しむからな。


『きっとショックで二度と立ち直れないから覚えてあげて!』


 何故立ち直れないんだ?俺は人の名前を覚えるのは苦手なんだよ。そんな奴に忘れられても気にしちゃいかん。


 いつもお世話になっている受付のお姉さん。

 ニールスにいを狙っているらしいが、もっと他に居ないのか?こう言っては何だが年が離れているだろう?

 お姉さんには20代の男性がいいと思うのだよ俺は。

 は!まさかのシ◇タか!


『クーン様、今何か有らぬ事を考えていませんでしたか?』

 エスパーが居た!

『言っておきますがシ★タではありませんからね。年下がいいのには違いはないのですけどね。』


 何故それを俺に言う?

「言っておくけどクーンは渡さないわよ!」

 何故か張り合うヤーナ。

「大丈夫ですわヤーナ様。むしろ味方?ちょっとよろしいですか?ごにょごにょ・・・・」


 また出たよごにょごにょが。


 何故か俺を見る2人。

 なあ、早く部屋に案内してくれよ!

 そう思ったが既にこの場には受付のお姉さんと俺、そしてヤーナしかいなかった!

 何故みんな俺達を置いていったんだ?


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 案内された部屋には俺とヤーナ、そして受付のお姉さん以外は全員着席していた。

 何やってんだって顔しないでくれよ!

 あれ?俺が悪いのか?俺は脳内で考えていただけで、声を掛けてきたのは向こうだぞ。

 いかん、座っておこう。

 この後この件に関し、誰からも追求が無かったとだけ言っておこう。ある意味怖いんだが。


 その後悪びれた様子もないまま、受付のお姉さんは手続きを進めていく。

「・・・・ではこれでクランは正式に認証されました。」



 クラン【以一当千】誕生。


 しかしクランの募集要綱、そして活動内容がとんでもない内容だった事もあり、後に大きな社会現象となるが、恐らく一部のメンツは想定済み。


 そして今後クラン【一騎当千】と真っ向から対立する事になるのだが、それはもう少し後の話。


 クラン【以一当千】募集要綱及び活動内容


 1:性別年齢種族による募集・活動の差別はない。適正によっての区別はあり得る。

 2:所持しているスキルは1~3とする。4は要相談。

 3:犯罪が発覚した時点で即退団。

 4:拠点へ定期的に来なくてはいけない。特別な理由を除き年1回以上。

 5:クランメンバーへ武具の供与と従魔の供与が可能。

 6:クランメンバーへの台車及び携帯トイレの貸し出し。

 7:希望者にはクランの拠点での生活ができる。



 たったこれだけと言う事と、内容が内容なので大騒ぎとなった。


 特に活動するにあたり金銭の項目がなかった事にも注目が集まる。

 通常は上納金として、クランに所属してからの活動中は、例えば冒険者として活動し、得たお金の1割をクランに納めるのが慣例となっていたので、【おいおい忘れちゃってるよ】と当初は他のクランに馬鹿にされていた。

 実際【以一当千】の活動資金は潤沢にあり、蓋を開ければ何とクラントップというとんでもない事態に皆一様に驚いた。


 これはどういう訳か。

 これは実際にクラン【以一当千】設立直後の話が関わってくる。


「それでは引き続き、今度はクーン様に関しての事なのですが。」

 え?俺?

 この時クーンは大きな見落としをしていたのだが、この話があったため確認を忘れると言う、あり得ないチョンボをしでかしたのだが、それが発覚するのはもう少し後になる。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る