第78話 従魔
マースはテイマーなのだが、フェンリルについてひとつ大きな見落としがあった。
正確にはフェンリル以外にも当てはまるのだが、高位の、それもA級以上の魔物や魔獣とテイムすると・・・・
その前に、実際魔物と魔獣の区別はあまりない。
飼いならす事が出来るのが魔獣で、飼いならせないのが魔物と言われているがそれも怪しい。
実際魔物と言われるドラゴンもテイムできるからだ。
流石に飼いならす事は過去一度も成功例が無いが、テイムは別。
話は戻るがA級以上とされる対象をテイムすると、所謂【隠伏】と言われる能力を得る。
これは従魔が地面の中に入り込み、【地脈】を移動できると言う能力。
そして同族に対し、ある程度の距離であれば念話で意思の疎通ができるのだ。
フェンリルにもその能力はあるのだが、マースはまさか自分がこんな高位の魔物をテイムできるとは全く思っておらず、そしてまだテイムのスキルを得てから1年しか経っておらず、詳しくない。
そのせいでマースの対応はちぐはぐだったが、結果的に仲間の援軍が間に合い、窮地を脱した。
セバスチャンが一人気を吐いていた。何せ味方で前衛は今、セバスチャンしかいないからだ。
それに今フロリーナとセバスチャンが騎乗していた天馬と、マースが手元に置いていたフェンリルがいる。
負ける道理が無い。
だが何かがおかしい。
明らかにこちらが劣勢なのだ。
・・・・
・・・
・・
・
【ちょっと待て!】
俺が天ちゃんの背に跨った時、シロから待ったがかかった。
あれ?何でここに居るんだ?
というかシロの扱いって今回どうしてたっけ?
【どうしたシロ?】
【天ちゃんよ、其方はその女子を乗せて行くがいい。我は主と隠伏で地脈に乗り移動する。主の【土】であれば人であっても隠伏できよう。】
【わかった。】
【そういう訳で主よ、我の背に乗りしがみ付くのだ。】
「なあ、色々聞きたいが、ひょっとして俺はシロと地面を行くのか?」
【理解が早くて助かる。地脈に乗れば天馬の速度より素早く移動できる。】
「ヤーナ、聞こえていたか?」
「え、ええ、天馬から聞いたわ。が、頑張ってね?私はほら、天ちゃんと行くから。じゃあ天ちゃん、よろしくね!」
素早さマックスで行ってしまった。
何かあったのか?それよりさっさと行くか。
俺はシロの背に乗り、言われるままにしがみ付いた。
【では潜るぞ。】
潜るってなんだ?俺は今からどうするかあまり理解していなかったが・・・・気が付けば絶賛地面の中らしい。
変な感じだ。
確かに
何故感じたかは未だに分からないが、確かにある。
そしてあっという間に外に出た。
すると戦闘中の場面に遭遇した。
なあ、せめてどういう状況か理解させろよ!そしてもっと安全な場所に出られなかったのか?
【すまぬ。ここが一番出やすかったのだ。】
セバスチャンが見えたが動きが変だ。
動きづらそう。
そしてマースはわんこに守られているが、様子がおかしい。
隣にはフロリーナがいるな。
「死にたくなければその従魔を私に寄こしなさい!」
これは駄目な奴だ!
「シロ、あいつを拘束しろ!」
お?洒落か?駄洒落か?
あ、誰も聞いてないじゃないか。
【拘束とはまた難しい事を。】
シロは一度地面に入り込み・・・・商人風のおっさんの足元に出現、あっという間に拘束していた。
俺は他の敵?何やら馬っぽい従魔で何かをしようとしているのが見えたので、6人ほどいたが【土】で拘束した。
「何だ!身動きできん!」
「何だこれ!」
そして俺は騎乗している3人・・・・そのうちの1人を見て驚いた。
見た事があったからだ。
「あんた死んだんじゃなかったのかよ!」
クツーゴ元男爵だった。
じゃあ後の2人はリーバクーヨ領とギーコア領の領主か?
何故こんな場所に?
それよりもこの3人は魔境を超えたから、魔境の向こうにいる魔物に真っ先に殺されたんじゃなかったのかよ!
いや待てよ!さっきトカゲ・・・・ドラゴンが言っていた3人とはこの3人の事か?
そうだったら引き渡すのには全く問題が無いな。むしろ連れて行ってくれと言いたい!
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