第94話 商人ギルドで新商品の開発

「クーン様、商人ギルドで色々とあったと思うのですが、ドリース・ヤンセンとパウラ・ボーハールツという人物を覚えておいででしょうか?」


 あ、商人ギルドの2人だ。

 そう言えば何やら託したまま放置していた気が(-_-;)


「お、覚えているぞ?その、台車とトイレの事を丸投げして、そのままだった・・・・」


「そこまで覚えておられるのであれば問題ありませんわ。実は2人からこちらに連絡がありまして、あれからクーン様が一向に商人ギルドに顔を出してくれないからと、どうにか連絡を付けてほしいと言われまして。」

 いつぶりだっけ?


「そう言えばどうしたらいいのかとか聞いてなかった気がする。」

「ではこちらから連絡をしておきますので、クーン様はどうされますか?商人ギルドへ向かいますか?それとも2人をこちらに来させますか?」

 色々あるかも。ここは久しぶりに行ってみよう。

 え?何処へって?商人ギルドです。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 一応冒険者ギルドで今回の集まりを解散をし、俺は一人商人ギルドへ向かった。


 俺が商人ギルドの建物に入ると、誰かが猛ダッシュで現れた。


「お久しぶりですクーン様、パウラ・ボーハールツでございますわ!ささ、奥へどうぞ!」


 何故かぐいぐい引っ張られていく俺。

 相手は大人とはいえ女。女の力に抗えないとか・・・・あ、俺子供だったわ。

 そのまま奥へ連れて行かれ、あれ?もっと奥?

 どうやら商人ギルドの奥には大きな倉庫のようなものがあるらしい。


「これはクーン様!お久しぶりでございますなあ!」

 ドリースさんが満面の笑顔で俺を迎えてくれたので一瞬騙されたが、何やら色々おかしい。


 よく見るとドリースさんの顔は確かに笑っているが、目の下のクマが隠しきれていない。


「もしかして寝ていないとか?」

 一瞬ギクッとなったようだが、

「まあ、時は金なりという言葉がございますように、今がその時なので、こうして寝る間を惜しんで商品の確保に・・・・」


 何だか途中でフリーズしたようだが、一体どうしたんだ?


「あーこれは寝落ちしてしまったようですわね。流石に無理しすぎ。あの、ここにベッドなんか用意できます?素材である土は地面に転がっていますから。」


 よく見ると其処彼処に土の山が出来ている。


 仕方がない。


 俺はベッドを作ろうと思ったが、ふと気が付いた。

 こんな所にベッドを置いたら、邪魔じゃね?

 これはあれだな、病院のベッド。

 車輪がついていて、ベッドごと患者を移動できるやつ。

 それとも救急車の搬送用の担架みたいのがいいか?

 何だっけ?

 そうだ、ストレッチャーだ!


 幸いな事に、車輪を作るにあたり欠かせない(と俺が勝手に思っている)空気草と油草は豊富に置いてあるようだし、台車を作るのと同じ要領だな。まあストレッチャーは高さを変えられるから、その機構だけ工夫すればいいか?


 ベッド本体は簡単にできた。

 落下しないよう両サイドに取り外しの出来る柵を設けた。


 あと機構部は2か所、前後で向きが反対になるように作ってみた。

 形的には車輪が付いている部分とそれを受ける部分でYの形っぽくなるようにしてみた。


 それを組み合わせると、段差があっても移動できる!まあ多少の段差を超えられるぐらいで、階段の上り下りは厳しいが。


 あ、そうだ、これベッドで終わらせるのはもったいないな。


 椅子っぽくして起きたまま移動できるようにもしておこう。


 俺は取り敢えずベッド本体を作る間にパウラさんにクランの拠点にいるはずのメイドさんに、俺の本を持ってきてもらう様に伝言を頼んだ。

 流石に色々な機構の仕組みが分からない。


 俺が大まかな部品を作り終えた頃、メイドさんが本を持ってきてくれた。

「クーン様、何故かこの本だと確信したのですが、よろしかったでしょうか?」

 意味不明な発言だが、本は合っている・・・・・・・・

【台車の重要性・物流及び医療に必須の台車のイロハ】


 ああこれだ。

 俺は何故か確信した。何だか変なタイトルだが気にしたら駄目だ。


 俺はパラパラとみると、あれ?俺の作った台車が載っているじゃないか!でも俺これ見て作ったっけなあ。


 で、見るとあったあった。

 救急搬送に使う物やら、介護で使う物だ。

 俺はこの中で救急搬送用で椅子みたいになるやつをチョイス、その通りに作ってみた。


 出来はいい。


「まあクーン様、こんな短時間でよくもまあこのような複雑な機構のベッド?ベッドで宜しいのですわよね?お作りになりましたわね。では早速・・・・あら?意外な事に寝てる人を簡単に乗せられ、しかも移動できますのね!」


 こうしてまたもや新商品が出来上がった。

 これは後に介護が必要な家庭や、冒険者や怪我人の救助に向かう時の必須アイテムとして相当売れる事になる。

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